消えた空唄【短いの何個か】
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/06/20 22:50:38
# - 魂の味
死ぬのは怖かった。
「……ぁ……、ッ……」
出そうとした声が掠れ、喉に小石を詰まらせているようだった。
気が狂いそうなほどの寒気、真っ白に塗り潰されていく感覚、思考、感情、記憶、思い出。
墨汁が染みるように穴だらけになった視界に、最期に映った彼の顔。
ただ、暗闇が広がる。
溢れ出すように視界を覆った漆黒に呑まれて、意識が濁流に押し流されていった。
泡のように消えた台詞は、台本から逃げ出した。
「――――あ……、」
彼が、何か言っているのが聴こえる。
けれど台詞までは聞き取れず、少女は最後の息を吐き出し、目を閉じた。
【落ちた露】
「お前さ、自分の考えとか無いの」
「……」
「ただ従って何でも利いて、それは忠実なんかじゃないだろ」
「……」
「またそうやって、殺すのか」
【ユニコーンの角】
激しく上がる火の手に照らされて、二つの影が長く揺らめく。
飛び散る火の粉が、灰と共にふわりと舞い上がった。
「……満足したかい」
「ああ」
「けど、君の復讐は終わらないんだろう」
「……まだ、一つ目だ」
【復讐の復讐】
「どうして!?どうして諦めるの!?貴女が私を呼んだのは、命に換えても復讐したい人が居るからでしょう!?」
「生きてる人全てが妬ましいと思うくらい、世界中の何もかも恨めしいと思うくらい、貴女が復讐に焦がれている姿が何よりも美しいのに!」
「諦めたなら、貴女はイラナイ」
【鳥兜】
「……ごめんなさい、来るのが遅くなってしまって」
供えた花束が夏の熱風に煽られ、少女の雪のように白い髪を揺らした。
髪に合わせた真っ白なワンピースが、良く似合っていた。
外れた首輪と鎖の冷たさが、今は少しだけ恋しい。
「私、19になったんですよ」
少女は間もなく、女性になるだろう。
嬉しそうに、どこか哀しそうに、彼女は微笑む。
「私、貴方が居ないと何も出来ない」
次に発された台詞は、震えていた。
【黒百合の花束】
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トカバレ4:言ロン1
いないからな・・。 うむ。