Nicotto Town



日本妖刀列伝:六



日本刀は名工の手によって作られる。

ところがそんな常識が通用しない一振りがあるのはご存知だろうか?

今回の話は、この刀が作られた経緯が尋常ではないのである。

では今回の伝承を語ることにしよう。

『鬼神大王波平行安』鬼の鍛えし刀である。




その昔、奥能登の外浦のとある村に、一人の刀鍛冶と娘が住んでいました。

鍛冶場からは、いつも槌の音が響いて来ており。 娘はその音を子守唄に、心根優しく大層器量良しに育ちました。

それゆえ年頃になると、村のほとんどの若者が言い寄ってくる有様。

しかし父親はなかなか承知しませんでした。

なぜなら父親は、自分の跡を継げるような優秀な刀鍛冶でなければ、婿にする気にはなれなかったからです。

そこで父親は考えました。

「一日に千本の刀を鍛えあげることが出来る男ならば、誰であれ娘をくれてやる」

こう村中に吹いて回ったのです。

一振りの刀を作るにはいくつもの仕上げがあり

一人の職人が1本の刀を作るのには、およそ20日を要します。

父親は現実に作れというわけではなく、そういう気概を持つ男を捜していたのですが

この難題を前に誰一人として声を上げる者はいませんでした。



そんなある日のこと

このあたりでは見かけぬ一人の若い男が尋ねて来て、娘の婿にしてくれと言い出しました。

父親は、青年の目つき、体つきを見て一目で気に入りました。

しかし刀鍛冶しか婿にしたくはありませんでした。

「噂の話承知の上でやってきたのだな?」

父親の問いに男は

「今日一晩鍛冶場を貸していただけましたら、明日までに作って見せましょう」

と答えた。

父親はこの男をすこしバカにしていました。

(本当に千本作る気なのか?

1本すら出来るはずが無いのに…。

しかし試してみて、少しでも才能があれば

鍛えてみるのも面白いかも知れんな)

「よしわかった! わしの大事な鍛冶場を一日貸してやる。

 明日の朝、一番鶏が鳴くまでに刀を千本鍛えて見せろ! わしが出来上がりをみてやる」

っと父親は男にそういいました。

すると男は、こう返します。

「ありがとうございます 
 
 ただ私が刀を打っている時、鍛冶場を決して見ないでいただきたい

 お約束お願いできましょうか?」

父親は少し奇妙だな と思ったのですが

自分の秘密の技を盗み見られるのを嫌ったのだと思いこれに同意しました。

「では早速」

男は言うが早いか井戸へ向かい、服を脱ぎ、何かを唱え水をかぶり体を清めました。

それから服を着て、鍛冶場へ入って行くと

戸を全て固く閉じ、窓まで目張りをして中が少しも見えないようにしたのです。

まもなくトントンと刀を叩く音がしてきました。

しかしその音は尋常ではありませんでした。

地響きを伴う槌音は、付近の草木をも揺らし天地を轟かせんばかりの勢いでした。





深夜になっても槌音は衰えず、その騒音に耐えかねた父親は寝るのを諦めてしまいました。

すると急に男のしごとに興味がわいてきました。

(一体どんな仕事をしたらあんな音が出るのやら…)

父親の脳裏に一瞬約束のことが頭をよぎりますが、それよりも興味が勝ってしまいます。

「たしかこの辺に・・・」

以前あけた穴から中をを覗くと、

鍛冶場の真ん中には二、三本どころか数十本の刀が積み上げられていました。

(なんじゃと)

父親は驚きました。

刀の一本を目をこらして良く見ると、なんとも美しい太刀筋でした。

鉄が均一に鍛えられ、ゆがみ一つ無く先端に行くごとに綺麗な反りが出ていたのです。

(夢でも見ているのか?)

父親が感心している間にも次々と刀は出来ていきました。

(一体どうやって?)

父親は、穴から男の姿を探しました。

そこで見たのは赤鬼が口から火を吹き、

鉄の塊を飴細工のよう伸縮させて、あっという間に刀を作っている姿でした。

しかしそれは刀鍛冶の追い求めた究極の姿と言えました。

(これはもう美しい)

父親はしばらく鬼の姿に見惚れていましたが、ふと我に返りました。

(このままでは、鬼に娘をやらねばならなくなる…。どうしたら)

考え込む父親に妙案が浮かびました。

(たしか期限は一番鶏が鳴くまでだったな、ならば少し早く鶏を起こして鳴かせてしまえ)

父親は、鶏の止まり木に暖かな水を流し目覚めさせることにしました。

鬼が999本を打ち終え、最後の一本に取り掛かろうとしたその時

鶏の甲高い声が辺りに響きました。

「間にあわなんだか……」

鬼は大きく天を仰ぐと、一筋の涙を落としました。

鬼は辺りの刀をざっとさらい、脇に抱えてあっという間に海の上を走り去ります。

父親はその姿を見つけると岸へ走り出ます。

「お~い、娘に何か形見を置いて行ったらどうだ~」

と叫ぶと鬼は急に立ち止まり、彼方から刀を一本投げてよこしました。

父親がそれを抜き眺めてみました。

その刀は素晴らしい出来栄えですが、銘が入っていませんでした。

「お~い、この刀には銘が入ってないぞ」

父親が叫ぶと鬼は再び立ち止まり、一瞬で戻ってくると爪でなにやら書くと風の様に走り去りました。

刀を見るとそこには「鬼神大王波平行安」と銘打ってありました。

鬼は、その後二度と現れなかったと言います。






この鬼、能登という場所を考えるとロシア人ではないかと思えてなりませんw

波平行安というのは薩摩の刀鍛冶に代々継承された名前であり

その由来は、刀を海の神に捧げ祈ったところ嵐が静まったという。

このことから「波は平らかに行くは安し」という意味で

波平行安となったと言われている。

荒れた海で知られる日本海。

海に携わる者は,波平行安の鍛えた刀を好んで持つようになったというから

能登でも大流行だったのかもしれない。

ではまた次回、お目にかかりましょう!


                        




                            日本妖刀列伝:六 『鬼神大王波平行安』  

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2014/08/10 01:24
Re;凛花さん

確かにこの鬼にはすこし同情してしまいますね。
この話ディテールの異なる話がナンパターンか存在してまして
娘と結婚してから正体がばれてしまう!ってのもあるのですよ
興味があったら、色々さがしてみると面白いかも
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2014/08/10 01:22
Re:みん♪さん

確かに鶴の恩返しっぽいですね。ゴツイですけどw

こんないい鬼さんはなかなかないですよねw
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2014/08/10 01:21
Re:葉月さん

ロシアにも真面目な方はいるものですね!」(違う)

酔っ払ったロシア人は、赤鬼に見えると思います!
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2014/07/28 16:46
(。・o・。)ノ こんにちゎぁ♪
楽しく読ませていただきました
鬼はなんていい鬼だったのでしょう…
(少しかわいそう~
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2014/07/28 14:32
面白いお話ですね^^
ちょっと、つるの恩返しのような部分もあったりして。
鬼はそのまま帰っちゃったんですね^^;
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2014/07/28 08:08
おはようございます^^

今回のお話は 斬った斬られたと血なまぐさくはないので胸痛むことなく読めましたね^^

しかし 頑張って刀999本も鍛えたのに・・・鬼 かわいそうだ
いっそ刀抱えるより娘抱えて走り去っては如何だったのだろうかと・・・
鬼さんって実直で生真面目な方だったのですね^^

そして こんなもの見つけました^^
少し内容は違うようですが 同じものですよね^^
https://www.youtube.com/watch?v=2Wj9EjS5_eo



はや7月も最終週 今日も暑くなりそうです ご無理せずがんばりましょう^^



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