~争いの無い世界~*里の地上の星の過去Ⅳ*
- カテゴリ:自作小説
- 2014/02/07 02:24:39
――聞いたか?今日転校生が来るらしいぜ
――どんな奴だろうな?
教室で男子達がそう話しているのを見て、
――転校生、今日来るみたいだね
――そうね…どういう人かな
私と塑羅さんは、そう言葉を交わした。
すると教室の扉がガラリ、と開いて大ババ様が来た。
――座れ、皆の者
――はーい
大ババ様の掛け声で皆を座らせると、大ババ様は出席確認を始めた。
それが終わると、一つ間をおいて喋り出した。
――皆の者、新しく里に加わった者を紹介するぞ
「入れ、」と大ババ様は言うと、一人の少女が入ってきた。
金髪で、ショートカット。白い長袖に黒い半そでの上着を着、青のスカートに黒いズボンを履いていた。
見た目は普通の女の子。
此処は普通の学校じゃないから、こういうところでの転校生が凄く珍しい。
皆その子の事を見ていた。
名前は、藤堂玲。
ランクは――…Sランク?
なんて、聞いたことないランクを聞き、大ババ様は自分の席へ座るように促した。
その子の席は窓際の一番後ろ…塑羅さんの後ろの開いている席。
藤堂さんが自分の席を向かうと、皆の目線が辿る。
――さて、授業を始めようか。まずは二人一組を作ってもらうぞ
視線をパっと移して、大ババ様がそう指示をする。
周りはざわざわと騒ぎ、「一緒になろー」などと、そう言う声が聞こえる。
私も塑羅さんに「一緒になろうね」と言うと、塑羅さんは「うん」と頷いてくれた。
そして周りが二人一組になったときだった。
――…ん?玲一人か?
藤堂さんが、ポツリと自分の席に座って静かに周りを見ていた。
大ババ様の問いに、こくりと頷いた。
周りはもう二人一組。残ってる人は、藤堂さんのみ。
――…そうか、一人休みだったな。おい、誰か玲を入れてやれ。こいつは昨日来たばかりで知らない事ばかりでな…
そう大ババ様が言うと、私は真っ先に塑羅さんに言った。
――…ねえ、入れてあげない?
――えー、何か怖いじゃん
塑羅さんからの返事が、意外だった。
どうしてだろう?確かに藤堂さんは不思議な子だけど、決して変な子じゃないと思う。
そう声をかけたのは私だけで、他の人はシーンとしていた。…何故?
すると、藤堂さんは小さな手をぎゅっと握って、俯いた。
一人ぼっちで、可哀想。
そんな風に思えた。私が、入れてあげようと思ったそんな時。
藤堂さんはいきなり立ち上がり、走って教室を抜け出した。
その行動に周りは吃驚し、大ババ様も言葉が出ない、というように無言だった。
暫くして、皆がコソコソと何かを話していた。
皆怖いのかな…変な考えが、脳裏に浮かんだ。
それ以来、藤堂さんは一度も学校に来なかった。
学校はこんなに楽しいものなのに、どうしてだろうと最初は思ったけども。
周りからのあの反応を見れば、行きたくなくなるのも分からなくはなかった。
――あいつ、怖かったな
――でも来ないから一安心じゃん?
なんて、そんな男子の会話が聞こえる。
どうしてそんな事が言えるんだろう。
私は、そんな人達が許せなかった。
私が、迷わず入れてあげたらよかったかもしれない。
塑羅さんも拒絶はしてたけど、きっと話したら分かりあえたはずなのに。
きゅっと、下唇を噛んでそう考えてた。
*
時が過ぎ、十二歳の春。
いつも通り学校に来て、自分の席に座る。
――おはようございます、塑羅さん
――おはよう、星姫
いつからか塑羅さんと若干上下関係が出来てしまったような喋り方になっていた。
でもそれは気にしなかった。私としては、その方が喋りやすいし、そういう関係とか全く気にしていなかったから。
不意に塑羅さんは後ろの席を見て呟いた。
――…ずっと、来てないのね
塑羅さんは誰もいない席に触れ、少し埃がついた指をじっと見つめた。
――…えーっと、誰の席でしたっけ?
塑羅さんは誰か知っていそうだった。
誰の席だったか、時が経つことに私は忘れてしまっていた。
思い出そうにも、思い出せない。
なんでだろう。一時期考えてた時があったような気がする。その程度の記憶だった。
――今日…返しに行かなきゃ
――わ…綺麗ですね。それ、どうしたんですか?
――昨日…変な輩に掴まったところを助けてくれた人がいたの。これは、その人の持ち物よ
その時の事を、塑羅さんは話してくれた。
そして思い出した。
転校してきたその日。周りから拒絶されたことを。
誰も入れてくれなかった、一人ぼっちの女の子。
存在しないSランクというランクに入っていた不思議な子。
――藤堂…さんの、持ち物…?
塑羅さんが言うには、名乗らずに何処かへ去ってしまった、と言っていた。
でも、そのペンダントの写真を見て、塑羅さんは確信したらしい。
私もペンダントの写真を見せてもらうと、確かに藤堂さんの写真だった。
優しそうな両親…もしかしてあの人は…などと、余計な考えに耽りそうになったのを、ぶんぶんと顔を振って考えないようにした。
――星姫
――はい
――私、今日早退するわ。この後のノート、寝ないでちゃんと取りなさいよね
そう言い、塑羅さんは鞄を持って教室を出ていった。
…藤堂さん、か。
一度話してみたいな…などとボーっと考えながら授業を受けていた…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~続く
4つ目更新!
ちょっとこのペースじゃあ全然終わりそうに無いんだけどどうしよ((
ハッ、これはあれですね!
強引に場面切り替えしろというやつですね!((飛蹴