恋の芽が出る頃に 【 十五章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/01/25 13:41:25
第十五章 『 夕焼けの感触 』
「 ....んっ 」
薄っすらと開いた視界に入ったのは真っ白な天井。
そして微かに香るシャンプーの匂い....。どっからだろう...、隣...のほうからかな。
ゆっくりと寝返り、香りのする方へと向く。
するとそこには声が出ないほどの代物があった....。
「 ....嘘でしょ....? 」
口に手を当て、顔を真っ赤に染めて息を殺す。
なぜなら、そこには眠った坂谷君の姿があったから──.....。
小さな棚には、薬が置かれている。きっと看病してくれてたんだろう....。
そっか、疲れてお風呂に入って...寝ちゃったのか。また私坂谷君に迷惑掛けて....
って...ん?薬少し減ってる...?
違和感を感じ、薬に手を伸ばす───......
───すると....
「 うわぁっ...! 」
片腕に掛けてたバランスが崩れ、思い切り体が崩れ落ちた。
そして真近に感じたシャンプーの香りと体温...。
少し顔を上げると、そこには坂谷君の顔...
「 ひゃ.... 」
少し下がったものの、顔と顔の距離はおよそ5cmほど──...。
本当にちょっとだけ手を伸ばせば、唇に触れれる...。
って、ヤダ。
私何考えてるんだろう....
「 よっと.... 」
体を起こし、大きく伸びをする。
そして軽く肩を鳴らし、立ち上がろうとしたその瞬間...
手に熱い何かを感じた。
何かに捕まれたような....そんな違和感。
まさか、と思いながら視線を下に向けるとそこには私の腕を掴む彼の手があった。
全身に流れる体温と共に速くなる鼓動......。
声も出せられないし、顔が赤くなるだけ...息を殺すことしかできない。
「 っ..... 」
そして私の腕を掴みながら、顔をゆっくりとあげる。
その瞬間──、目と目が合った。
なんていえばいいのか分からない。ただ沈黙の時間が流れるだけ....。
仕舞いには体をガタガタと震わせ、目を泳がせる。私の体温は急上昇していくばかりだ。
そして数分後、何故か私の体は彼の腕の中にあった──.....。
「 ....えっ 」
熱い体温は止まることをしらない。
そして彼の口から吐き出される吐息耳に入る...。
その度ゾクッと体に電流が走る。どうすればいいかわからない。
そして、耳元で囁く彼の声....
そっと耳を澄ましてみる。
「 行く....な.... 」
「 えぇっ....!? 」
その言葉と共に、彼は床に崩れ落ちる。
そして私は硬直して、その場から動けなくなってしまう──....。
再起するのに数秒は掛かっただろう。
そして慌てて床に崩れ落ちた坂谷君を看病し、家に帰る。
一人歩く道...、彼の囁く声がまだ耳に付いて離れない。
そっと耳に触れながら、あの言葉をリピートする...。
「 行くな... 」
その言葉を思い出すたびに顔が真っ赤になって収まらない...。
慌ててかき消そうとするが、かき消せない。
でも...彼すぐ倒れちゃったし...。
きっと寝ぼけてたんだろうし........。
夕焼けに染まる帰り道で一人私は夕日を見上げる。
そしてスマホを取り出し、そっと写真に残す。
かき消そうとしてた自分の気持ちとは裏腹に写メを撮りながら唱えた。
「 この記憶が一生消えませんように... 」と。
続く