~争いの無い世界~*里の地上の星の過去Ⅰ*
- カテゴリ:自作小説
- 2014/02/06 17:35:50
玲「―――…後は皆が知ってる通り。私の話はこれで終わりだよ」
玲がそう話を区切る。
しばしの沈黙後、一人がその沈黙を破るかのように話しだした。
星姫「では次は私が話しましょう」
いつもと変わらない笑顔で。
しかし言葉は慎重に。
星姫「私の話は少し玲先輩と似ているんですけど――――」
そういって、星姫は表情を崩さないまま話しだした。
*
私の過去は六歳の頃。
両親と、私と、三つ下の弟がいた。
これと言ったことはない普通の家族。
ある日両親が一週間結婚記念日に、と旅行へ出かける日。
――…本当に星姫と月夜は行かないのか?
――うん!パパとママで楽しんできて!
――そうよ、パパは心配しすぎ。星姫だってお姉ちゃんだから…ね?
今でも忘れない母の優しい笑顔。
その笑顔を見て私もにこ、と笑う。
――大丈夫!私、月夜の事見てるから――…いってらっしゃい!
私が笑顔で手を振って送り迎えした。
その出来事から、翌日の話。
家の庭で私と月夜が外で遊んでいた頃。
――月夜ーそろそろおやつにする?
――うんー
――じゃあ手洗って待っててねー私用意してくるから
そう言って、私は先に用意を…と家に入った。
手を洗って、机に母が作り置きをしてあった大好きなおやつを並べて――…
いつも通りの時間を過ごそうと―――していた時だった。
私が家に入った後に、月夜はふわり、と目の前を通った珍しい色をした蝶を見つけ、「あー」と言いながら少しずつ歩きながら追いかけた。
その異変に気付いたのは、全て用意が終わった後だった。
家の中で姿を見かけないから、まだ外で遊んでるのかな?と私が外を覗いた時。
――…月夜?
庭には弟の姿がなかった。
さっきまで、土をいじり、「おねえちゃん、みてみてー」という無邪気な声が――ない。
弟がいたであろう場所には、土で泥団子を作り"おままごと"をした後。
私は、庭の柵を見ると、扉がぎぃ…と開いたままなのを見つけた。
――…月夜!
急いで靴を履き、微かについている弟の足跡を頼りに探しに行った。
両親がいない今、月夜を探しに行けるのは私しかいない。
私は「お姉ちゃん」だからしっかり面倒を見なければいけない。
月夜は最近やっと歩けるようになったばかりだから、そんな遠くには行ってないと思っていた。
見つけたらしっかり注意しなければいけない。
足跡を辿って、十五分後。
足跡が―――途中で途切れている。
嫌な予感がますます大きくなる。
速くなる鼓動を抑え、足跡が途切れた場所まで走る。
そこで見てしまった光景は―――――――
――…月夜…?
湖に浮かぶ、幼き弟の姿。
手には小さな黒い布の一切れを持っていた。
足元を見れば、弟が滑って行ったような跡がある。
恐らく、湖を覗きこんだら地面が崩れ、そのまま湖に落ちてしまったのであろう。
しかし、あの黒い布はなんだろう。
何かに掴まったのか、だが周りに黒い布はない。
…誰かが傍に居たのか?なら何故その人が近くに居ない?
とにかく、早く弟を助けないと!と、私は誰かを呼びにまた走る。
だが。
手遅れだった。何もかも。
近くに住んでいた大人の人を呼び、助けてくれた。
でも、弟は助からなかった。
湖に落ちてから時間が立ち過ぎたのか、小さな命は―――尽きてしまってたのだ。
――あぁ…月夜…御免ね……御免ね…!
布を広げて、そこに弟は運ばれた。
助けてくれた大人の人は、とても辛そうな表情で私と月夜を見ていた。
私は、月夜の近くで泣いていた。
私はお姉ちゃんだから、しっかりしなきゃいけなかった。
お姉ちゃんだから、遠いところに行かないように見ていなきゃいけなかった。
私が――――
…その日の夜。
弟は、私が住んでいた村の教会へ、運ばれた。
後五日後に帰ってくる両親に、なんて言えばいいのだろう。
電話なんて出来ない。そもそも、電話番号を聞かされていない。
まだ六歳児であった私は、小さな頭を必死に動かしたが、どうにもならなかった。
大事な弟を失ったショックで、食事はままならず。
一人で用意して、一人で食卓に並べ、一人で食べていた。
どんなに食べても、戻してしまう。
後片付けもせず、私はベッドにもぐり、眠りについた。
*
翌朝。
小鳥が鳴く朝。
重い瞼を開けて私は一階へ降りた。
今日は早起きだったのだろうか?まだ月夜がいない。
ふと私は、食卓を見た。
食べきれていない冷めてしまったご飯。食べてすぐ戻してしまい、食卓はぐちゃぐちゃしていて凄く汚い。
その光景を見て、私は昨日の出来事を思い出してしまった。
―――――あぁ、私は取り返しのつかない事をしてしまったのだと。
此処までの話をしている私は、笑えているのだろうか。
母が、どんなに辛くても笑っていたらいい。そんな教えを守れているのだろうか。
再び重い沈黙。
私はその続きの話をし始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~続く
はい、お久しぶりの小説更新です。
凄く重い話になりました。
ぶっちゃけ5人の過去の最初は重いものばかりです。
此処まで書きあげて改めて言うのも変な話ですが、
まだまだこういう内容が後3人も続きます。
それでも大丈夫な方はどうぞ続きを。
無理な方は、過去編終了後の「地上の星の長年の悩み」までお待ちくださいませ。
と言うツッコミは無しでおなしゃーす_(:3」∠)_