Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


絡む糸 【 後編/短編小説 】

絡む糸 【 後編/短編小説 】


あれから私達の関係は数年続いた....。
勿論、会社員には隠し通すつもりでね。...でも、そうはいかない。
秘密っていつかバレるモノ。....それって本当なのね。


いつも通り、出勤すると社内がざわめいている。
何事かと人だかりに入っていくと、目の前に掲示板が突きつけられる。
そしてそこに飾られた数々の写真を目にして驚いた──.....。


「 ....何よ....これ.... 」

硬直して、体が動かない。
この場から今すぐにでも逃げたいのにできない。
皆の視線が一斉にこちらに向く。....私はただ皆に目を向けるしかできなかった。


「 先輩、羨ましいですねぇ... 」

後輩の女性社員がポツリと呟く。
その言葉に眉を歪めながら、首を傾げる。


「 社長と恋愛って、ただのビジネスじゃなかったの? 」

同僚の社員がまた呟く。そしてまた一人と次々に矢が放たれる。
だが私の体は動かない。心の迷いか、突きつけられた動揺かは分からない。
私はただ嘲笑う同僚たちを見て涙腺を緩ませる事しかできない....。


すると背後に気配を感じた。
あの優しく包み込んでくれる...そんな気配。


「 何してるんだ? 」

「 ....本部長 」

この温もり...てっきりウィリアムが来てくれたのかと思ったのに。
後ろに立っていたのは、真面目な本部長だった。
この写真を見たら激怒する...絶対に...。


「 本部長ぉ、これ見たら分かりますよっ 」

本部長の気を引こうとしてる同僚が写真に指を差す。
共に本部長は掲示板に近づき、細めで写真を見つめた。
本部長は写真に写ってる男女が誰かすぐ把握したらしく、数秒でこちらを見た。


「 京野...お前... 」

「 ..... 」

何も言い返せない。事実だから。
私はただ目を泳がせ、眉を歪めて俯く。
そんな姿を鼻で笑う同僚の篠崎真理奈。前々から恨まれてる事は知ってた。
いや....正しく言うと妬まれてる、かしらね。


そして、本部長の口がゆっくり開きこう言った。


「 あとで来いよ 」

「 ....はい 」

こうして、私は呼び出しをくらい、いく羽目になった。



──コンコン。

本部長室は綺麗に整頓されている。
ガチャリと扉を開けば、その風景が広がる。
その風景がよりいっそう緊張感を増やし、足を震わせるのだ。


「 ああ、来たか 」

待ってたぞ、とでも言うかのようにコーヒーカップを置き、資料を整える。
そしてスッと手を差し出してイスに座れを合図を送った。
私は従う犬のように黙ってイスに座った。


「 えぇと、じゃあ本題に入るか.... 」

眼鏡をスッと掛け、資料に目を通す。
そこには数々の私とウィリアムの写真があった。


「 ったく、ここまで派手に撮られるとはなぁ.... 」

「 本部長っ、全て私の責任です... ウィリアムは関係ないです 」

「 悲劇のヒロインになろうとしても無駄だぞ 」

「 え? 」

一瞬どういう意味かわからず、思わずタメ語で返す。
すると本部長は溜息混じりにこう言った。


「 あのパーティーの日....俺は見た 」

「 .......! 」

驚いて声も出なかった。否定だって出来ないくらいだ。
口を手で押さえ、また硬直する。そして、本部長の話は続く。


「 今なら笑って許せる、別れろ 」

「 本部長っ....! 」

眉を歪め、縋るように見つめる。
すると本部長は腕を組みながら私を見下ろすように見た。


「 もっといい男は居る ほら....もっと考えろ 」

そして、何故か私の隣に席を移動した。


「 ほ、本部長....? 」

すると突然肩に手を回し、引き寄せる。
彼のスーツの柔軟剤の匂いがする距離くらいまで近づく。


「 ちょ、やめてくださ....「 あのパーティの日... 」

まるで私の言葉を被せるように言葉を発す。


「 あのパーティの日、俺はショックだった....
  俺はずっとお前が好きだったんだぞ?知らなかったのか? 」

「 嘘....! 」

若くてイケメンで爽やかって有名な本部長が私を好きだったなんて...。
いや、あり得ない。私を試してるだけ。


「 やめてください!信じません... 」

顔を逸らし、体を押す。
しかし男の力には負けるもの。あっという間に引き寄せられた。


「 ビジネスパートナーとしていたら
 いつの間にか好きになってたウィリアムの気持ちが今なら良く分かる.... 」

「 ちょっ、待っ.... 」

───ガチャッ...!!!!!!

「 何してるんですか!?本部長 」

ペラペラの日本語で入って来たのはあのウィリアム。
まさかあの数年で日本語を習得したの...?

って今はそれどころじゃなかった。


「 助けて....! 」

ウィリアムは本部長を殴り、気絶させた。
そして私の腕を引っ張って連れ出した。
連れ出した先は出会ったあのパーティー会場の庭だった。



「 ここまでくれば大丈夫っ.... 」

「 ウィリアム、あれはまずいでしょ...気絶 」

「 いいんだよ 」

ウィリアムは微笑んで私の頭を撫でる。


「 もしこれで契約破棄になってもいいじゃん
.         ....むしろそれのほうがいいだろ? 」

「 なんで....? 」

すると私の目を見つめながら言った。
あの頃と変わらない微笑で....


「 君と永遠に居られる... 干渉されずに 」

「 ....! 」

まるで私の心を表すかのように風が吹く。
共にウィリアムの金色の髪が靡く。


そして今まで以上に愛おしく感じる───.....。


「 もぅ...バカッ... 」

「 アハハッ 」

冗談交じりに笑うウィリアムの声。
でも、彼の目には嘘という文字は書いていなかった....。


END

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2014/01/25 11:10
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