Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第十二章 】

第十二章 『 何かの芽生え 』


あの夜から翌日…、いつもと何も変わらない朝が来た。
枕元に固定したかのように置いたスマホは一切光らない。
変わった、としいて言うならば私の酷い寝癖だ。


あんなに綺麗にまとまっていた前髪もボサボサ。
もう何がなんだかわからない状態に陥っていた。


──どうすればいいんだろう。私は、何をしたら正解なんだろうか……?


朝っぱらからこんな事ばかり考えて、食事も喉を通らない状況。
母は眉を歪めて心配したが、私は素っ気無く返した。
母には無駄に心配を掛けたくないし上手く新しい男でも作って幸せになってほしい。


私はもう子供じゃないんだし、母の幸せだって祈れる年だ。
バイトだってしようと思えばできるんだし……。


そんな事を思いながら玄関に飾られた父の写真を見つめる。
父はいつもと変わらず私に微笑んでくれている。…あの頃と何も変わらないまま。
私が自転車に乗れるように毎日公園に連れて行って練習に付き合ってくれたあの頃


──でも私の心はすっかり変わってしまった。
心はすっかり穢れてしまって、もうあの頃の無邪気な夢は見れなくなった。
ただただ、お父さんと…笑ってればいい。お母さんと居ればいいっていう夢さえも。


…それが突然悲しくてたまらなくなった。


「 …行ってきます 」

母の返事はない。さっき素っ気無い返事をしたから少し喧嘩気味になったからだ。
この喧嘩は確実に私が悪いんだけど…、絶対に謝れないと思う。


いつ落としてしまったんだろう…?悪い事したら謝るって言う事を───。
いつ失くしてしまったんだろう…?あの頃の無邪気な夢。


「 っ… 」

ヤバイ、泣いちゃいそう。


グッと涙を堪えながら歩く通学路。
桜は満開なのに私の心にはポッカリと穴が開いていた。


隣にいつも居るはずの美由は居ない。先に行くとメールが来たのは知ってた。
でも……、私は既読していない。見てないことにしたかったから。


──私、何やってるんだろう?


数え切れない言葉を頭に並べてる内に目の前には学校があった。
楽しそうに皆いつも通り登校してくる。何も…、ないっていう感じで──。
私もそう見えるんだろうか…?私も何もないっていう風に見えてるんだろうか?


「 今野…? 」

突然聞えた落ち着く優しい声。


「 えっ…? 」

振り返ると、そこに居たのはあの坂谷君だった。
坂谷君もいつもと変わらぬ心温める笑顔で私を見ていた。


「 …あれ? 」

突然眉を歪め、顔を変えた。私は慌てて顔を隠す。
そんな私を見て何かを察した坂谷君は優しい口調でこう言った。


「 何かあった?なんか元気ないけど… 」

心の中で「なんで気づいたの?」と何度も尋ねた。
でも、本人には聞けなかった。


私はうなじに手を持って行き、隠すようにこう言った。


「 えぇ?そんな事ないけどなぁ…… 」

そんな事ない訳ないのに面白くもない嘘を坂谷君に吐いた。
これで坂谷君も笑顔に戻って帰ってくれるだろう…。私はそう思った。


───でも、


「 そんな事なくないでしょー、何かあるなら聞くよ? 」

またあの優しい口調…。私の心を毛布を包めるかのような。
私はつい頷いて軽く美由との事を説明してしまった。


すると坂谷君は考え込み、こう言った。


「 今は答え出せなさそうだから、後ででいい? 」

私は目を丸くした。そこまで考えてくれていたのか、と。


「是非是非」と言うかのように私は激しく頷いた。
すると彼はたちまち笑顔に戻り、教室へと直行していった──。


つい笑ってしまった。……不思議な人だなと。


*****


あれからすぐに時間は経った。美由とは一言も会話をせぬまま。
私は入学式に仲良くなった瑠衣と屋上でご飯を食べていた。


しかし瑠衣は私と美由との事が気になる様子。
箸は一切止めずに、私にこう尋ねた。


「 …いいの?美由の事 」

なんとも言えない質問。…今の私には答え出せないから。
そう思い、つい黙り込んでしまった。


すると彼女は大きな溜息を零した。
その溜息で弁当箱の蓋が曇るくらいの大きくて長い溜息。


そして口火を切った。


「 なんか悪いわぁ 」


「 え? 」


その言葉を聞いたとき驚いた。何が罪悪感なんだろうと…。
瑠衣は何も悪い事してないのに何で責めるんだろうと。


つい目を丸くして見つめてしまうくらいだ。
すると瑠衣は私の心を悟ったかのように言った。


「 美由との溝…、こうやって私とお弁当食べてる事によって深めてるんじゃない? 」

と、一切箸を止めなかった瑠衣がとうとう止めて言った。


でも確かにそれは一理あるなって思った。
だって私が瑠衣じゃなくって美由を誘えば…、よかった話なんだから…。


──私、何やってるんだろう。


「 …ね、美由に言ったほうがいいんじゃないの? 」

瑠衣の気遣いだと思った。


「 う、うん 言ってくる 」

お弁当を置いて私は美由の元へと向かった──。
その時の瑠衣の微笑みは忘れないだろう。


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第十二章 『 何かの芽生え 』
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2013/12/30 19:16
難しいですよね、女関係って

本当にめんどくさいといってしまいたいくらい大変ですよねw

いや、仲直りするのって大変ですよね~

続き気になります!
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2013/12/30 18:24

早く美由ちゃんと前みたいに仲良くしてほしいなぁ...
瑠衣ちゃんも気づいて言ってくれるなんて。:゚(。ノω\。)゚・。

早く仲直りしますように*!

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2013/12/28 19:54
そう思えば上手くなるよb
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2013/12/28 19:47
それならもっと上手くできるでしょうね^^

これでうまくいっていないということはねb
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2013/12/28 19:42
いやぁね、うまくなってるから
すごいと思いましたよ´∀`)
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2013/12/28 19:40
おぉぉ´∀`) すごい^^



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