Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第三十五章 】

第三十五章 『愛する資格』


「拓斗!次あれ乗ろうよー!」

「えぇ、もう疲れたって・・・」

「いいから~!」

ずっとずっと憧れてた遊園地デートが叶った。
拓斗と何度か約束はしてたけど、行けた事は一度もなかったから。
私は強引に拓斗の腕を掴んで観覧車に押し込んだ。
彼氏と一度は乗ってみたい、って思ってたアトラクションだから今日は本当に嬉しい。
そんな感情が滲み出てつい笑みがこぼれた。

「・・・楽しい?」

二人きりの空間で口火を切る拓斗。
私は大きく頷いて窓に視線を戻した。
こんな空間でさすがに視線を絡ませるのは気まずい。
だが拓斗は視線を外そうとしなかった。むしろ見つめて微笑んでいた。
そんな微笑が窓に映って鼓動が早くなる。

「な、何?」

思い切って尋ねる。
すると拓斗はプハッと笑って左右に首を振った。

「何もない。ただ・・・幸せだなって」

そう微笑む彼にまたドキッと胸の奥を揺さぶられる。
そして微かに昔を思い出してしまった。
あの頃の・・・私が坂谷君に受けた衝撃と、今の衝撃が似ていたからだ。

「──ごめん、変な事言ったね。」

寂しげに視線を逸らす彼。慌てて私は訂正した。

「ううん!そうじゃなくて。その・・・、私も幸せ、だし」

そう答えると、彼は顔を明るくさせて笑った。
「そっか」と赤らむ彼の笑顔は誰よりも可愛くて、輝いていた。
こっちまで微笑んでしまうような・・・そんな笑顔だった。
そして、ついこんな言葉が毀れた。

「・・・ごめんね、拓斗。」

「え?」

その時、頭にあったのは坂谷君との事。
あの日あの時、実際私は拓斗を忘れて彼を想っていた。
こんなに想ってくれている拓斗を切り捨てようとしてた──・・・。
いや、むしろ利用しようとしてた。諦められない理由にしようとしていた。

「私、拓斗が好き。本当だよ」

そう告げると、彼は頬を赤らめて私を抱き寄せた。
そして、吐息を耳に掛けながらそっとこう言った。

「知ってる。分かってる!」

そんな陽気な声に涙が込み上げる。
今まであんなに傷つけたのに、変わらず居てくれる。
昔と変わらない陽気な声で私をこうやって抱き締めてくれる・・・。
彼の背中に腕を回して、そっと目を閉じる。途端に落ちる涙は彼が掬い上げてくれた。
きっとこの気持ちは変わらない、ずっと、きっと。

その時、突然電話が鳴り響いた。

「──っと、ごめん!電話みたい。」

「・・・あ、うん。」

それは私の携帯ではなくて、彼の携帯だった。
珍しくてつい目を丸くしてしまう。彼はあまり携帯鳴らないから・・・。

「・・・!」

「? どうしたの?」

そう尋ねるや否や彼は慌てて電話を切り、携帯を仕舞う。
そして冷や汗を流しながら無言で首を振った。
首を捻り、もう一度尋ねても言葉は返ってこなかった。
私の頭の「?」は消えず、帰宅時になってもそのしこりは消えなかった。
夜道で二人、遊園地の帰りにも関わらずテンションが低かった。
拓斗もあの電話以来、あまり口火を切らなくなった。何故か静かになってしまったのだ。
あの携帯には何が表示されていたのだろう。あんな彼はじめてみた・・・。
夜道は段々と暗くなっていき、家に着いた時には十一時を回っていた。

「ヤバイね、早く寝なきゃ。」

そう言いながら鍵を開けて、中に入る。
途端に振り返ると、棒立ちしている拓斗が居た。

「・・・入らないの?」

尋ねると、彼は真っ青な顔で私に言った。

「ごめん、今日は帰る。・・・またな」

「──えっ?」

事情も言わず彼は走って帰ってしまった。
何事か私にはまったく分からない。むしろこんな事初めてでパニックに陥っている。
彼がここまで携帯の着信で焦りを見せたりするのは初めてだ。
もしかしてご両親の様態が悪くなった、とか倒れたとかじゃ──・・・。
まさか私に黙って平気な振りしてたけど病院から電話来たとか?

「拓斗っ!!」

じっとはしてられず、慌てて走った。
彼の家は知ってるし、今ならきっと間に合う。そう信じて拓斗の背を追いかけた。
予想通り拓斗の背中にすぐに追いつき、手を伸ばした。

「たくっ──・・・」

その時、僅か数mの距離で私は見た。
拓斗が美しいスレンダーな美女と話しているところを。
彼女の茶色い髪の毛に彼は触れて、肩を抱き寄せている・・・。

「・・・嘘でしょ?」

まさかさっきの電話の相手は彼女?慌てて切った理由は・・・アレ?
いやいや、拓斗に限ってそれだけは無い・・・と信じたいけど。
もしそうでも私に責める資格があると思えない。もしそうであっても私も待つことを選ぼう。
でも・・・もしそれが本当だったら・・・

「・・・拓斗」

貴方を愛してもいいのか分からない。


◆続く◆

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2014/04/30 00:04
拓人くんどういうことですかねw
すごく続き気になります!
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2014/04/25 22:37
おお!坂口君のつぎにまたまた邪魔者が出てきましたね、
面白くなりそうです♪
楽しみにまっています
アバター
2014/04/23 21:47
今回のも凄く面白かったです♪
順調にみえた拓斗君と夏芽ちゃん。まさかの女の影………
これからどうなるのかハラハラドキドキです。
はやく続きが読みたい!!!!



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