恋の芽が出る頃に 【 第三十四章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/04/21 00:27:23
第三十四章 『幸せ』
「お世話になりました、先生。」
「無事退院できてよかったですね。」
あれから数週間、様子見として入院していた。
拓斗は付きっ切りで看病してくれ、友人の翔馬君も良くしてくれた。
ここの先生も融通が利く人で、よく私の話を分かってくれた。
この病院にはすごくお世話になった気がする・・・。
「行こう、夏芽。」
「あ、うん。じゃあ先生・・・」
先生は「お大事に。」と微笑んで手を軽く振った。
翔馬君は私たちに気を遣ってタクシーでそのまま帰ってしまった。
二人きりで横断歩道を眺める。そして同じタイミングで顔を見合わせた。
「その、心配させてごめんね?」
荷物を両手で抱えながら肩を小さく竦める。
そんな私を見下げ彼はニカッと笑った。
「いいんだよ。お前が無事ならそれで」
大きな右手が私の頭に触れる。そして大きな荷物を持ってくれた。
優しさ溢れるその柔らかな笑顔が輝いて眩しい。
慌てて目を逸らして咳払いした。
「えっと、どうやって帰る?翔馬君みたいにタクシーで・・・」
「そうだな、そうしよう。」
その日は大人しくタクシーで帰宅し、家に着いた。
拓斗のマンションではなく、私の家だった。
私たちは同居してるわけではないからお互いの家はしっかりある。
ただ最近は拓斗が寝泊りしていたというだけの話だ。
「そういえば・・・、夏芽。もう大丈夫なのか?」
上着を掛けながら話す。振り返った瞬間、彼はとても複雑そうな顔をしていた。
眉を歪め、眉間に皺を寄せている。それを見て私はハンガーを掛けて歩み寄った。
そしてゆっくりと両手で彼を包み込み、精一杯抱き締めた。
「──心配させてごめんなさい。でももう大丈夫だから」
「・・・私は拓斗の傍に居るから。」
続けて言った。拓斗はコマ送りに涙を流していった。
一拍置いて私を抱き締め、「うん」と耳元で小さく囁いた。
それから数分間、私たちは幸せと再会に浸っていた──・・・。
喜び、そして切なさに・・・。
◆ ◆ ◆
「夏芽、今日は仕事休み?」
「うん。退院して一日は休めって言われちゃってて・・・」
「そうか。」
「・・・もう少しで昇格できたかもしれないのになぁ。」
ココアを啜り、呟く。
それを聞いた彼はニコッと微笑んで言った。
「チャンスはきっと来る。それまで待とう」
不思議と拓斗の言葉には説得力を感じる。
「大丈夫」って言われると本当に大丈夫な気がしてならない。
そんな言葉を聞いてホッとし、思わず笑みがこぼれる。
「そうだよね、大丈夫だよね。」
安心してココアをもう一度啜り、風に揺らされる。
彼の胸の中で包まれて柔らかな風に揺らされる今はとても幸せ。
坂谷君とのことは・・・今でも忘れられないけど、きっと永遠に無理なんだろう。
でも、今の彼の存在は私の中で確実に変わってる。彼への気持ちも形変えている。
拓斗への好き、と坂谷君への好き、は違う。今ならハッキリ分かるんだ。
「ねぇ、拓斗。」
「ん?」
「どっか出掛ける?せっかく休みだし。」
「・・・いいな、行くか。」
「やったー!」
今なら貴方が好きだ、って胸張って言えるよ。
ありがとう、拓斗。絶対幸せになろうね。
そうでよね、そんなキャラだったらここまで苦労してませんね笑。
これからどうなるんでしょうか。
ありがとうございます、コメント!
確かにもうこれ以上邪魔しないでほしいですね・・・。
でも、この先私にもどうなるか分かりません笑。
そう言っていただけて嬉しいです、頑張ります!
そんなにすぐに夏芽を拓斗くんに
譲るキャラじゃないかったような・・・(;・∀・)
そして坂谷君これ以上二人の邪魔しないであげて!!!!
ほんとaichaさんの作品素晴らしすぎます!!!!
続き楽しみにしてます♪