Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第三十四章 】

第三十四章 『幸せ』


「お世話になりました、先生。」

「無事退院できてよかったですね。」

あれから数週間、様子見として入院していた。
拓斗は付きっ切りで看病してくれ、友人の翔馬君も良くしてくれた。
ここの先生も融通が利く人で、よく私の話を分かってくれた。
この病院にはすごくお世話になった気がする・・・。

「行こう、夏芽。」

「あ、うん。じゃあ先生・・・」

先生は「お大事に。」と微笑んで手を軽く振った。
翔馬君は私たちに気を遣ってタクシーでそのまま帰ってしまった。
二人きりで横断歩道を眺める。そして同じタイミングで顔を見合わせた。

「その、心配させてごめんね?」

荷物を両手で抱えながら肩を小さく竦める。
そんな私を見下げ彼はニカッと笑った。

「いいんだよ。お前が無事ならそれで」

大きな右手が私の頭に触れる。そして大きな荷物を持ってくれた。
優しさ溢れるその柔らかな笑顔が輝いて眩しい。
慌てて目を逸らして咳払いした。

「えっと、どうやって帰る?翔馬君みたいにタクシーで・・・」

「そうだな、そうしよう。」

その日は大人しくタクシーで帰宅し、家に着いた。
拓斗のマンションではなく、私の家だった。
私たちは同居してるわけではないからお互いの家はしっかりある。
ただ最近は拓斗が寝泊りしていたというだけの話だ。

「そういえば・・・、夏芽。もう大丈夫なのか?」

上着を掛けながら話す。振り返った瞬間、彼はとても複雑そうな顔をしていた。
眉を歪め、眉間に皺を寄せている。それを見て私はハンガーを掛けて歩み寄った。
そしてゆっくりと両手で彼を包み込み、精一杯抱き締めた。

「──心配させてごめんなさい。でももう大丈夫だから」

「・・・私は拓斗の傍に居るから。」

続けて言った。拓斗はコマ送りに涙を流していった。
一拍置いて私を抱き締め、「うん」と耳元で小さく囁いた。
それから数分間、私たちは幸せと再会に浸っていた──・・・。
喜び、そして切なさに・・・。

◆ ◆ ◆

「夏芽、今日は仕事休み?」

「うん。退院して一日は休めって言われちゃってて・・・」

「そうか。」

「・・・もう少しで昇格できたかもしれないのになぁ。」

ココアを啜り、呟く。
それを聞いた彼はニコッと微笑んで言った。

「チャンスはきっと来る。それまで待とう」

不思議と拓斗の言葉には説得力を感じる。
「大丈夫」って言われると本当に大丈夫な気がしてならない。
そんな言葉を聞いてホッとし、思わず笑みがこぼれる。

「そうだよね、大丈夫だよね。」

安心してココアをもう一度啜り、風に揺らされる。
彼の胸の中で包まれて柔らかな風に揺らされる今はとても幸せ。
坂谷君とのことは・・・今でも忘れられないけど、きっと永遠に無理なんだろう。
でも、今の彼の存在は私の中で確実に変わってる。彼への気持ちも形変えている。
拓斗への好き、と坂谷君への好き、は違う。今ならハッキリ分かるんだ。

「ねぇ、拓斗。」

「ん?」

「どっか出掛ける?せっかく休みだし。」

「・・・いいな、行くか。」

「やったー!」

今なら貴方が好きだ、って胸張って言えるよ。
ありがとう、拓斗。絶対幸せになろうね。

アバター
2014/04/23 21:02
萌えた生ゴミさん>>
そうでよね、そんなキャラだったらここまで苦労してませんね笑。
これからどうなるんでしょうか。
アバター
2014/04/23 21:02
月妃さん>>
ありがとうございます、コメント!
確かにもうこれ以上邪魔しないでほしいですね・・・。
でも、この先私にもどうなるか分かりません笑。

そう言っていただけて嬉しいです、頑張ります!
アバター
2014/04/22 23:26
坂口君って
そんなにすぐに夏芽を拓斗くんに
譲るキャラじゃないかったような・・・(;・∀・)
アバター
2014/04/21 08:33
拓斗君と夏芽ちゃん幸せになって!!!!
そして坂谷君これ以上二人の邪魔しないであげて!!!!

ほんとaichaさんの作品素晴らしすぎます!!!!
続き楽しみにしてます♪



月別アーカイブ

2019

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.