補習の秘密 【 前編/短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/01/25 17:10:45
補習の秘密 【 前編/短編小説 】
私には大きな秘密がある。
誰にも言えないような...そんな秘密。
決して可愛らしいモノなどではなく、甘ったるい....秘密。
「 宮本先生ぇ~っ、勉強教えてぇっ 」
甘ったるい女子の軍団の声が一気に男性教師に集る。
それを必死に抑えながら、困り果てる教師、宮本和也先生。
彼が就任してきたのは、ほんの数ヶ月前の事。受け持ってるのは3年生。
なのにも関わらず、2年、1年と違う学年からも「教えて」と縋る女子が沢山来る。
....女子の怖さが計り知れない。あまり関わらないでいたいグループだ。
勿論、その中にも先生は入ってる。
この頃はまったく彼に関心がなく、興味だってない。
ただチヤホヤされてるイケメン教師っていう印象しかなかった。
....でも、そんな冷たい私の心はある日溶けた。
それはあるテストの翌日の事....。
「 あ、オイッ! 村山! 」
突然呼び止められた。振り返るとあの教師が...。
私はまるでメンチを切るように睨み付け、用件を尋ねる。
すると彼はそんな私の顔にペンッ!と何かを置き、こう一言呟いた。
「 今日補習なっ 」
まるで置き土産のように言う。そしてそそくさと去っていってしまうのだ。
戸惑う私。慌てて事情を聞こうと追いかけるともう遅かった。
あの人の周りには女子が集り始める──.....。
一気に絶望へと落とされた気分だった。
ただ補習の紙を持たされ、呆然と立ち竦む...。
そんな彼の後ろ姿は、ただの敵にしか見えなくて仕方なかった。
そして放課後...予定通り教室に呼び出される。
もう既に先生は待っており、資料もどっさり用意されていた。
「 はあああ.... 」
思わず深いため息が出る。
渋々進める重い足からはきっと先生にも伝わってるだろう。
私がどれだけ先生の事を嫌いで、関わりたくないのかということを──....。
それに私は補習を受けなきゃいけないような点数は取ってない。
おまけに彼の担当の英語は私の得意中の得意だ。
なのにどうして呼び出しを食らわなくてはならないのかまったく分からない...。
両腕を組み、また溜息を零す。
そんな態度を見て彼はとうとう口を開いた。
「 そんなに俺が嫌い? 」
突然投げ掛けられた質問。
心のなかで補習はどうしたと突っ込みながらも質問に答える。
「 別に.... 」
曖昧な返事。いくら嫌いでも率直には言えないモノだ。
すると彼は溜息を零し、資料をまとめ始める。
「 えっ...、あの 」
「 何? 」
「 ....補習するんじゃないんですか? 」
資料をまとめ、そして片付けに入る彼を見て驚きを隠せない。
一体どうなってるんだと戸惑いさえ感じる。
すると彼はこの質問にこう答えた。
「 しないよ?だって君...しなくてもいい点数じゃん 」
微笑みながら、まるで当たり前でしょ?というかのような顔つき。
これにはさすがに苛立ちさえ覚える。私は机をたたきつけ、声を荒げる。
「 じゃあなんで呼び出したんですか!? 」
静かな教室に響き渡る声。
その声に動じず、彼はアッサリ答えた。
「 君が気になってね.... 」
「 ハァ....? 」
パンパンに資料が入った鞄のチャックを仕舞い、頬杖を付き始める。
そして、まるで誘うような甘ったるい目で私を見て言った。
「 生徒とは親睦を深めろって言うでしょ? 」
そう言うと、またニコッと微笑む。
私は背筋がゾクッとして、恐怖さえ覚えた。
──この男...一体何が目的なのだろうか....?
「 ....ま、手始めに握手でもするっ? 」
スッと手を差し伸べだす。
そんな手を思い切り振り落とし、身を引く。
「 何が目的なの...? 」
そんな彼のニヤリと浮かべた笑みを見ながら、体を震わす。
まさかこんな恐怖があんな芽生えに変わるとは思いもしなかった...。
後編へ続く....。
広場からです*
すごくおもしろいです!
続きが気になってしまいます…
お気に入り、入れさせてもらいます^ ^
あとすてぷどぞ