Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


I am 【 短編小説 】

I am  【 短編小説 】


……私は、誰だろう?
一体何のために生きているのだろう?
どうして生まれたのだろう?この世に存在する意味が見当たらない。
毎日繰り返して考えるが、答えは見つからない。


また人生を投げ出したくなる。
そして、いつも手にする鋭いカッター…。
私は慣れた手つきで脈の辺りを軽く切った──


───つもりだった。


「 ウッ…! 」

突然の激しい痛みについ体がくの字に曲がる。
耐え切れなくなり、とうとう横に倒れこんだ。
真っ白なカーペットには、私の真っ赤な血が見る見るうちに広がっていく。


染まる血を見つめ、ようやく自分の愚かさを自覚する。
そしてどんだけ自分を愛しているのかを気づく。
…まだ死にたくないという願望を抱いていた事に気づく。


「 たす…けてぇ… 」

私は小さなアパートに一人暮らししている大学生。
友達は居るけどきっと皆上辺だけの付き合いなんだろう。
今、「脈を切ったから助けて」と言ってもすぐに関係を断ち切られるだけ。


でもこのままだと死んでしまう。
誰かに連絡しなきゃ、私の人生は本当に終わりだ。


近くに置いてあったスマホに手を伸ばし、電話帳を開いた。
沢山スマホに入れられたアドレス達。その中に一つだけ輝いて見えるモノがあった。


「 啓太… 」

大河啓太…。小学校からの幼馴染で同じ大学に通ってる同級生。
なんらかの縁で私達はずっと仲良くさせてもらってる。…前も飲みに行ったし。
彼だったら上辺だけじゃないかもって少しだけ希望持てる。


私は流れる血を見つめながら彼に連絡した。


ピルルルル.....ガチャッ


『 もしもし?佐奈? 』

彼のいつも通りの声が私の耳に癒しを与える。
私は震えた声で、微かな力を振り絞りながら伝える。


「 …た、たすけ…て 」

『 ハァ?助けて…? 』

「 痛い…たすけ…て… 」

『 え、どうしたんだ!? 』


───バタッ。


ここで私は意識を失った。スマホは真っ赤なカーペットに落とされた。
目の前は真っ暗…まるで闇の世界に居るみたいだ。
私はその世界に長く眠っていたようだ。


数時間後、手の辺りにフワリと温もりを感じた。
ゆっくりゆっくりと目を開けると、うっすら開かれた視界には啓太の姿が。


「 けい… 」

完全に目を開いた時、しっかりと私は見た。
彼が私の手を握りながら泣きじゃくっている姿を──。
手に温もりがあったのはこれだったのか…、少しヒヤリとしたのは涙だったのか。


彼の涙は収まることない。余程驚いたのだろう。
そりゃそうか…、真っ赤なカーペットの上に脈切れた意識不明の女子大生居たんだし。
しかも小学校の頃から知ってる幼馴染だったらなおさらか……。


啓太に悪いことしたな。


「 啓太 」

私は幼児に優しく呼びかけるように声を掛けた。
すると啓太は涙でボロボロになった顔を上にあげ、私を見た。


「 佐奈…、お前 」

先程の顔とは一転し、明るい顔へと変わっていく。
私はニコッと微笑んで話す。


「 心配掛けてごめんなさい 」

すると啓太は少し怒ったような表情と口調でこう言った。


「 本当だよな!もう…、マジで 」

服の袖で必死に涙を拭う。
私は眉を歪めながら、溜息混じりにこう言った。


「 …ごめん、あんな光景見たら誰だって驚くよね 」

「 そ、そりゃそうだけど…
       俺が言いたいのはそういう事じゃなくって! 」


───ガラッ。

まるで啓太の言葉を隠すかのように鳴り響くドアの音。
そこには、私の元カレが立っていた。


「 蓮、何で… 」

震えがまた始まる。啓太は不思議そうに私の顔を見つめた。
そんな空気さえ読もうとせず、蓮はズカズカと病室に入って来た。


「 佐奈、脈切ったんだって?大丈夫なのかよ 」

本当に心配してるかのように、眉を歪めながら尋ねてくる。
でも、私には分かる。…カレの嘘と本性が。


「 だ、大丈夫…… 」

震えた手を右手で握り、必死に抑える。
でもカレには何もかもお見通しなのだ───。


「 やっぱ俺と離れて寂しかったんじゃね? 」

ニヤリと八重歯を見せながら笑う。
嫌な予感と共に背筋がゾクッとした。


「 なぁ、そうだろ? 」

突然顔を覗き込むように近づけてきた。
まるで狼に追い込まれた子羊のように私は震えきっていた。


すると見ていた啓太が蓮を掴んだ。


「 佐奈嫌がってるじゃん、止めろよ 」

「 ハァ?お前誰? 」

睨みを利かせながら尋ねる。しかし、啓太は真っ直ぐな瞳で答えた。


「 俺?佐奈の彼氏だけど 」

「 …!? 」

目が飛び出すくらい驚いた発言。
その言葉に同じくらい蓮は驚いているようだ。


「 意味分かんねぇ、佐奈…新しい男デキたのか? 」

今にも襲い掛かりそうな目で尋ねる。
私は必死に涙を堪え、震える体を抑え、口を開いた。


「 そ、そうだよ… 
      蓮とはだってもう別れたじゃん… 」

「 ハァ!? ざけんなよ 」

切ってダメージを負った脈をギュッと掴み、私を自分のほうへ引き寄せた。
とてつもない激痛が走る。それと共に目の前にある顔への恐怖も襲い掛かる。


狼のような目は私を今にも食べそうだ。


「 なあ、佐奈は俺だけのモンだったよなぁ? 」

ネットリとした声で耳元に囁く。
啓太には聞えないようにワザとやっているのか……


啓太は必死に彼を止めようとするが、ボクシングやってる彼には敵わない。
勿論、女で何もやってない私はすぐに負けてしまう。


「 …佐奈、戻ろう?
   俺達にはしっかりとした愛があるじゃん 」

突然優しい声に変わった。
「愛がある」なんて一度も想ったこと無い彼との時間。
暴力と酒で結ばれたようなそんな関係は…もう要らない…。


「 戻らない… 」

「 アァ?聞えねぇ 」

「 戻らないって言ってるの!!! 」

つかまれた腕を振り払い、キッと蓮を睨んだ。
すると蓮はそんな私を見ながらあざ笑った───。


「 変わったね、佐奈… 男デキたからか?
     じゃあさ、この男が居なくなったら俺んとこくんの? 」

「 え? 」

本気さが伝わってくる蓮の目。そしてポケットに入っていたナイフ。
蓮は最初から叶わなかったらそうするつもりだったんだ……


「 ヤダッ、蓮やめて! 」

慌ててベッドから取り乱す。だが彼の暴走は一度始まると納まらない。
警察か、第三者が来るまでは──。


「 佐奈… 」

「 じゃ、佐奈との幸せ返して貰うわ 」

そう言って彼にナイフを突きつけ、ゆっくりと近づけていった。


次の瞬間、私の頭の中で走馬灯のように記憶が蘇った。
初めて啓太と悪戯した時の記憶……。
私が泣き喚いて、啓太が事故に遭ったとか言って驚かしてた…。


──これだ。


「 じゃあな、色男 」

彼がナイフで刺すと同時に私は叫んだ。


「 助けてください!!ここに殺人鬼が居るんです!! 」

「 さ、佐奈!? 」

我に返った蓮は私に駆け寄り、必死に黙らせた。
でも私の声はもう消せない。一度響き渡れば病院はとても声が行き渡る。


すぐに警備員が来て蓮は逮捕された。
私達は病室で二人、安全な場所で確保された。


静かな病室で啓太が口を開く。


「 俺さ、血見たから驚いたんじゃないぞ 」

「 え? 」

「 お前が倒れてたから…、驚いてこっちが死にそうになった 」

啓太の目はまた少し潤み始めてる。


「 ごめんね 」

「 これからは、もう安全だから 」

そう言って私の肩をそっと抱いてくれた。
私は「うん」と頷き、彼の肩に擦り寄るようにもたれかかった。


夕焼けが私達をオレンジ色に染めていく。
それと共にベッドの後ろで映った影はゆっくりと重なって行った──。


END

アバター
2022/04/14 11:07
私も死のうとしたことがあります。
全部未遂で終わってしまいましたが・・・。
電車に轢かれそうになって、サラリーマンに助けられたり・・・
最愛の幼馴染を自死で失いました。
この小説を読んで、当時の自分がどうして未遂をしたのかわかりました。
素敵な小説をありがとうございました。
アバター
2014/01/05 21:48
そうだ!塾だ塾ww
アバター
2014/01/05 21:45
ですね・・・。
きっと、今日は塾なんですね笑
アバター
2014/01/05 21:43
なるほどです・・・。
私が返信しないと怒るくせになんなんでしょうね笑
まぁ、付き合う前の話ですが笑
アバター
2014/01/05 21:41
そうなんですかね・・・。
まぁあの人はメールより、LINE派ですから・・・・。
メールより、LINEのほうが大切って考えなんですかね。

もー!って感じです笑
アバター
2014/01/05 21:22
前、付き合ってる人のこと話したじゃないですか・・・?

なんか、メールも全然してなくて・・・。

今日、頑張ってメールしてみたんです。

でも、返信くれなくて・・・。

私、どうしたらいいんでしょうね・・・。
アバター
2014/01/05 19:40
コメントありがとう。

やっぱり、そう思うよね・・・。
なんかね、最近彼女と別れたらしくて・・・。
そしたら、別れた次の日からメールしてくるんだー。
毎日、毎日・・・。
しかもね、きずかなかったら・・・
1時間ごとにしてくるの・・・。


だんだん、怖くなってくる。
アバター
2014/01/05 18:27
こんばんは。
私も、わたしは生きてる意味がないとか思ったことがあります。
こういう悩みって人に言えないから、一人で抱え込んでしまうこと多いですよね・・・。


アバター
2014/01/04 21:27
そうなんですかね・・・・?笑
アバター
2014/01/04 21:07
私も死のうとしたことある・・・。
でも、その時どこかで「誰かに止めて欲しい」って思ったから死ねなかった・・・。
止めてくれる人なんて誰もいなかったから・・・。
いつか、こうやって止めてくれて、助けてくれる人が現れて欲しいなあー笑



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