恋の芽が出る頃に 【 第十九章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/02/25 17:02:07
第十九章 『 心の本音 』
あれから拓斗は私を抱き締めて数分間放さなかった。
私の体は強く抱かれ過ぎて肩が少し痛い。
でも、やっぱり気づかされる。──…大事にされているんだなって。
感謝しなくちゃいけないのは分かってる、分かってるんだけど…
結局思い出すのはあの人、抱き締められても浮かぶのはあの人なの…。
拓斗…、これを聞いたらなんていうかしら。
暗い部屋の中でふとそんな事を思った。
独り寂しくベッドで額に手を当てながら、涙を堪える。
そしてふと思い出した。
瑠衣からメールで同窓会の誘いが着てたのを。
──…同窓会。
同窓会行ったら彼に会えるのかしら?
同窓会に行ったら…切れた人が結びなおせるのかしら…。
でも同窓会に行けば美由に会う…どんな顔で会えばいいか分からない。
…そんな事をグルグル考えて、結局結論は変わらない。
「 …やっぱ止めとこ。 」
結論が出たところで、スマホを手にとって報告。
瑠衣には高校出てからものすごくお世話になってるから申し訳ないけど…。
やっぱり彼以外の人達には…会いたくない。
──…いや、むしろ彼にも会っちゃいけない。
きっと今会ってしまえば私の気持ちに歯止めが利かなくなる。
そんな事を思いながら目を閉じると、いつの間にか眠っていた。
◆ ◆ ◆
「 うぅん… 」
今日もいつもと変わらない朝。
大きな伸びをして体を伸ばす。そして洗面台へ。
鏡に映るのは、かなりやつれた表情の私。なんて酷いんだろう。
化粧で隠そうとしても、無理だ。
これはきっと心の問題なんだろうな…。
そんな事をポツリと心で呟く。
すると洗濯機に置いたスマホが鳴り響いた。
メール…。差出人は瑠衣のようだ。
タオルで顔を拭いながら、詳細を開く。
するとそこには長い文章が綴られていた。
「 ──…ッ!? 」
全て読み終わると、途端に私の目は飛び出しそうになった。
瑠衣の言ってることがまったく理解できず、混乱する。
状況確認のため、慌てて電話した。
「 …あ、もしもし?瑠衣? 」
『 おぉ~、夏芽!久々に声聞く~ 』
電話に出るや否や瑠衣は感激の声を上げる。
だがしかし、そんな事を喜んでる心の余地はない。
「 手短に説明して。あのメールは何っ!? 」
少し声を荒げて尋ねると、瑠衣は溜息混じりに答えた。
『 アンタのためでしょ?…メールで話してた彼のためでもあるけどね。 』
「 ──…えっ? 」
瑠衣の言う“メールの彼”というのは拓斗の事である。
実は自分の感情が理解できなくて、唯一の友達に相談していたのだ。
いやいや、でも拓斗のためって…なんで…
「 それでも理解できない。 」
『 …ま、行けば理解できるよ。 』
「 ──…無理。
だって、いきなり彼と食事なんてできない。 」
瑠衣に突然出された提案、「坂谷君と食事をする」と言う事。
というか既にもうその作戦は実行されてて、坂谷君はレストランで待ってるらしい。
予約は瑠衣がしてくれてて、お金も瑠衣持ちだとか。…準備がよろしいようで。
…って関心してる場合じゃない。
今はこれを止めることに専念しなくては…!
「 あのね、瑠衣。私は坂谷君に会わないって決めたの…。 」
『 なんで? 』
「 なんでって… 」
そりゃ、会ったら気持ちに歯止めが利かなくなるから。
だって私にはもう拓斗って人が居て──…
『 彼のせいでしょ? 』
「 “せい”ってそんな言い方ッ… 」
『 いやいや、言わせてるのアンタだからね? 』
「 …え? 」
両目が点になった。思わず髪を掻き揚げ、状況理解に励む。
だがいくら考えても瑠衣の言ってることが分からなかった。
…何?拓斗の“せい”って言わせてるのは私?
いやいや、私はそんなつもり一切ないんですけど…。
ていうか拓斗にはむしろ感謝してるし、拓斗を捨てるなんてそんなむごいこと…
『 アンタ一生その人と居るの? 』
その瑠衣の問いかけがグサリと鼓膜を貫く。
掻き揚げていた髪が一本一本垂れ下がると共に瑠衣は言葉を続けた。
『 結婚できる? 』
「 …… 」
『 子供は?どうすんの? 』
「 …… 」
『 永遠愛せる自信ある訳? 』
「 ……ッ 」
うるさい。そんなの言われなくたって分かってる。
別にこの状況に永遠に縋りつこうなんて考えてないよ──…。
でも実際…もう少しこのままで居たいって思ってる自分だって居るんだよ。
今の私はきっと世間で言う“幸せ”なのだろう。
だから手放すのが怖いのかもしれない…。その幸せを逃がすと後がなさそうで…
『 …変わったね、夏芽ちゃん。 』
「 …ッ…ぐすッ… 」
突然溢れる涙に戸惑いを隠せない。
頭ではついていけなくても、体は全てを支配するように動き出す。
真っ白なタイルに膝から崩れ落ちていく体。
スマホを握るのが精一杯で、それ以上は力が入らないほど脱力する。
これから仕事だと言うのに、顔はしわくちゃになっていく。
『 じゃ、仕事だから切るね。 』
そう冷たく言い終わると、ブチッという切れる音がした。
まるでそれはあの時引き裂かれたときに聞えた音に似ていた──…。
もしかしたら私は…誰かに必要とされたかっただけなのかもしれない。
高校中退して、誰にも相手にされなくなって…
大学は一応頑張って行ったけど、そこでも抜け殻のようだった。
自分の積み上げたモノが崩れ落ちていく瞬間を目にするのが嫌だった。
その中で心のより所が必要で、愛してくれる人が欲しかった。
そこで出会ったのが拓斗だった…。
「 …ごっ…めん…拓斗… 」
涙を流しながらポツリと呟く。
「 ──…なんで謝ってるの? 」
「 …ッ!? 」
突然聞えた優しい声と共に見上げると、そこには拓斗が立っていた。
とても悲しげで、眉を歪めながら立っている。全てを理解したように──…。
「 拓斗… 」
「 …しっ、黙って。 」
そう言ってただ黙って私を抱き締めた。
そして耳元で囁く。
「 何があっても放さないって…言っただろ? 」
そんな言葉にまた涙が溢れ出す。
そしてただ心の中で謝り続けた。
拓斗ごめんなさい…ごめんなさい…。
今は貴方を愛せない。…でもいつか貴方を愛せるように…努力するから。
そして震えた背中を擦りながら彼の胸に顔を埋めた。
◆続く。◆
久しぶりに読みに来たのですが、結構内容がかわってて焦りましたが、
相変わらず面白かったです!
続き気になります!
時間があれば他の小説も読ませていただきます☆
拓斗と坂谷君、どっちを選ぶかの恋模様も気になるけど、
私としてはなんであんな事件になったのか気になります;
状況から察するに、まさかあの人が犯人?
そして動機には出生の秘密が関わってくるのかなぁ……なんて、勝手に推理しています!
想像しやすかったです★
表現うまいですね☆彡
でもストーリーが
いまいちわかってないやつ←読解力ないので;;