恋の芽が出る頃に 【 第二十章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/02/26 20:56:17
第二十章 『 月のトライアングル 』
「 ──…落ち着いた? 」
抱き締められたまま、小さな声で囁かれる。
彼の温かい吐息が耳の中に入ってきてくすぐったい。
彼の腕の中で震えた私の両肩は、ゆっくりと収まっていった。
頬は涙の跡がくっきりと残る。
優しく引き離し、私の額にそっとキスを落とす。
「 …ッ 」
つい目をギュッと力強く瞑り、服の袖を握り締める。
そんな私を見て何を察したのか分からない。…だが、彼の目は寂しそうだった。
ハネた彼のクセッ毛をくしゃくしゃと撫でて、微笑む。
「 ありがとう…、拓斗。 」
泣いているのは私なのに。抱き締められていたのは私なのに…。
なのに今頭を撫でて励ましているのは私のほうだった。
「 バカヤロー、マジで心配したんだからな? 」
少し潤んだ瞳でまた私を抱き締める。
そんな彼の胸はとても熱くて…鼓動は息切れするほど速い。
彼の腕にしがみ付きながら、顔を埋める。
そして香る香水の香りが私をゆっくりとリラックスさせていく…。
彼の優しい力加減に身を任せてその日は一日、彼と過ごした。
会社はあったが、そんな事は頭になかった。
とにかく今は拓斗を好きになる事に専念したい。
坂谷君を忘れることに…専念したいの──…。
あと少しでなれそうだから…。
「 愛してる…拓斗。 」
微かに生まれた言葉を発す。
そんな言葉に耳を傾ける拓斗の仕草はとても愛らしかった。
◆ ◆ ◆
「 あ゛~…、しんどい。 」
仕事帰りに大きく伸びをしながら歩く。
真っ黒な空にふわりと浮かぶ月が手に掲げたコンビニの袋を照らす。
最近拓斗には会えてない。
仕事が忙しくなったとかで…会えなくなった。
転勤の話も微かに出てるらしい。…いやだな、転勤しちゃうの。
拓斗が行ったら私は独りになっちゃうのかぁ。
そんな事を考えながら一歩一歩踏み出していく。
そして空を見上げた瞬間、なぜか突然グラッとめまいがした。
──…働きすぎか?
もう片方の手に挟んだ大量の資料を目線まで上げ、溜息を零す。
そして、グラグラになったヒールを見てまたため息。
そんな時だった。
「 …夏芽ちゃん? 」
「 ──…? 」
聞き覚えのある声…。
振り返れば、そこに立っていたのは私が高校時代失った者。
「 み…美由…? 」
「 …久しぶりだね…。 」
そう微笑みながら片手を振る。
何年振りだろうか?こんなに綺麗になって…。
ていうかスーツ…ズボンだし…こんな綺麗に髪も巻いて…香水もつけてる。
今の私とはまさに月とスッポンだ。
「 美由…その… 」
「 どうしたんだ?美由。 」
──…えっ?
私が「?」と心で呟き、両眉を上げて見上げた先には信じられない者がいた。
「 嘘でしょ… 」
「 …今野? 」
「 ──…坂谷君? 」
そんなトライアングルのように並んだ私達を月だけが見守っていた。
◆続く◆
ENDってことは最終話ですか??
この後どうなってしまったのか気になるのですが、
そこは私達の想像におまかせってところですかね笑
普通にほほえましい恋愛モノかなーと思いきや、急展開続きでどきどきの連続です!
ここから回収に向かうのか、さらに広がるのか……
楽しみにしています!
たくとくんのイケメン度がハンパナいです!
続き気になります!