Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


泣いても笑ってもニュクス様


雨の降りの教会の窓から街道で遊ぶ子どもたちの声を聴く。

「わぁー雨だ、雨だ」と、男の子。
「えへへ、ばしゃーーん」と、水溜まりに自らジャンプして飛び込む女の子。

他愛もない世界・・・。

窓のガラスに映る黒髪をさわり、神楽(かぐら)はふと後ろを振り返る。

見ると、赤茶色の中央扉が今にも開こうとしている。

きっとマールだ。そう思い神楽は符を一枚、窓ガラスを上に押し上げ、外へ捨てた。

少しどてっと太っている短い赤髪の女性、マールはシスターの礼服姿でつかつかと、神楽の前へやってくる。

「見つけましたよ。神楽様・・・悪魔退治をしてもらうためにも精をつけてもらわないと困ります」
「大丈夫・・・大丈夫。もう手筈は打ってあるから」
「そうではなく。朝ごはんです。今日こそは逃がしませんよ」と、神楽の襟首をつかみ、持ち上げて連れて行く。

重さはある。しかし・・・彼女が連れ出したのは金に輝く符一枚だった。

符から符への魂の移動。

その移動の間に垣間見る黒い傘、黒い帽子、黒いイブニングドレス・・・何よりも真紅に輝く瞳と虹色に輝く長い髪。

とても人間とは思えない。彼女はいつも玉座に座り、その傍らには四人の大天使と七人の悪魔王たちが跪いている。

一体彼女は何者なのか。

そしてどうして自分の魂をいつも移動させてくれるのか。

それはまだ神楽には分からない事だった。

雨の降る中、知らない西洋の街道を雨に濡れる事も無く、歩き続ける。

水が属。それが神楽の属性だ。

雨粒をまるで階段を上がるようにひょいひょいと登って行く。

教会の鐘の下にある狭い空間にひょいっと降り立つ。

そこで寝転び、時は過ぎた。

夜の集会、オーガを暴くための集会だ。

今回のオーガは何度か人間の心臓を食べているので、人間に化ける事ができる。

それで見破る事ができずにいるのだ。

今日もオーガは自分が殺した誰かに化けて教会に来ている。

見破る事ができなければまた犠牲者は増えて行く。

「ひぃふぅみぃ・・・二十人。以外に集まったじゃない」
「あの神楽さん、ほんとにこんな紙切れで見破れるんですか?」
「まあまあ、ボクを信じて任せる」
「はい」と、しぶしぶマールは符を配ってくれた。
誰からどう見てもただの紙切れだ。

その紙切れに神楽の気を入れる。

符は金に輝き、呪を発動させる。

後ろの席に座っていた男性が青白く燃え上がる。

「キャー、火事だわ。大変よー」と、マールは素直に叫んでくれる。

「大丈夫、すぐに消えるよ」と、神楽は言う。

炎がおさまると、頭に二本の角を生やし、筋骨隆々な姿をしたオーガが現われた。

瞳の色はうっすらと赤い。

「うがぁああああああああああああ」と、オーガは雄叫びを上げる。

周囲の逃げ出そうとしていた人たちの動きを止める。

(そうこなくっちゃ)と、ボクは舌でクチビルを舐めた。

ボクは懐から小刀を取り出し、一指し指を傷つける。

一滴の血をしたたらせ、円陣を完成させる。

「フェンリル!」

真紅の目をした氷の狼。魔王の部類に属するボクの分身。

今度はオーガが動けなくなる。

悪魔同士の戦いは「怖がった」方の負け。

「喰らえ!」と、ボクは命ずる。

オーガは何もできないまま喰われた。

教会に残っている人間たちから・・・忌み嫌われる目線で視られる。

(やはり外国でも一緒か。)

ボクはフェンリルを小さくし、教会の赤茶色の扉を開けて出て行った。


続くかもしれません。しかし、ストーリーの連結性はありません。

物語としては一話限りで終わっています。

あい





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