Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第十七章 】

第十七章 『 あの後の世界 』



ピ、ピ、ピピピピピピッ....!!!


「 んっ.... 」


朝、とてつもなくうるさい目覚まし時計の音に起こされる。
毎朝うるさく起こす母はもういないのがなんだか少し寂しい。
まあ、いないといっても実家にはしっかりいるのだが....。


「 よし、起きなきゃな 」


重い体をゆっくりと起こし、両頬を叩く。
洗面台の鏡に映る私の顔は酷く疲れきっていた。
あの高校時代が懐かしい....って言ってもいい思い出はあまりないけど。


あれから私は坂谷君と話さなくなった。
部活で話しかけられることは多かったけど、必死に避けた。
なぜなら、教室中で噂が広まってこれ以上一緒に居ると坂谷君に迷惑掛けるから。
それが分かったのかクラス替えをすると共に坂谷君は目も合わさなくなった。


....結局礼太君の件も曖昧のまま、坂谷君との件も分からず仕舞い。
それに私が一番気にしていた美由の件も....何も終わってない。
高校時代の青春を逃がすと同時に自分も見失ったような気分だ。


「 はああぁ.... 」


今思えば、坂谷君は転入してきた可愛い女子高生と付き合ったって噂だった。
名前は確か....栗原美和だったかな...。めちゃくちゃ可愛いお人形さんみたいな子。
噂では坂谷君の幼馴染で初恋の子だったとかじゃないとか。


.....まあ、もう私には無関係なんだけどさ。


心でポツリと呟くと、瞬時にスマホが鳴り響いた。


「 ....チッ、また上原さんかよ~ 」


最近頻繁に連絡を取ろうとしてくる上司、上原さん。
とてつもなくウザくて朝っぱらから電話してくるというKY上司。
無視したいんだけど....同僚じゃないし、上司だから断れないし....。


渋々画面をスライドさせ、電話に出た。


「 も、もしも──..... 」

「 おはよう、今野!今日も清清しい朝だな! 」

「 は、はは...、そーですねぇ 」


すぐに洗面台に向かったからカーテン開けてないし、外見てないんですけどー!
つか誰がこんな朝っぱらから暇つぶしで電話するんだよ!


「 声に元気ないみたいだな?大丈夫かい? 」


アンタの電話のせいで疲れてるんですけど。
分からないんですか?ていうか上司のくせに馬鹿?


そんな事をぶつぶつ思いながら、腸が煮えくり返りそうだった。
そして数秒の沈黙を遂げ、上司が口火を切った。


「 その....実は今野に話があるんだ 」

「 何ですか? 」


早めに済ませてよ。


「 実は、だな.... 」

「 .....何ですか 」


じれったい、早く言ってくれないと準備できないじゃん....。
男のくせに!早く!言ってよ!!


イライラしていると、耳元で突然大きな声が響いた。


「 僕と会社行かないか!? 」


右から左へと貫くように響くその声のせいで耳がおかしくなりそうだった。
思わずスマホを離し、洗濯機の上に放置した。ぎゃあぎゃあわめいてる上司をほって....


そして7時30分になると同時に家を出て、鍵を閉める。
番号を母の携帯に合わせて電話を掛ける。すぐに母は出てくれた。


「 夏芽!...アンタ大丈夫なの? 」

「 あれ、今日の第一声は“おはよう”じゃないんだ? 」


そう笑うと、母は声を荒げて言った。


「 冗談じゃないわよ!?アンタ最近ニュース見てないの!? 」

「 ニュ、ニュースって.... 」


こんな声を荒げてる母は久しぶりだ。もしやこの近辺で事件があったのかな。
黙ってドアに挟まった朝刊を手に取り、広げて見てみる。
そこには大きな文字で“強盗”と書かれていた。


「 .....強盗って、私金目のあるモノ持ってないわよ? 」


呆れ返ったように言うと、母はまた声を一段と高くして言った。


「 そーゆー問題じゃないの!アンタは女性だから狙われやすいのよ!? 」


新聞をもっとよく目を通すと、確かにそのような事が書かれていた。
『女性を狙った犯行』や『女性中心の私物を狙う』とかそんな文字ばかりだ。
そう考えたら怖いかもしれないし、注意しなくちゃな。


「 わかった、気をつけるね 」

「 絶対よ? 」

「 うん 」


そう告げ、電話を切る。
そしてヒールの音を鳴らしながら駅に向かった。
なんか上原さんが「一緒に通勤したい」とか言ってた気がするけど....


「 ま、いっかぁ 」


上原さんだしね。


そんな気持ちで再び歩み始める。
空を見上げると確かに青々しい綺麗な空だった。つい写メを撮ってしまうほどの美しさだ。
そして、ふと高校時代を思い出す。....抱き締められたあの時に撮った夕日....。


避けずに打ち明けてれば付き合えてたのかな....
今頃幸せにあの人と笑い合って、喜び合えてたのかなぁ.....。


今でもこんな綺麗な空を見ると、貴方を思い出すの。
何でか分かる?どうしてだけ分かる?


それはね......


「 あなたの横顔がとても美しかったから.... 」


ポツリと呟く。それには寂しさと薄汚れた感情が混じっていた。
もしもあの時....、行動してたらあの子にとられなかったのかなとか....。


「 ...... 」


駄目駄目、忘れるって決めたのに。
もう彼の事は見ない!だって今の私には.....


ピルルル.....



「 あ..... 」


噂をすればってこの事ね。


「 もしもし? 」

「 ああ、夏芽?今日はちゃんと起きれたかー? 」


笑い声を混じらせながら、声を上げるのは私の彼氏、城田拓斗。
同僚であり、大学で出会った私の大事な....人。うん、大事な人だよ。


「 うん、毎朝ありがとっ 」

「 俺の女なんだから当然だろ? 」


そう言い残すと、またハハハッと笑った。
この陽気なところが....あの人にソックリなんだよなぁ。


「 うん...、ありがとっ 」


最近、彼にお礼しか言ってない気がする。


「 どういたしましてっ 」


彼も気づいてるのかな....?


「 じゃ、俺も出勤だから駅で会えたらいいなー 」

「 そうね、じゃ 」


そう言い残し、電話を切った。
その瞬間、ものすごい罪悪感に駆られた。
理由は分かってる。誰に言われなくても分かってるんだ。


───…私がまだ彼に未練があるからだ。


◆続く◆

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~あとがき~

久々のあとがき!忙しくて書けなかった(・ω・;
皆さんお久しぶりです、お元気でしょうか?
とりあえず前期試験が終わったので、一旦は落ち着きました。
でも合否によっては....って感じなのでご了承ください。
でも絶対受かってるので!((てか思いたいだけ。


じゃ、また更新日で~ノノ





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