Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第三十三章 】

第三十三章 『 蘇る 』



傷だらけの姿で目を閉じる夏芽を前に絶望に浸る。だがそんな俺の隣で「元気出せよ」と、励ますように座って微笑んでくれる友人。
俺は数年前からコイツに救われてきた──。
夏芽に一目惚れしてしまった時もコイツに励まされて、なんとか告白に漕ぎ着けたのだ。そう思えば、俺は翔馬がいなかったら今頃──・・・、

「おい!拓斗!」

俺の腕を強く引っ張り、喜悦した。「な、何だよ」と冷や汗を流しながらも視線を下にやる。
そこには意識を取り戻した夏芽の姿があった。目を薄っすらと開き、確かに指も動かしている。そして夏芽は呼吸器越しに消えそうな声で言った。

「拓・・・斗・・・?」

自然と頬を伝う涙を気にすることもなく、俺は彼女を抱き締めていた。子供のように泣き崩れながら、宝物を握る三歳児のように彼女を力強く抱き締めた。夏芽は抵抗する事もなく、ただ俺の背中を優しく擦ってくれた。

「よかったよ、夏芽ちゃん。」

翔馬が微笑む。
彼女は俺から離れ、照れくさそうに頷く。俺は彼女の手を只管握った。もう放さないよう、離れないように。それを見て翔馬は微かに笑ったが、すぐに柔らかな笑みへと変わった。

「俺、先生呼んでくるわな。」

「あ、それなら俺も──」

「バァーカ、お前が来てどうすんだよ!夏芽ちゃんのとこいてやれ。」

そう言って右手を挙げ、病室を後にした。
二人きりになった病室に吹く柔らかな風と、彼女の横顔。透き通った目、高い鼻、尖った顎、なによりも長い睫が魅力的だった。だが頭にはまだ包帯がある。他の所の傷もまだ癒えるはずもなく、痛々しく血が滲み出ている。そんな彼女を見て俺は思った。
──どうして守ってやれなかったんだろう、と。
彼女のためなら命だって捨てれると思っていたのに、そんな時にどうして傍にいてやれなかったんだろう。こうなるなら、離れるんじゃなかった。意地でも傍にいるべきだった。
後悔の嵐が俺を襲う。そして波が目から食み出すかのようにまた涙が落ちた。

「・・・拓斗、ごめんね。」

横目でチラリと見ながら、掠れた声で呟く。
ただ頭をクシャッと撫でて「大丈夫だよ」と囁く。俺はこんな事しかしてやれない。彼女の目に映るだけでも今は嬉しいが、彼女のためにしてやれる事がこれしかない。やっぱり俺はいつでも助けられてばっかりなのだろうか。

「ねえ」と、夏芽が口火を切る。そして柔らかな手で俺の頬に触れた。
「心配させたよね、本当にごめんなさい・・・これからはあなたの傍にいるから。」

その言葉で十分だった。小さな手で全身を包み込む彼女を見れただけでも幸せだった。元気に微笑んでくれる彼女が目の前にいるだけで満足だった。でも、一つだけ遣り通したい事がある。

「夏芽、もう一度抱き締めていい?」

「いいよ、抱き締めて」

この両手で彼女を抱き締め、そしていつまでも守り通すこと。
それが俺の生まれた意味と、俺の存在意義だと思うから──。

──コンコン。

「ちょ、拓斗放して?来ちゃうよ。」

「ごめん、今日は本当に放せそうにない・・・。」

「・・・拓斗?」

何も考えず、彼女を守ること、放さない事だけを誓った。
俺がいる限り彼女は俺が守る。誰にも渡さない。もうこんな目にも合わさせない。


◆ ◆ ◆


扉の向こう。

「ったく、ラブラブは退院後にしろよなー。」

「入らないほうがよさそうですね。」

「アハッ、先生すみません~」

「いえ、僕もあの状況ならああしますしね。」

「先生物分りがいいですね、さすが。」

扉の向こう側では二人の理解力が結ばれていたのだった。


◆続く◆


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遅くなってしまってすみません!汗

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2014/04/09 16:59
よかったです!!
目覚めて!!
坂谷くんが邪魔に入らないことを祈ってますw
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2014/04/06 21:42
あ、さっき書いてた作品の苗字考えてたから・・・
私も間違えてしまってた、すみません汗
坂谷君です!w
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2014/04/06 21:41
すいません、坂谷くん?でしたね
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2014/04/06 21:41
萌えた生ゴミさん>>
コメントありがとうございます!
坂口君はどうなっちゃったんでしょうね・・・?
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2014/04/06 21:39
いや、全然遅くないです^^*
坂口くんはどうなったんでしょうね・・?



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