振り向けば 【 後編/短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2014/01/13 04:42:33
振り向けば 【 後編/短編小説 】
あれから彼女との再会を果たす。
彼女の名は、“宮山愛莉”というらしい。
他にも沢山の彼女から情報を得ることが出来た。
自分は父親が居なくて、孤独を味わっていたこと。
母からの愛があまり感じれないこと、愛せないこと。
そしてあの時唯一信頼していた彼氏に裏切られて泣いていたこと。
全てさらけ出す様に俺に話してくれた。受け止めるつもりで俺は黙っている。
しかし、話し終わった後の彼女の姿は見ていられなくなった。
思い切り両手で力強く抱き締めて、目を瞑る。その瞬間感じ取った温もりは今でも覚えてる。
こうして付き合う事となった俺達はお互いを大事にし合った。
気も遣わずに気楽に過ごす。お互いがさらけ出すため、そりゃ気に入らない部分も出てくる。
そうすると喧嘩だって起こってしまう。でも、まるで昔から居たかのように謝らなくっても、
和解の場をいちいち作らなくても、彼女とは和解し、分かり合う事ができた。
──のはずだったのに....
「 …涼太、本気なの? 」
「 ああ、別れよう
最近こういう喧嘩多いし、もう無理だろ 」
つい思っても無い言葉が口から出てくる。
彼女の潤んだ目は次第に増し、ついに頬を濡らした。
「 やっぱ不協和音までは愛せないんだよ、愛莉 」
そう言って彼女に背を向けた。その後の彼女は俺は知らない。
最後に見た彼女の姿は、泣きじゃくりながら帰る小さく震えた背中だけ。
孤独を存分に味わった彼女…あの日あの時守ると決めたあの心は消えたのか。
あの日孤独で泣きじゃくった彼女にもうこんな思いはさせないと誓ったのに………
あの日最低と思った男の行動と今の俺の行動…何が違うんだろうか。
愛莉は俺なんかよりきっといい男が見つかるだろう。
そう思い、彼女の背中を見送ってカーテンを閉めた。
そこからまた月日は流れる。
まるで俺を置いてけぼりにするかのように───。
彼女が居なくなって広くなった家は、より孤独感を増していた。
梨乃と居た時は一人でもどうってことなかったこの部屋が今では寂しい。
彼女の笑顔が今でも時々蘇る。玄関に並べた彼女との写真は今だ捨て切れてない。
彼女の手を離したのは俺だったのに、彼女を消しきれてないのは俺だった…。
テレビを見て気分を紛らわそうとする。でも無理。
読書をして気分を紛らわそうとする。でも無理。
やっぱりどこに居ても彼女と居た時の記憶が蘇ってしまうんだ。
「人魚姫」という彼女のお気に入りの本と手にする。
その一冊だけで様々な記憶が蘇る。
「 人魚姫って…何度読んでも泣ける 」
そう言って本気で号泣した彼女の頬を撫で、額にキスを落とした事。
そして、この本を何度も俺の所に持ってきて読んでくれたこと。
俺が泣くまで読むと言い張って威張っていたこと。
すべてが今、愛おしく思えてしまう。
気持ちが出会ったばかりの時より強くなっている。
もうどうしようもないと言うのに───。
もう俺達は終わった。いや、終わらせてしまったんだ、俺が。
あの日バス亭で掴んだ時のように、どうしてあの時掴んでやれなかったんだろう。
…振り返って後悔してしまう。
これがなんとなく生きてきた俺の天罰なのだろうか。
出会った頃と同じ季節になった今日。
俺は真っ暗で静かな海で一人、黄昏る。
海には誰も居なくて、凄く涼しい風が吹いている──。
ここで出会ったんだよな、と改めて風に感じさせられる…。
そして出会った自販機へと歩む。そこで五十円を差し出した事を思い出す。
あの時の焦り顔は今でも忘れられないな、と笑みまで零れてる。
そしてついにあのバス亭へと向かう。
あの日振り返った瞬間靡いた愛莉の茶髪が今でも鮮明に覚えている。
腕を掴んで戸惑って……、でも俺は気づいてた。微かに喜んでる彼女の心を。
だからこそ電話番号を渡せたっていうのもあるんだ。
「 …ヘタレだな、俺 」
ついポツリと呟く。
彼女を手放した理由も彼女を支えきれないから。
彼女の不協和音まで愛せないと思ったからだ───。
…でもそんなんじゃない。
俺は、彼女にただ傍に居てほしい。
あの頃想った気持ちより今、強く強く想ってる。
「 ごめん愛莉…愛してる 」
「 もう一度言って? 」
背後から突然投げ掛けられた言葉。
慌てて振り返る。するとそこにはあの頃と変わらない笑顔で立ってる彼女が。
「 …愛莉 」
彼女はニカッと笑い、人差し指を立てて言う。
「 もう一度 」
俺は赤面しつつも、彼女の要望に答える。
すると彼女は背後からギュッと抱きついてきた。
そして、お互い再会を味わった後…実感してきたのか、涙を流す。
号泣、ってほどでもない。…ただ、一粒の涙をお互い握る手に落としあう。
それは自分達の愛の印であり、そして永遠の誓いの約束でもあったのだ──。
俺は彼女の手を握ったまま、微笑んで呟く。
「 あの時はごめん…、本当 」
「 もういいの…、涼太が居てくれたらそれでいいの 」
そう言って微笑み返してくれる。
その笑みはあのバス停で会った時と何も変わってない。
俺が初めて愛した女の笑顔だった。
──3年後
「 いよいよ今日ね 」
微笑みを浮かべながら彼女が囁く。
月日はあれから三年流れ、俺達の関係は強くなった。
そしていよいよ…その日が来た。
「 では、新郎新婦の入場です! 」
結婚のテーマソングと共に彼女と歩む道。
それは人生を共に歩む、という意味も含まれてるような気がした。
彼女と顔を見合わせてまた笑みを零す。
そして、着々と進んでいき……
「 では、誓いのキスを 」
愛莉と向き合う。愛莉の笑顔からは嬉しさが溢れていた。
そして唇が重ね合う瞬間、再会の日の涙と似た美しい誓いを通す。
お互いの名前が刻まれた愛のリングを指にはめ、そして末永く共に暮らす。
未来なんて人間には分からない。
でも、俺には見えた気がしたんだ。
愛莉との永遠の未来が。
END
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~あとがき~
いやぁ、初めて前編/後編分けました!
分かりにくくなってたら申し訳ない……><lll
ま、とにかくこの小説楽しんで頂けたら嬉しいです♪
いつか皆さんに尊敬されるような作者になれるよう頑張ります!
コメントはできるだけお返しします。
では、『恋の芽が出る頃に』も宜しくお願い致します!
自分を大事に思ってくれてる人で、素敵ですよね^^
短編小説、また待ってます❣
これからも、楽しみにしてます^^
早速続きを読みに来ましたよヽ(´▽`)/
「恋」って本当に難しいですね
彼女との習慣がずっと残ってたり、伝えることに臆病になって内をさらけ出せなかったり
女の子と男の子同士だから言いにくいこともあるだろうし…
でもそれに関する寂しさとか悲しさって、全て゛愛゛なんですよね
そう思ったら私もこれからする恋は大事にしないといけないなぁ、って思いました(笑)
それからこの小説に何度も出てきた、
゛不協和音゛っていう語句、aichaさんの個性が輝いていましたよ
ナイスです('∇^d)
とても良い話でしたよ!*
感動をありがとうございました
それから、
こちらこそよろしくお願いしますm(_ _)m
私もaichaさんの影響でもう一度小説が描きたくなりました
新しく私が描くものは、
私のお気に入りの曲(歌詞)をもとにしたものです
宜しければ読みに来てくださいねヽ(´▽`)/
では、またaichaさんの小説読みに来ますね~
元彼が「 ごめん愛莉…愛してる 」って言ったとき、元カノが後ろにいたっていうのは・・・。
てか、↑のシーン大好き!!!
これからもいっぱい小説書いてね♡