Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


瞬き 【 後編/短編小説 】

瞬き 【 後編/短編小説 】



あれから数日が過ぎた。
別に何事もなく、平和に過ごせたと思う。


──…今日までは。


◆ ◆ ◆


それは数時間前の事。


「 あ、川崎 」


呼び止められ、振り向く。
そこには息切れした大山先生が立っていた。


「 ──…?何か? 」


下校しようとしてたところ呼び止められた。
そんな中、私に渡されたのは大量の資料だった。


「 悪い、急ぎの会議があるんだ。
   ....代わりに教室に運んでくれないか? 」


なんて頷き難い頼みなんだろう。つい顔が強張ってしまう。
だが、先生の頼みだし、断れない。 渋々頷いた。


「 分かりました、貸して下さい... 」


「 おー、助かる!さすが川崎! 」


「 はいはい。 」


今は煽てられても苛立ちを増すだけだ。何も聞きたくない。
眉を歪めながら教室の方向へとUターンする。


なんで私が...、せっかく帰ってゆっくりしようと思ったのに。


そんな事をぶつぶつ言いながら、教室の前に立った。
なぜか教室の鍵が開いてたが、気にはしなかった。
どうせ大山先生が私に頼むつもりで開けていたのだろう....ぐらいの気持ちだった。


教室のドアを開き、踏み入れる。
教室には人影も見えない。誰もいないようだ。


「 ....っしょっと。 」


資料も置いたし、さっさと帰ろう。


そう思い、振り返った時だった。


「 ──…ッ! 」


そこにはなぜかあのチャラ男が立っていた。
思わず目を見開き、一歩引いてしまう。


彼は顎に触れながらニッと笑い、ゆっくりと近づいて来た。
一歩、また一歩と私は後ろに下がっていくばかり。
それでも彼は引こうとせず、とうとう逃げられないところまで追い込んだ。


「 ....な、何ですか? 」


強がるのにも限界がある。
おまけに私の後ろにあるのは逃げ場ではなく壁だ。
こんな完全追い込まれ状態の私に何ができるのだろうか──…?


少し視界が涙でぼやけてきた頃、彼が口火を切った。


「 怖ぇの? 」


まるで私を試すかのような口ぶり。
無償に苛立ちを覚えたが、反抗はできない...。


私は口を尖らせながら黙った。
すると彼は突然、私の顎を掴んで自分の顔へと向かせた。
また何が何だかわからなくなり、混乱が始まる。


とてつもなく近い距離で微笑む彼の笑顔はムカツクけどやっぱり素敵。
惚れたわけじゃないけど、やっぱり....魅力がある。


「 なあ、俺が今何考えてるか...分かる? 」


「 わ、分かるわけない...です 」


必死に目を逸らしながら答える。
すると無理矢理“こっちを向け”と言うかのように身体を引き寄せた。


「 痛いっ....!やめて.... 」


「 お前が目を逸らすからだろ? 」


責めるかのような言い草。
しっかりと目を合わしながら答えた。


「 ──…目を逸らさないから、離して。 」


「 いや。 」


「 ハッ!? 」


つい声を荒げてしまった。
次こそしっかり離さなきゃフェアじゃないでしょ....。
つかせっかくこっちは合わしたくない目合わしてるのになんで──…


「 キスしてくれたら離してやんよ。 」


突然投げ掛けられた石。
豆鉄砲を食らったハトのような顔になった。


いや、もはや何を言ったか理解できてないんだけど──…


「 黙ってるって事は良いって事なのか? 」


「 え、は?いや駄目です、普通に駄目です。 」


くっつく身体を必死に突き放しながら答える。
だが断る言葉を発すると同時に、私の唇は奪われていた。


「 ──…ンッ 」


抵抗する力さえ失うほどの優しいキス....。
必死に突き放していた手はだらんといつの間にか垂れ下がっていた。
彼の大きくてゴツゴツした手は私の後頭部を優しく包み込む。
そしていつの間にか私の唇も彼を受け入れていた。


頭では「駄目!」って叫んでるのに、身体は動こうとしない。
腰元にある彼の手に身を任せてキスを楽しんでる感じになってしまってる──…。


ダメダメ、やっぱ駄目だ!


「 ....なして! 」


彼も油断してたのか、次は思い切り突き飛ばせた。
教卓に腰をぶつけ、尻餅をつく。


この光景...どこかで....


「 ったくいきなり突き飛ばすなんてあるかよ~.... 」


「 そ、それはこっちの台詞よ!
   いきなりキスなんて....そんな...もう.... 」


思い出しただけで顔から火が吹きそうだ。


「 とか言って一瞬受け入れたくせに.... 」


崩れた体勢でポツリと呟く。
そんな彼を見下ろしながら、溜息を零す。


「 ....受け入れたとかそんなんじゃありません。 
   ほら、とにかくその体勢じゃみっともないですから.... 」


そう言って、手を差し伸べる。
彼の大きな手は私の右手を包み込み、そして....


「 ──…きゃっ! 」


突然自分の体へ引き寄せた。
顔は5cmほどの距離で、後頭部にはまた彼の優しい手が包み込む。
もう染まる顔を隠すことはできないし、抑えることもできない。


「 ....その頬に期待していいの? 」


そう言って私の頬を優しく撫でた。
眉を歪め、困り顔の上目遣いで彼を見上げる。


そして思わず頷いてしまった...。


「 へぇ、そうなんだ 」


すると彼はギュッと私を抱き締めて耳元で囁いた。


「 今、最高の瞬間だわ俺。 」


「 ──…嘘ばっかり。 」


ポツリと呟く。
すると、彼は慌てて引き離して弁解した。


「 嘘じゃねぇって!
  ──…だって俺、あの時お前がずっと好きだから.... 」


「 え? 」


今なんて言おうとしたの...?


そう問うように見つめると、彼は渋々答えた。


「 俺、お前と出会った時から好きだったんだ....。 」


「 嘘でしょ? 」


「 こんなしょーもないところで嘘つかねぇっつの。 」


「 ....もー、馬鹿。 」


ポカッと頭を叩く。そして私も打ち明ける。


「 実は...私も....、あの時から気にはなってたんだけど.... 」


でもチャラ男だから....その....


「  けど? 」


あえてそれは言わないで置こう。


「 ううん、なんでもない。
    ──…あなたの事見直したし。 」


そうポツリと呟くと、小さく彼は首を傾げた。
私はそんな太い首に触れ、微笑む。


「 ありがとう 」


そう囁くと、彼の顔は真っ赤になった。
そして優しい夕日に染められた二人のシルエットは長く延びていった....。


その刹那、二人は確信し合った。
“永遠に続く愛”とそして“繋がれた赤い糸の存在”を──…。


◆END◆

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2014/02/23 20:55
私、明日忘れ物してみよっかなー?爆笑
きっと教室には誰もいないけどー爆笑



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