Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第三十一章 】

第三十一章 『 ケ ジ メ 』




「 …──坂谷君 」


私は目を見開いたまま、椅子ごと身を引いていく。
一歩一歩ゆっくり歩み寄る彼の顔はいつの間にか数cmの距離にあった。
私はただ顔を逸らし、目をギュッと強く瞑りながら唇を噛み締めた…。


その刹那、チクチクとただ秒針の音だけが鳴り響く──…。
時計の音が聞えると共に鼓動が速くなっていく…。
そんな自分がまた情けなく思いつつ、鼓動の速度は緩めることはなかった。


ただ彼の吐息を額に感じながら目を瞑る。
揺れる睫毛を瞼で感じ取りながらも、私は目を開けなかった。
そして数分後──…、彼は私から離れた。


「 ごめん、もう強引にする気はねぇ。 」


眉間にシワを寄せ、片方の眉を下げながら寂し気に呟く。
まさか本当にあの件の事を気にしてくれてたなんて…思わなかった。
やっぱり坂谷君はあの頃に戻ったの…?あの頃の坂谷君が本当の坂谷君だったのかな


彼の瞳を見つめ、そんな事を考えていると彼はフッと微笑んだ。


「 そんな目で見るなよ。
  
   …──勘違いされるぞ? 」


「え?」と聞き返した時にはもう遅かった。
ケジメをつけるどころか、それ以上関係が進んでしまった。
震える私の肩を優しく撫でる彼の手に思わず翻弄されてしまって…
意識が薄っすらして理性が保てない。ただ初恋の彼とのキスを味わっていた。


・・・ケジメ・・・ケジメ・・・

…──ケジメって何だっけ?


自問自答を繰り返し、答えは見つからない。
ただ迷宮の中で頼りになる彼の腕を掴んでゴールを探しているような…
私を今迷宮の中から連れ出そうとしてくれるのは坂谷君だけなの。
でも…でも…なんかしっくりこないっていうか…


・・・私何したいんだろう。


「 ッ…夏芽、こっち向いて? 」


唇を離し、私の頬を撫で、自分のほうへ向かせる。
私は意識がまだハッキリしないまま彼のほうへ向き、首を傾げる。
まだ考え中なのにも関わらず、私の体はしっかりと彼を受け入れていた。


逞しい彼の腕を掴み、へにゃっと微笑んだ。


「 さかたにく──… 」


そしてそのまま私は彼の胸に倒れこんだ。
意識は失い、ただ彼の両腕に包まれた温もりは覚えていた。


ここからの記憶はまったくない。



◆ ◆ ◆



朝…、いつもの目覚まし時計や拓斗の甘い声ではなく小鳥の声に起こされる。
右のほうを向くと、柔らかく羽のように浮かぶ真っ白なカーテン。
そして左側から香るシャンプーの香り、そして洗剤のいい香り──…。
ふいに手を挙げると、途端にしたふかふかの柔らかい感触…これは…ベッド?


疑った瞬間、体を一気に起こして左右を見渡す。
右にはふわりと浮かぶカーテン、そして左には気持ち良さそうに眠る坂谷君……


・・・・えっ?


もう一度右側を見てから、左側を見る。
その瞬間に目に入ったのは気持ち良さそうに眠る坂谷君……
何度目を擦って同じ光景が私の目に突き刺さる。


・・・嘘でしょ、なんで・・・ッ


「 いやあああああぁッ!!! 」


部屋中に響き渡る悲鳴と共に坂谷君が跳ね上がった。
両耳を塞ぎ、歯を食いしばりながら眉を歪める。
布団を体に被せながら、眉を歪めて彼を睨む。


その瞬間、彼は大きな声で言った。


「 いきなり何んだよッ!? 」


目を大きく見開いて私を見つめる。
その瞳を見た瞬間、思い出した…昨日の夜の事。
慌てて布団で全身を隠し、彼を鋭い目付きで睨んでやった。


そして彼は目を泳がせながら髪を掻き毟った。
薄っすらと開いた口で、今にも消えそうな声で私に囁いた。


「 …──ごめん。
 
   わ、わざとじゃないんだ…その… 」


・・・わざとじゃないって何?

この人なんの話してるの?しかも申し訳なさそうに。

おまけにそこまで目をギョロギョロ泳がせて髪掻き毟って…。


…──私の事なんだと思ってるの?


「 もういい、最悪。 」


隣のガウンを手に取り、そっと羽織る。
その瞬間、腕を捕まれ引力に引き寄せられた。
そして彼の濁った瞳に吸い込まれる。私はただそれを見るだけ。


捕まれた腕に視線を落とし、思い切り振り払う。
そして最後に言い放った。


「 本当にこれで終わりだからね。 」


言い終えると、着替えを済ませて部屋を出た。
そして何度も心で唱えるように言った。


・・・これがケジメなんだ。
これはケジメ、これはケジメ、これはケジメ。
ケジメをつけるには大事な事で、必要な事だったのよ。
これでやっと拓斗に会える。これでもうあの人とは縁切れたのよ。


…──そうよね?



◆続く◆

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~コメントについて~

毎度コメント誠にありがとうござます。
ここで頂いたコメントはこの場でお返し致します。
今後もaicha共に小説達を宜しくお願い致します。

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2014/03/28 00:31
ぱち公さん>>
コメントありがとうございます^^*
夏芽も曖昧ですよね~、本当に!笑←
作者が何言ってんだって話ですが、腹立ちますよ。
拓斗の優しさに少し離れて薄れる気持ちってのもあるんでしょうかね?
今後も見所盛り沢山で作りますのでお楽しみに♪
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2014/03/28 00:29
続きどうなるのかすごく気になります!
どっちにいくんですかね、、、なつめちゃん、、
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2014/03/27 01:11
♀萌えた生ゴミさん>>
コメントありがとうございますっ!
私もいつもコメント楽しみに読ませて頂いてます^^*
今後共宜しくお願い致します。
アバター
2014/03/26 20:46
いつも楽しみに読ませていただいています。
これからもよろしくお願いします



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