ごきげんよう、さようなら
- カテゴリ:自作小説
- 2014/06/03 21:40:52
ごきげんよう、さようなら
命の音を聴き分けなければ、死んでいた。
時間は止まったまま。符に魂を移動させて、何とか攻撃をしのいでいる。
矛盾している話だが・・・止まった時間の中でも魂は動く事ができる。
レヴァンティンとは何だろう。
レミリーの言う通りなら神にもらいし唯一の武器となる。
おじい様は神に愛されしモノの呼び名だと教えてくださった。
声無き声を聴く事はレヴァンティンではないのだろうか。
レミリーは攻撃に満足したのか、時間を動かす。
「まだ死んではいない事はわかっている!さあ、出て来い!今度は符を用意する暇すらなかったはずだ」
「・・・」ボクは返事をしない。
「私を愚弄するか!」と、レミリーは赤く輝く翼を背中に広げる。
符によって24分身を完成させる。
さらに一人五枚の符を同時に発動させる。120枚だ。
「私を誰だと思っている!」レミリーの分身は時空を超越した次元分身だ。
一人で五体を軽々と倒すレミリーが二人。
残り、14人。
符を増やす。分身は増やさない。
あと少しだ。
「何を企んでいようと今度は容赦しないぞ。レヴァンティン!」
レヴァンティンは魔力の源?赤き輝きにして、紅の鎌。
因果律そのものを壊す不思議な武器。
呪(しゅ)も彼女の武器の前では何の意味も持たない。
レミリー・・・やはり、騙し合いはボクの勝ちかもしれない。
よく言うだろ。
一手目はフェイク、二手目が本物ってね。
おとりの呪(しゅ)を見事に壊したレミリーは最後の1人である、ボクの分身に迫る。
本体はもちろん、別の符だ。
ボクは臆病なんだよ、レミリー。
円陣は完成する。
「ごきげんよう、さようなら」呪(しゅ)は完成した。
レミリーを次元回廊の中へ閉じ込めた。
ロンギヌスの槍を使われても大丈夫。
もっと言えばレミリーの武器、レヴァンティンを使われても大丈夫。
レミリーが壊すのは別次元の何かだから。
ボクは符を使ってレミリーと交信する。
「どこだここは?だせー」
「ボクの作った次元回廊だよ」
「馬鹿な・・・何故貴様にそんなモノが創れる?」
「ボクはただの人間。時間の中で動けるのは魂だけ・・・でも、時を止める符は創れるし、次元回廊の仕掛けも創れる」
「それが陰陽師の力だと言いたいのか」
「そうかもね・・・出してあげてもいいよ。出て来たらボクはいないけど」
「どうすれば出れる?」
「ごきげんよう、さようなら・・・そう、唱えればいい」
「ごきげんよう、さようなら・・・」
レミリーは自分の館に戻っていると実感した。
陰陽師の神楽はもういない。
「またしてもまたしても・・・神楽ーーー」
白い帽子を脱ぎ捨て、地面に投げる。
背中に魔力の翼を広げて、レミリーは飛び立った。