恋の芽が出る頃に 【 第三十章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/03/22 22:31:49
第三十章 『 不適な笑み 』
全てはケジメをつけ、幸せな日々を歩むため──…
拓斗と何も考えず、しっかりと手を繋ぐために必要な事なんだ。
そして拓斗ともう一度抱き締め合って、微笑める生活が出来るようにっ…。
私は拓斗と距離を置いた。
坂谷君の事を完全消し去るために。
通勤路がいつもより曇って見える今日…。
着信が着ていない画面を見て落ち込む今日…。
本当に拓斗ももう私からはなれる事を決心したんだ──。
…馬鹿みたい。
私から別れを告げたのに。
なのに…なんで拓斗に新しい女性ができたらとか思ってる。
でも心のどこかで坂谷君の笑顔も浮かんでる…私、本当に身勝手で最低だ。
落ち込んだ表情を抑え、慌てて陽気な表情へ変える。
拓斗は私の笑顔が好きだって言ってた。だからせめて笑う事はやめないでおこう。
もしかしたらどこで拓斗が見てくれてるかもしれない…しねっ。
止めた足をもう一度進ませ、会社へ向かう。
会社のオフィスはあの日以来落ち着いて居れた事がない。
落ち着けたとしても、コーヒーを啜り、資料を眺めているときくらいだ。
今日も押し倒された壁を見、目を逸らす。
そしてあの夜を思い出して自分に苛立つ──。
最近こればかり繰り返して頭がおかしくなりそうだ…。
「 …仕事しよ。 」
席に着き、資料を並べる。
そして帰宅時まで繰り返し作業を行うのだ…
◆ ◆ ◆
仕事はほぼ片付き、大きく伸びをする。
時計を確認すると、もう8時を回っていた…。
「 やだ、もうこんな時間…っ 」
慌てて資料を鞄に詰め込み、会社を飛び出そうとドアノブを捻った瞬間…、
私は重要なことを忘れていた。…急いで帰っても誰もいないという事。
いつも笑顔でおかえりと微笑んでくれる彼はもう…いないのだと。
自分で別れを告げておいて、まるで悲劇のヒロインを演じてるような気持ちだ。
そっとドアノブから手を放し、もう一度席に着く。
綺麗にまとまった資料を見直す。どこもミスは見当たらない。
もうやるべき仕事は全て終えている…。ここにいる意味がないのだ。
だが私は一歩も動こうとしない。
家に帰るのがこんなに苦痛になったのは初めてだ。
深いため息が零れた瞬間、扉が開いた。
「 ──…ッ! 」
そこに立っていたのは坂谷君。
微笑んで、パリッとしたスーツで歩み寄る。
私は体が硬直して動けず、ただ彼を見上げるしかできなかった。
その刹那、彼は私の頬を撫でて言った。
「 …やっと、言える日が来た 」
言い終えると、彼は不適な笑みを浮かべた。
◆続く◆
続き気になります
この小説読むとテンション上がるのですが、
奥深くて・・・・
拓斗くんも優しい♡*
続き、楽しみに待っています♪