Nicotto Town



底辺バンドマン 衣食足らねど礼節を知る

上半身裸、ラリーグラハムの如きチョッパーでライブハウス中暴れ回る小柄なNは、
ライブがあろうとなかろうといつもハコに居る、正体不明の人物。
対バンやセッションでたびたび顔を合わせるうち仲良しに。

知人のヘルプで私とNが呼ばれ、リハ後に小洒落たイタリアンの店に。
ギャラ代わりでメシはタダ、コンビネーションサラダの大鉢が出てきた。
何気なくNの食い方を見ると……お、お、オマエ!

皿に載せたレタスをナイフとフォークで丁寧にちぎり(切るんじゃないんです!)、
フォークを右手に持ちかえて、掬って上品に口に運ぶ。何という美しい召し上がり方!
ボサボサ長髪に無精髭にヨレた服装、ベースも裸で持ち歩く人物像と全く一致しない。
興味津々で尋ねたところ、照れながら話してくれました。

ドイツ放浪中、シングルマザーの家に数日転がりこんだ。
ある朝、グリーンサラダが出てきたのでフォークでグサリと刺して食べようとしたら、
小さな娘さんが母親に向かって自慢げに話す声が聞こえる。

「ママ、あのおじちゃん、お行儀悪いんだよね。アタシはちゃんとやってるでしょ?」

大ショックを受け、それ以降フォークで食物を刺すことを決してしなくなったとの事。
いやーシビレました。何と繊細な感性、これを礼節と言わずして何という。
私が心から尊敬する底辺バンドマンの一人です。




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