Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 十四章 】

第十四章 『 恋の芽 』


試合も終了し、部室内で先輩に囲まれながら着替える。
汗だくになった瑠衣の隣で私は一人、暗い表情を浮かべている。
そんな私に気づいた瑠衣は溜息を零し、呆れた顔で私を見つめて言った。


「 まだ美由と喧嘩中? 」

そんな瑠衣の顔を見て情けなくなった私は、
体を少し竦めながら頷く。それを見て瑠衣はまた溜息を零す。


「 たまには忘れたらっ?試合だって真面目にしてなかったでしょっ? 」

バスケ一本で生きてきた瑠衣にとっては許せぬ行為....。
怒るのも無理はないし、怒らしてる自分が情けなくて仕方がない。
すると、部室内に着信音が突然鳴り響いた。


スマホを覗くと、そこには彼の名前が載せられていた。
少しオドオドしながら電話に出る。


「 ....も、もしもし 」

私の震えた声は彼にも届いたらしく、彼の声のトーンが変わる。


『 大丈夫? 震えてるけど... 』

まるで小さな子猫に語りかけるかのような言い方だ。
そんな声にまた恥かしくなり、赤面させながら部室から出る。


「 ど、どうしたの? 」

彼の置き去りにされたタオルを握り締めながら、声を出す。
そして彼は少し困ったような篭った声で言った。


『 実は今日礼太用事があるって.... 』

「 えっ.... 」

スマホ越しに聞える彼の気まずそうな声。
私はそれに必死に動揺を隠す。


そして篭った声で彼は続ける。


『 急用らしい... ごめんな、今野 』

「 うっ、ううん!大丈夫! 」

必死に彼の心配を抑え、電話を切る。
でも実は...、実は凄くショックだったりしてる。
坂谷君のあの言葉とそして説得が唯一の鍵だったから───....。


「 夏芽~?大丈夫? 」

ドアの開く音と共に飛び出す瑠衣の顔。
振り返り、私は笑顔で大丈夫と返す。
本当の事はまだ....きっと誰にもいえない。.....きっと。


一人歩く帰り道。瑠衣の彼氏と帰る満面な笑みが思い浮かぶ。
それと同時に浮かぶのは何故か坂谷君の笑顔。そしてバックに仕舞い込んだタオル。
あの時電話で言えばよかったものの、なぜか言い出せずに居た。


ただただ言えなかっただけなのか、自分にやらしい心があるのか.....
考えるだけで疲れる。結論はでないだろう。


美由の件も....結論は出ないのかもなぁ....。


「 はあああ.... 」

薄暗い部活帰りの道で一人、長い溜息を零す。
そんな暗い心は誰にも気づかれる事はなかった───。



───翌日。

いつも通り目覚め、着替えて支度。
何も変わらない朝だと言うのに、自分の心は曇ってる。
あの頃とはまったく違う....、心が晴れてた自分はどこへ行ったんだろう。


しっかりしなくてはならないのに、しっかりできない。
わかってるのに、心の雲を晴らすことはできない。
そんな自分が情けなくて、惨めで辛くなってしまう......。


「 夏芽~、お客様よ 」

「 あ、はーい 」

こんな朝っぱらからお客さん....?誰だろう。
そんな疑問を抱えながら玄関に向かう。するとそこには信じられない人が立っていた。


「 さ、坂谷く.....! 」

声も出ない。最後まで名前を呼ぶことさえできない。
何故か知らないが笑顔で坂谷君が立ってるのだから、当たり前だ。


だが坂谷君は構わず、片手を挙げて「ヤッ」と挨拶してる。
まだ寝ぼけてるのかと思って何度も目を擦るが、やはり彼の姿は消えない。


「 本物...だぁ.... 」

「 そりゃそーでしょっ 」

ハハッとまたからかうかのように笑う。
そんな彼にドキドキが止まらないまま、彼と家を出る。


そして気がかりだったタオルを渡した。


「 あの.... 」

「 ああ、サンキュー 」

受け取った彼はタオルの匂いを嗅いで目を丸くした。


「 洗剤何使ってんの....? 」

「 えぇと... あのCMでよくやってるやつ.... 」

「 え!あれ!?あれいいんだー.... 俺も使おっかなぁ~ 」

「 え! 」

また赤面してしまう。自分と同じ洗剤を使う....つまり、同じ匂いに....
って私何考えてるんだろう。考えを改めなくちゃ....。


一人で考え、一人で落ち込む。
すると彼が不思議そうに私の顔を覗き込む。


「 どした? 」

「 ひゃっ... 」

その時の顔がとてつもなく近くてドキドキが止まらない。
もう少しで手と手が触れあいそうだったし....。


「 大丈夫?顔色悪いよ... 」

彼の言葉が終わると共に私の視界は闇へと化した。
その後、私はどうなったのか分からない....。


「 こ、今野....?大丈夫か? オイ ....ったく 」



少しだけ意識が戻った...。でもまだ目を開くことができない...。
頭が痛くて、体もだるいし....。なんだか寒気もするし.....


──ガチャッ


ドアの開く音...、誰か入って来たって事は部屋かどこかか。
え、待って、記憶がハッキリしない....。あの時私は確か....えぇとえぇと.... 
駄目だ、またしんどくなってきた....また意識失いそう。


「 今野、薬飲め 」

坂谷君の声...聞えたような...。
駄目だ、今は意識がハッキリしなくて───......


「 .......世話が掛かるな 」

迷惑掛けてる...早くおきあがなきゃいけないのに...体が言う事利かない。
ごめんなさい....えぇと、たぶん、坂谷君だよね....。一番迷惑掛けたくない人...なのに...
ごめん、なさい.....ごめんなさ....


「「 ゴクッ.... 」」


───えっ?
なんか今口に温かい感触が....あったような。
ていうかなんだか段々体が楽になってく....薬...飲んだ感じ。


駄目だ、これ以上頭回せない..... 


「 ウッ..... 」

私は再び意識を失った。


「 ....よかった、意識戻ってたらバレるとこだった 」

私は夢の中で坂谷君が出てきた。
笑顔で私を看病してくれている.....坂谷君が。


続く


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アバター
2014/01/23 00:25
お口に温かい感触ーーー!!!

最高じゃないですか、坂谷君。

続き気になります!
アバター
2014/01/22 21:28
きゃきゃー!!!
キスキス???
口移しーーーー笑



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