Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


コスモス 【 短編小説 】


コスモス 【 短編小説 】

貴方の姿はもうない───。
左右を見渡し、探し回ってもどこにも居ない。
いつもコーヒーを淹れて「おはよう」って言ってくれる彼も居ない。


…どこへ行ったの? 

*****


ピ....ピ....ピピピピピピッ....!!!

今日も耳を壊す勢いで鳴り響く目覚まし時計。
うっとおしいと言うかのように私はスイッチを止める。
そして、ダブルベッドで一人…目を覚ます。いつも居るはずの貴方は居ない。


「 あれ?雄太…? 」

ベッドから飛び出し、彼探し。私は本気で彼を探した。
かくれんぼのような感覚ではなく、本当に誘拐された彼を探すかのように──。


順番に風呂場、台所、リビング……。
でも彼はどこにも居ない。彼の笑顔が見たいのにどこにもない。
リビングで膝から崩れ落ち、私は泣きじゃくる。


そして、リビングに飾られた一輪の花を見て思い出す。


──そうだ、彼はもういないんだ。


「 …また今日もやっちゃった 」

ポツリと呟いた独り言。
記憶を巡らせながら、ゆっくりコーヒーを淹れる。
そして、並べられた白いソファに腰を落とす。


木製の茶色いテーブルにコーヒーカップを置き、一段落つく。
ソファに靠れかかり、さっき流したばかりの涙を流す。
上を向いて天井を見上げたとしても、涙は止まらない。頬を伝うばかりだ。


どうして貴方は私を置いていってしまったの……?


*******

「 えぇ?じゃあ雄太また仕事なのぉ? 」

お風呂上りでビールを飲んでいる彼に尋ねる。
少し疲れている彼は曖昧な返事を返す。


「 明日はだって… 」
「 ごめんな、美恵  」

そう言ってまるで幼児を寝かしつけるかのように頭を撫でた。
これで癒されてる私も居るんだけど、これでは今日は絶対に引けない。


「 ヤダ!明日は早く帰って来てよぉ~! 」

甘い声で駄々をこねる。これこそ三歳児のようだ。
雄太はお手上げと言うかのように撫でていた手を上に上げた。


明日は特別な日。大事な私の生まれた日。
一年に一度しかないし、毎年きちんと祝えてないから……。
20歳のお祝いはしっかりとしてあげたい。


しかし、彼も遊びで遅くなるわけではない。
彼は溜息混じりにこう言った。


「 あのな、美恵… 
     俺だって遊んでる訳じゃないんだぞ? 」

それはまるで幼児に優しく教えるかのような言い方。おまけに呆れてる。
私はその態度にムッとしてしまい、頬を膨らましてこう反抗した。


「 もう雄太なんか知らない!もう帰ってこなきゃいいじゃん! 」

「 あ、美恵! 」

呼び止める彼の声を無視し、私は先にベッドに入った。
彼は気まずくて、中々部屋には入ってこなかった。


私も空気が重くて、落ち着かなくて、仲直りしたくって…
彼が入ってくるまで待っていた。…けど入ってこなかった───。
だって翌朝目を覚ますと、彼はソファで大量の空のビールと共に眠りについていたから。


思わず溜息を零し、眉をゆがめてしまう。
私のせいで彼は…と。


ただいまの時刻、5時半。
彼を起こして仲直りしようと思えばできる時間だ。


──でも、私はそんな素直で可愛い女なんかじゃない。


その日はお弁当だけ作ってテーブルに置き、再び眠りに入った。
彼の家を出る音と、微かに溜息は聞えたが聞えない振りをした。
何も受け止めたくないと喚く幼児のように。


毛布に包まり、誰もいない家で一人目を瞑る。
体は温もりに包まれて温かいと言うのに何も満たされない。
寂しさという名の波が私の心をどんどんと呑んでいく───。


チラリと毛布から見上げたカレンダー。
彼には気づかれないようにしてたけど、小さく赤い丸をしている。


また目から涙が零れ落ちる。
部屋で一人、孤独を抱えて眠る平日。
誕生日まで一緒にゆっくり居てくれない彼が憎い。
…でもそれ以上に、誕生日まで困らせてしまう自分が憎い。


──帰ってきたら謝ろう。
私はそう心に誓ってまた眠りについた。



…そして、数時間後彼は帰ってきた。
慌てて寝室から飛び出し、彼の元へ駆け寄る。
すると彼の顔はげっそりしており、鞄にはパンパンに詰まった書類があった。


「 雄太… 」

言葉も出なかった。ただ名前を呼ぶだけ。
そんな私を見て雄太はまた溜息を零した…。


そして何もなかったかのように私の隣を横切った。
まるで私は見えていないようだった。今までこんな事一度もなかったのに。
今までだったら雄太から「まだ怒ってるの?」とか笑顔で尋ねてくれたのに。


「 ね、ねえ雄太… 」

初めて自分から声を掛ける。だが雄太は応答しようとしない。
ようやく口を開いたかと思えば、彼はうっすら開いた口でこう言った。


「 俺達さ、こんなんでいいの? 」

「 …え? 」

唖然としてしまった。口が開いたままで動かない。
なんと言えばいいのかわからず、頭だって回転しない。
ただ私は雄太の隣に腰を落とし、黙って膝に手を当てた。


雄太は何も聞かなくても話し始める。


「 なんか最近噛みあってないよね 俺等 」

淡々と私の事も気にせず話して行く。


「 最近ずっと考えてたんだ いいのかなぁって 」

返事だってできてないのに。


「 だから、お互い落ち着くまでさ…距離置かない? 」

「 …雄太 」

謝るって決めたのに、誓ったのに。
なのに私は…こんな時に限って言葉が出てこない。
ただ彼の服の袖を掴んで、渋々首を縦に振ることしかできない。


彼もそれを見て出て行く支度をすぐ始めた。なんのつっかえもなく……。
私の顔はもう一切見ない。写真は全て置いて行った。
でも一つだけ置いていってくれたモノがある。


「 …はい、美恵 」

「 ……? 」

見上げるとそこにはコスモスの花が添えられていた。
一輪のコスモス。それは大好きな花だった。


…これが貴方の最後の思い遣りなんだね。
そう心で呟いて私達の関係は終わった。


*****


そんなこんなで3年時は過ぎた。
彼を探し回って居た自分は薄っすら消えつつある。
突然の別れで起きたショックはようやく落ち着いてきたみたい。


コスモスの花も枯れてしまい、今では違う花を添えている。
彼の痕跡を消すかのように、思い出の写真は全て棚の中に仕舞いこんでいる。
でも…、心の思い出は消えない。一枚も消せないし燃やせない。


そんな自分が情けなくて窓の外を眺める。
空はどんな自分でも許してくれる気がして、飲み込んでくれる気がして…。
そして深呼吸したら洗われる気がするんだ。


そして明日も頑張れる。貴方が隣に居なくてもやっと笑えるようになったから。


ピーンポーン....

「 …ん? 」

平日の真昼間に突然鳴り響いたインターホン。
こんな珍しいことはない。


恐る恐る玄関の穴を見た。


「 ──え? 」

口に手を当て、ニ、三歩引いてしまう。
思わず体が震えてしまう。


扉の先に居たのはあの頃死ぬ気で愛した彼が立っていた。
大好きなコスモスの花束を抱えて…。


もう忘れるって決めたはずなのに、会わないって決めたはずなのに…。
私はドアの鍵を開けられずには居られなかった。
手を伸ばし、鍵を捻る。するとそこには少し大人っぽくなった彼が立っていた。


あの頃と変わらない笑顔で。


「 美恵、遅くなってごめん 」

そう言って差し出す。コスモスの香りに包まれながら彼との再会に浸る。
そして涙が頬を伝う。


「 雄太ぁ… 」

「 もう絶対離さないから、安心しろ 」

雄太。私ずっと雄太に会いたかったの。
気づかれないようにそう心で呟く。彼の胸に抱かれながら。


END

アバター
2014/01/02 05:06
明日読ませてもらうわ
ば~いノ
アバター
2014/01/02 04:58
もっと本読んで言い回し表現とか語彙力を養えば
文字数減らしたいときに言い換えで少なくできる。
あとは練習あるのみ。
アバター
2014/01/02 04:46
てかそうしてくれw
時数無理やり減らして質を下げないでおくれ。
アバター
2014/01/02 04:39
それは区切りがいいところで分けるとかしようぜw
さっきので言うと
…これが貴方の最後の思い遣りなんだね。
そう心で呟いて私達の関係は終わった。

で次のブログで続きから的な。
アバター
2014/01/02 04:31
まじか…
それ質落ちそうだな。
何個かに分けて投稿するってのは?
アバター
2014/01/02 04:22
うわっそれは辛い。
そういう場合どうしてんの?
アバター
2014/01/02 04:14
なんか最近噛みあってないよね
=お互いリンクしてない
=二人の距離を置くっていう意味のとらえ方が違う
=だから雄太は時間がかかったが帰ってきた
みたいな感じならありかな

時数はとりあえず気にせずやった方がいいんじゃね?
アバター
2014/01/02 04:02
雄太「距離置かない?」
美恵「関係が終わった」
↑矛盾

雄太なんで戻ってきたの?って感じかな
そこがちょっとおざなり
アバター
2014/01/02 03:55
こっちこそ驚きだわ!
普通だったら文句言ってもいいようなコメントだったのに
感謝されるとは思ってなかったわ\(◎o◎)/
人の意見を素直に受け止めれる人は伸びてくよ
頑張って!

アバター
2014/01/02 03:18
私宅→支度
インタンホン→インターホン
写真だって全て置いて行った。
でも一つだけ置いていってくれたモノがある。
↑どっち?
雄太の最後の発言が投げやりな感じ

マジレスすまん
でも非常によく出来てるからこそ直してほしい
次回の作品も期待



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