Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


絡む糸 【 前編/短編小説 】

絡む糸 【 前編/短編小説 】


私の名前京野美麗。性別はまあ名前から分かる通り女。
そして同僚からは“仕事人間”と呼ばれるほど仕事大好き人間。
大好きっていうか....、まあやりがいを感じてるだけなんだけどね...。

でもいつも社長に言われる。「 お前が大きくした会社だ 」ってね。
まあ、確かにそれは私も思うわ。あ、自意識過剰とかそんなんじゃないわよ?
でも....それは長い長いストーリーがあるのよ。



───5年前

これは私が入社して2年目くらいの時期。
仕事にも大体慣れてきて、英会話も出来たからビッグビジネスも結構任されてた。
まあまだこの頃は小さな化粧品会社で、目立ってもなかったんだけど....。
実はこの秋にビッグチャンスが舞い降りてきたの。


それはある、快晴の日の事。
紅葉を見渡しながら歩く通勤の道で私は突然ある外国人の方に声を掛けられた。

「 すみません、ウィーズ社ってどこですか? 」

「 ああ、私も今から向かうので案内します 」

「 おぉ、ありがとうございますっ....! 」


もちろん、全て英語で返したわ。こういう時に英会話って役に立つの。
そして高身長の白人の方を会社までお連れし、そのままオフィスへと向かった。
オフィスには先輩、後輩がいつも通り仕事をしている。何も変わらない風景。


でも...何故か何かが違う気がした。
今思えば何かこの時から予感できてたのかもしれない。


あの瞬間を......



お昼休み中にお弁当を頬張っていると、後ろから突然声を掛けられた。
振り向けばそこには今朝案内したあの白人の方が。
私は慌ててお弁当を仕舞い、立ち上がってお辞儀をする。
そんな姿に彼は驚きを隠せないようだ。


「 そんな慌てなくていいんだよ 」

優しい温もり溢れる笑顔。
なんだか久しぶりに心のどこかに温もりを感じた...。
だがしかし、きっと彼はビジネス面で関わってる人だろう、そう思って丁寧に対応した。


そして淡々と話を進めて、彼は突然質問を投げ掛けた。


「 そういえば、君...名前は? 」

「 京野美麗です 」

「 京野...さん... 」

彼は独り言のようにそう呟き、その場から去っていった。
首を傾げ、シコリが取れないまま私もお弁当と共にその場を去る。


そして勤務終了時、満月の下でトボトボと歩く...。
すると突然着信音が鳴り響いた───。
慌ててスマホを取り、画面を覗く。するとそこには会社の名があった。


「 は、はい...京野です 」

突然の会社からの電話...。私は驚きを隠せない。
だが、決して私の思ってるような報告ではなかった。


『 京野君!やってくれたねぇ! 』

「 .....は? 」

目を泳がせ、戸惑いを隠せない。
頭が混乱して今までの自分の行動を振り返る。
しかし、私がいつミスをしたのかまったく思い出せないし、思い当たらない。


そして社長の甲高い声が私の耳を一気に突き刺した。


『 君は最高のビジネスウーマンだぁ! 』

右から左へと貫く甲高い声。思わずキーンッという効果音を思い出す。
そして、事情を尋ねるとそれはこうだった。


あの外国人はアメリカの若手社長でビッグビジネスマンであり、そしてこの会社を
見物に来ただけのつもりが私が気に入られてタッグを組みたいと言ってきたらしい。
貫禄は出てるなと思ってたけど....、まさか若手社長とはね....。


まっ、とにかく


「 よっしゃああぁっ! 」

満月の夜、空に手を伸ばしながら喜んだ。
人の目はまったく気にせずに──。



あれから沢山の仕事をこなした。ビッグビジネスも無事終了。
晴れて私は昇進して、何もかもが上手く行った。そして、
ビッグビジネス終了のお祝いパーティーで私はアメリカ社長のウィリアムに呼び出された


社長には見えないような遊ばせた金髪の髪が靡く。
外で二人、柔らかい風に包まれながら俯く。
突然若手社長に呼び出され、目を泳がす私。


すると彼は私の両肩を突然掴み、目を見て言った。


「 君のおかげでビジネスが成功したんだよ 」

ペラペラの英語とブルーの瞳を突きつけられ、戸惑いを隠せない。
しかも美しい海のような瞳にはさすがに揺らいでしまう。
必死に気持ちを抑え、目を逸らしながら応える。


すると彼は無理矢理こちらに向かすように掴んでいた腕を放し、顎に触れた。
もう顔を上げざる終えない状況。必死に目を逸らしながら話も逸らす。


「 えぇと、そうだ!皆待って.... る.... 」

皆のほうへ戻ろうとすると突然後ろから抱きしめられた。
これはさすがに駄目だと思い、抵抗する。
しかし、所詮男と女.....。力の差は目に見えている。


そして私は否定をやめ、無抵抗の状態で彼に言った。


「 社長.... 私そんなつもりでビジネス組んだわけじゃないです.... 」

そんな言葉に彼はとても切なそうにして応えた。


「 知ってる...、でも許して欲しい....こんな気持ちは初めてだから....
 社長になってから恋できないって思ってたけどでも
 君が現われたあの日から僕の考えは変わったんだ...  」

淡々と並べられる言葉。慌てて状況を理解しようとするが、中々出来ない。
でも....、正直言えば彼への気持ちが一ミリもないといえば嘘になる。
いや、一ミリどころの騒ぎじゃない....。もっともっと.....もっとなの....


ビジネスを組んでる時から実は私も───........


「 ....... 」

でもやっぱりこんなのいけないと思うな。
今後もビジネスパートナーとしてやってくんだしっ....。


「 放して下さい..... 」

「 放せない....いや、放したくない、か 」

語尾と共に抱きしめる腕が強くなっていく....。
体が彼の体温のせいで溶けてしまいそうだ。


「 僕の人生のパートナーになってほしいな...、駄目? 」

まるで甘えた子犬のような声...。もう私も限界だった。
決して駄目な境界線ではない。これを超えても....何もないんだから....


.....愛してもいいよね.....?


「 ウィリアム.... 」

言葉ではいえない。
だから私は無言で彼の胸に飛び込む。
その行為を彼は察し、その後は何の確認もしなかった....。
ただただ私の震える肩を抱きしめ、強く強く....そして優しく包み込んでくれた。


彼の真っ白な純白のシャツを握り締め、涙を流す。
別に罪を犯したわけではないし、今とても幸せだ。
....でも、なんだか社長との恋はどうなのかと自分の中でレッテルがあった。


でも.....


「 美麗....、幸せにする 」

「 .....うん 」

人生の中で一番幸せな瞬間だ。
絶対に崩れないでと願ったのも今日が初めてだ。


後編へ続く....。

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