恋の芽が出る頃に 【 第二十五章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/03/11 23:02:09
第二十五章 『 過去の赤い糸 』
──…俺はお前が好きなんだ。
「 …… 」
月夜に照らされながら一人歩く帰り道。
彼の表情、オフィスに伸びる彼の影、荒々しい息遣いは私の唇を擽る。
そんな口から漏れた言葉が、時間が経ってもずっと私の頭を行き交う。
どうして突然…好きだなんて…。
だって坂谷君には美由が居たはず…なのにどうして。
私の事が好きだなんて言う考えはどこにも無いはずなのにっ…
それにあんな荒々しい表情…。
昔の坂谷君じゃ考えられないような顔だった。
いや…違う。もう昔の坂谷君じゃないんだ…過去にきっと何かあったんだ。
私の知らない…何かが。
◆ ◆ ◆
──…ガチャッ
静まり返った部屋に響くドアの音。
ギィギィという音を鳴らしながら忍び歩きで入る。
リビングへの曲がり角から漏れる光。ゆっくりとそれに近づき、覗く。
覗いた先には、ソファで眠る拓斗の姿。
ワイシャツの隙間からチラリと見える肌が妙に魅力的だ。
それになんと言っても彼の寝顔は、誰よりも輝いていると思う。
「 …ごめんね、拓斗 」
頬に触れ、その場に跪く。
ぽわりと浮かぶ優しい光が彼を照らす。
彼を見ていると突然眠たくなり、そのまま隣に擦り寄った。
首をゆっくり傾け、肩に頭を乗せる。その時に香るシャンプーの香りにまたときめく。
こんなに幸せでいいのかな。
そう思った瞬間、ついさっきの出来事は頭から離れていた。
坂谷君の言葉、表情、オフィスの匂いまでも全て彼のおかげで忘れられた。
ゆっくり目を閉じ、睫毛を揺らす。
途端に唇から流れ込む温かい息に反応する間もなく、眠りについていた。
きっと気がつけば朝になって…二度と坂谷君の事を思い出し、想う事もなくなるだろう。
──…きっと、拓斗と幸せになれる。
もう美由や、坂谷君や…あんな過去に追い詰められる事もない。
きっと拓斗だけが私を……
◆ ◆ ◆
──…ガチャッ
「 あ、お帰りなさい勇っ 」
玄関を開けると同時に出てくる妻、美由。
だが俺はコイツを愛してはいない…愛した事もない。
それでも結婚したのは…まあ、話せば長くなるんだがな。
だが美由は俺を愛してくれている。
せめてそれに応えなくてはならない。
…策略結婚だからと言って我儘は言えんからな。
「 ご飯にするっ?お風呂にするぅ? 」
フリフリのエプロンで犬のようにパタパタと近づいてくる。
俺のスーツの袖をギュッと握り締め、ずいっと顔を近づける。
共にキスをせがむように顔を突き出してきた。
──…俺は夏芽が好きだ。
それはあの日あの時、夏芽を失った日から変わっていない。
そう。夏芽が突然俺を避け、姿を消した日からずっとだ。
策略結婚というのもあるが、美由と結婚したのは他にも理由がある。
彼女は夏芽の親友であり、酷い言い方をすれば、夏芽に近づく近道でもある。
そんなこんなで結婚して、やっと夏芽に出会えたんだ。このチャンスは絶対に逃がさない。
いや、逃がして溜まるものか。
こんなに我慢してきたのに…美由と過ごして来たのに。
絶対夏芽を俺のモノにする。必ず手に入れてみせる───。
──誰にも奪わせねぇ。
「 …勇? 」
キスの体勢でムゥと頬を膨らませ、俺の名を呼ぶ。
その顔と姿勢が何とも言えないくらい腹立たしいのだが──…
これも全て夏芽との赤い糸を掴むため、仕方がないことだ。
ま、夏芽を落とした後コイツと離婚する。
それまでコイツとよろしくやっとこう。…上手くな。
そして待たせた美由の頬を撫で、唇を交わす。
感情も何も篭ってないまさに“無”の口付けを。
「 ンッ… 」
彼女の荒々しいキスと共に目に映る夏芽の笑顔。
待ってろよ、夏芽。
すぐにお前を抱き締めに行くから。
◆続く◆
皆様たくさんのコメント誠にありがとうございました。
嬉しい気持ちで胸がいっぱいでございます。
こんな小説を読み続けてくれてしかも「続きが気になる」だなんてもう…((涙
皆様の期待を裏切らぬよう、必死に書き起こしていきますのでご期待ください~♪
そして今後はコメントを頂いたブログでコメントをお返しさせて頂きます。
足を運べず、申し訳ありません…((汗
ですがここで私の気持ち、そして皆さんのコメントをお返しさせて頂きますので是非見てください^^
長文になってしまいましたが、今後もaichaを宜しくお願い致します。
そうですね、坂谷君はまるで別人になってしまいました。
どうしてここまで人間を変えてしまったのでしょう?180°変わってますよね。
こんな獲物を狩るような鋭い目付きができる彼ではなかった。でも今は違いますもんね。
どうして彼をこんな姿にしてしまったのか?…実はそこも見所なんです!!!^^
このお話は下でも言いましたが今からが本番なんです。社会人になった皆の過去がどう絡んでいくのか──。
夏芽を幸せに導く拓斗の存在はどうなるのか?ぜひ今後も本編に目をつけてください!^^*
美由との結婚は策略結婚、つまり愛はなかったのですね。
美由と結婚することで夏芽との距離を得ようとした坂谷君ですが──、
夏芽との相談に乗っていたのだから、喧嘩していたことは知ってるはずですよね?
ならば何故、美由を得ることで夏芽を掴もうと考えたのでしょうか?…そこも見所なのです!
このお話は今からが本番です。今後もぜひ飽きずに読んでいただけたら幸いでございます!!
一気に読むなんて大変でしたでしょう…汗
申し訳ありません、こんな小説のためにお時間をっ…((涙
そして受験お疲れ様でした。明るい未来と結果が来るよう願っています^^*
続き気になるのは、皆様が気になるように作ってるからですよ!ってね、嘘ですよw
続き気にしてくれてありがとうございます!次回も期待を裏切らぬよう頑張ります^^*
高校時代の坂谷君は優しくて、キラキラしていましたよね。
女子から見ればまさに王子様のような方でした。
そんな坂谷君が何故…こんな豹のような荒々しい人になってしまったのか…。
拓斗君とのラブシーンを味わい、成長していく夏芽も見所ですよ!
いつも楽しみにしてくださってありがとう、次も頑張りますね^^
めっちゃ続き読みたいです。
夏芽も苦しいですね(・_・;
坂谷くんすごく変わりましたね…
美由ちゃんと夏芽ちゃんが喧嘩したことを坂谷君は知らなかったのかな……
同じ学校に行ってたのになんでだろう……?
続き気になります!
一気にばーって読んでなかったとこ
読ませていただきましたぁ!!
今日無事後期の試験が終わってw
結果は1週間後なんですけどね(´・ω・`)
もーっ、なんでこんなに続きが気になるんやろ...??w
めっちゃ続きが楽しみです^^*
拓斗君となつめちゃんがうまくいくことを願ってマスw
続き気になります