Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


聖女の願い 【 短編小説 】

私は幾つの時を経たのだろう。

もう何年眠っているのかも分からない……。
ただ人々が私の目の前で崩れ落ち、泣きじゃくる声が聞こえてくる…毎日のように。
私、聖女アリーナはただ眠るだけしかできない愚かな存在だ……。

でも…こんな私でも発する事だけでも許されるのならば一つだけ言いたい。
シリウスに会いたい。会ってもう一度触れたい。彼の涙を拭いてあげたい。
この目で彼を見たい──。何時しか叶うことがあるのだろうか?…いや、きっと私にはない。


何百年も前、私は一人の男性に出会った。
その名は“シリウス” 生きてる中で誰よりも大事な存在になる人だ。
初めて会った時は喧嘩ばかりしてぶつかってた。でも──、それで絆も深まってた。
手を取り合ってお互いの命を大事にし、そして想い合った。…そう。想い合った。

私と彼は恋に落ちた。甘く純粋な恋だった。
お互い求め合うのは純粋な愛…それだけだった。他は何も要らない。
だが、それが私たち…いや、私にとって大きな罪深き罪であった。
誰も私達を許す者は居なかった。強いて言えばお互いが認め合ってるくらいだった。
これがとんでもないことを招こうとは……思わなかった。
私達が愛し合っていると周りが気づき始めた頃、世間は騒ぎ始めた。
無論、いい意味ではない。……街は華やかという言葉を失い、事件塗れになったのだ。

そんなある日、一人の少女が私に駆け寄ってきた。
小さくて可愛らしい人形を片手に無邪気な笑顔で私に言うんだ。

「お姉さん、お兄さんとすごく仲良いんでしょ?」

それはとても純粋で明るく、穢れなき少女の笑顔だった。
だから私は素直な心で頷き、「そうだよ」と答えた。
その瞬間だった──。

「駄目だよ…そんな事じゃあ、世界終わっちゃうよ?」

「──え?」

目を疑った。

途端に少女は片手にあった可愛らしい人形をバラバラに引き裂き、地面に叩き付けた。
人形は首がとれ、綿だけが出ている無残な状態にされていた。
幼き少女は唖然とする私にただ笑顔を向け、去っていった。……悪魔で綺麗な笑顔で。
私はその場に崩れ落ち、全てを理解した。

──これは神の仕業だ。
私が本業を忘れて人を愛してしまったから……罰を与えたんだ。

そう思った瞬間、怖くてシリウスを見れなかった。
きっとこのままだと、シリウスに危害が加わる。シリウスを失うことになる。
それだけは避けたい…シリウスまで巻き込んで命を落としてほしくないから……。

「どうしたんだ?アリーナ」

その場に崩れ落ちる私を見て、不安気に尋ねる。
触れられた肩をそっと離し、私は笑顔で一言だけ告げた。

「さよなら…」

彼は「え?」と目を見開き、握られた手を只管見続けた。
私はその場から去り、一人の女、から「天界の巫女」へと戻った。
もともと人間を愛してはいけなかった。なのに私は人間のシリウスを愛してしまった。
光に包まれながら天界へと戻るその時…シリウスは涙一つ流さずただその光を見ていた。きっと最後の最後まで状況を把握できなかったんだろう。無理も無い。

天界に戻れば、案の定私は神に命令を下された。
「永遠の眠りにつき、我に身を捧げつづけよ」……と。
私は従うことしかできない。目を閉じて頷き、静かに氷の奥へと眠りについた。

それから何百年経つかは分からない。
だが私の胸の奥でずっと輝き続けて、願い続けている。
「もう一度シリウスに会いたい」…この願いは果てることなく、咲き続けるのだろう。
人間のシリウスはとっくに死んでいるというのに…ばかばかしい。
この冷たい氷越しでも会えたら……

思わず手が伸びる。その時だった。

「…アリーナ」

「…シリウス?」

目を疑う光景だった。
目の前にはシリウスが立っていたのだから。
あの頃と変わらない笑顔で…じっと私を見て立っていた。
だがその影は一瞬で消え、なくなってしまった。

「……幻なの?」

それが神の贈り物なのか、本物なのかは分からない。
でも…それでも…私はシリウスにもう一度会えたんだ。触れられた。
もう思い残すことはない。

そう心で囁き、もう一度眠りに落ちたのだった。


END

軽い短編かいたみた^^

アバター
2014/06/29 16:03
ブログのコメントありがとうございます。

また相談乗ってください^^

私も小説「紙飛行機」っていうの書いてるのでよかったら見てください^^

続き書いてないけど…w
アバター
2014/06/29 14:36
久しぶりに小説かいてくれて嬉しいです!
また書いてくださいね。
アバター
2014/06/29 12:17
スゴいです!!
アバター
2014/06/29 10:35
素晴らしい出来かと^^



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