Smile again 【第三話】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/08/12 23:51:53
第三話 『誰を愛す?』
寒い公園のど真ん中、二人肩を並べて笑い合う。
こんなの何年振りだろう。しかも男の人となんて本当に彼氏以来だ。
酔い覚ましに買った水を片手に話す私たちの影が伸びる。
このまま夜通しで喋ってしまいそうだ……。
「寒くないか?」
ふと尋ねる彼。私はゆっくり首を振る。
真冬の公園だから、勿論寒い。でもここで「寒い」と言いたくなかった。
言えば甘えているように思われるから、嫌われそうだから…。
久しぶりに嫌われる事を恐れたような気がする。
「……やれやれ」
「え…?」
ため息をついた瞬間、彼は肩に一枚のカーディガンを羽織らせてくれた。
彼の温もりと生地の温もりで身体がどんどん熱くなって行く。
いや、それだけじゃない。……体温が上昇しているんだ。
「風邪引かれたら困るからな。」
「…あ、ありがとぅ。」
「どーいたしましてっと。」
ニカッと無邪気に笑う彼の笑顔はやっぱり彼に似ていて…何度も心をくすぐった。
それから何度も何度も彼の笑顔を見れた。私が何も言わなくても笑ってくれた。
それでも私を楽しませよう、って必死になってくれてた。
きっと彼じゃなかったら面白くない話も沢山あっただろう。私はいつもより沢山笑えた。
何時間喋っただろう。
いつも時計を見て帰るタイミングを探るのに、今日は一度もしなかった。
きっと彼との時間が惜しいんだと思う。 そんな時だった。
「よぉっし、そろそろ帰るか?」
「へっ…今何時だろ……」
そう画面を開くと、もう夜中の1時を回っていた。
目を丸くする私を見下ろし、彼は笑って手を差し伸べた。
「ほら。今日は疲れたろ?」
「あ、ありがとう…ごめんね、遅くまで」
彼の手を借りて立ち上がる。揺れるワンピースと彼のカーディガン。
ゆっくりとカーディガンを脱いで返した。
「これ…ありがとうね。」
「おーいいよいいよ。その代わり風邪引くなよっ?」
「子供じゃないんだから~」
「アハハッ、わりぃわりぃ~」
ニッと笑う彼の笑顔が街頭に照らされて眩しい。
彼の目に私はどう映っているのだろう。…こんなの気にしたの何年振り?
自分がアホらしくなってくる。
「……どうした?」
「ううん、何でも。今日はありがとうね」
「別れはまだ早いぜ。」
「え?」
微笑み、マンションを指差す。
私の顔に笑顔が戻った。
「行こうか」
「うんっ」
こうしてまだ少しだけ肩を並べて歩く。
微笑みを絡ませながら歩く夜道はやっぱり素晴らしくて、景色が変わっていた。
もしかしたら私は彼を忘れて亮太を……、愛せるのかもしれない。
ようやくチャンスが来たのかもしれない。
「あぁ~、着くの早いな。もうマンションだ」
「仕方ないよ。すぐそこだったもん」
「ま、それもそーか。」
話しながら開くエレベーターに乗り込む。
「何階?」
「5階」
「一人暮らしだろ?いい所住んでんなぁ~」
言いながら5階のボタンを押す。
途端に彼は4階を押した。
「…1階しか違わないじゃない。」
「やっぱ違うじゃん?ハハッ、あんまりか」
「うん…」
なんだかそれ以上何もいえなかった。…笑えなかった。
なんでか分からないけど、これ以上聞いちゃ駄目、踏み込んじゃ駄目って思った。
どうしてだろう。彼のオーラがさっきとは少し違ったんだ。
ピンポーン....『4階です』
「着いた。じゃ、俺行くわな」
「うん…またね。」
「オウッ、また誘うわー」
「うん!」
「また誘う」…心が飛び跳ねた。
小さな手を何度も振って最後まで彼の背中を見送った。
彼の背中は大きくて、優しかった。…やっぱりあの人に似ていた。
「…長谷川亮太、か。」
そう囁いた時、微かに笑んでいる自分がいた。
「…美加…俺が間違っていた」
「……え?裕樹?」
「だから戻ってきてくれ。あんな男のとこなんか行くな」
「い、今更すぎない?私はもう……」
「なぁ、あの男を好きになった理由はなんだ?」
「え?」
「俺に似てるから、じゃねえのか?」
「ち、違う!それだけじゃ……」
「……その内何も言えなくなる。お前は結局俺の手の中だ」
「うるさい!!!私はっ…」
私はっ──……
ピピピピピピッ......!!!!!
「……なんだ、夢か」
7時の針を刺した目覚まし時計が揺れている。
ゆっくりとボタンを押し、身体を起こした。
鏡に映る自分はすごい顔をしていた。
「腫れぼったい目。今日学校行きたくなくなるわ」
そう呟いて目に映ったのは伏せた写真。
そっと触れてみる。こんな挑戦、前までできるとは思っていなかった。
「…裕樹…アナタとはもう戻れないんだよね?」
伏せた写真に尋ねる。
「アナタとはもう…終わったんだよね?それで…いいんだよね?」
写真を握る力を増していく。
「…裕樹、会いたい。」
アナタを今どう思っているのか…自分の気持ちを理解したいよ。
PLLLLL.....
「ッ!?」
続く。
第一話見たときは、合コンどうするのかなって思ってたけど素敵な出会いがあって良かったです。
どうなるのかすごく楽しみです。祐樹?亮太?どっちかな???