恋の芽が出る頃に 【 第三十三章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/04/06 18:45:34
第三十三章 『 蘇る 』
傷だらけの姿で目を閉じる夏芽を前に絶望に浸る。だがそんな俺の隣で「元気出せよ」と、励ますように座って微笑んでくれる友人。
俺は数年前からコイツに救われてきた──。
夏芽に一目惚れしてしまった時もコイツに励まされて、なんとか告白に漕ぎ着けたのだ。そう思えば、俺は翔馬がいなかったら今頃──・・・、
「おい!拓斗!」
俺の腕を強く引っ張り、喜悦した。「な、何だよ」と冷や汗を流しながらも視線を下にやる。
そこには意識を取り戻した夏芽の姿があった。目を薄っすらと開き、確かに指も動かしている。そして夏芽は呼吸器越しに消えそうな声で言った。
「拓・・・斗・・・?」
自然と頬を伝う涙を気にすることもなく、俺は彼女を抱き締めていた。子供のように泣き崩れながら、宝物を握る三歳児のように彼女を力強く抱き締めた。夏芽は抵抗する事もなく、ただ俺の背中を優しく擦ってくれた。
「よかったよ、夏芽ちゃん。」
翔馬が微笑む。
彼女は俺から離れ、照れくさそうに頷く。俺は彼女の手を只管握った。もう放さないよう、離れないように。それを見て翔馬は微かに笑ったが、すぐに柔らかな笑みへと変わった。
「俺、先生呼んでくるわな。」
「あ、それなら俺も──」
「バァーカ、お前が来てどうすんだよ!夏芽ちゃんのとこいてやれ。」
そう言って右手を挙げ、病室を後にした。
二人きりになった病室に吹く柔らかな風と、彼女の横顔。透き通った目、高い鼻、尖った顎、なによりも長い睫が魅力的だった。だが頭にはまだ包帯がある。他の所の傷もまだ癒えるはずもなく、痛々しく血が滲み出ている。そんな彼女を見て俺は思った。
──どうして守ってやれなかったんだろう、と。
彼女のためなら命だって捨てれると思っていたのに、そんな時にどうして傍にいてやれなかったんだろう。こうなるなら、離れるんじゃなかった。意地でも傍にいるべきだった。
後悔の嵐が俺を襲う。そして波が目から食み出すかのようにまた涙が落ちた。
「・・・拓斗、ごめんね。」
横目でチラリと見ながら、掠れた声で呟く。
ただ頭をクシャッと撫でて「大丈夫だよ」と囁く。俺はこんな事しかしてやれない。彼女の目に映るだけでも今は嬉しいが、彼女のためにしてやれる事がこれしかない。やっぱり俺はいつでも助けられてばっかりなのだろうか。
「ねえ」と、夏芽が口火を切る。そして柔らかな手で俺の頬に触れた。
「心配させたよね、本当にごめんなさい・・・これからはあなたの傍にいるから。」
その言葉で十分だった。小さな手で全身を包み込む彼女を見れただけでも幸せだった。元気に微笑んでくれる彼女が目の前にいるだけで満足だった。でも、一つだけ遣り通したい事がある。
「夏芽、もう一度抱き締めていい?」
「いいよ、抱き締めて」
この両手で彼女を抱き締め、そしていつまでも守り通すこと。
それが俺の生まれた意味と、俺の存在意義だと思うから──。
──コンコン。
「ちょ、拓斗放して?来ちゃうよ。」
「ごめん、今日は本当に放せそうにない・・・。」
「・・・拓斗?」
何も考えず、彼女を守ること、放さない事だけを誓った。
俺がいる限り彼女は俺が守る。誰にも渡さない。もうこんな目にも合わさせない。
◆ ◆ ◆
扉の向こう。
「ったく、ラブラブは退院後にしろよなー。」
「入らないほうがよさそうですね。」
「アハッ、先生すみません~」
「いえ、僕もあの状況ならああしますしね。」
「先生物分りがいいですね、さすが。」
扉の向こう側では二人の理解力が結ばれていたのだった。
◆続く◆
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遅くなってしまってすみません!汗
目覚めて!!
坂谷くんが邪魔に入らないことを祈ってますw
私も間違えてしまってた、すみません汗
坂谷君です!w
コメントありがとうございます!
坂口君はどうなっちゃったんでしょうね・・・?
坂口くんはどうなったんでしょうね・・?