Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第九章 】

第九章 『 事の重さ 』



美由の違和感ある行動の謎を解く鍵は一つ。
本人に直接聞く事である。


「 お疲れ様でした~ 」
部室を出る際、先輩に軽く一礼をする。


そしてすぐに取り出したのはスマホだ。
勿論、開いた番号は『美由』と書かれた場所である。


美由から聞き出さなくては、モヤモヤが収まらないし。
美由から聞かなくては、何も解決しないから───。


このまま避けられても困るし。


プルルル.....


呼び出しベルが鳴り響く。
その音が妙に耳に付いてなんだか嫌だ。


朝の春の暖かい気候が嘘のように寒さを感じる夕焼けの帰り道。
私は一人、鞄の中で冷たくなったスマホを片手に歩く───。


プツッ....、


「 あっ、美由…『 只今、電話に出ることができません 』
電話に出たと思えば出たのは留守番サービス。


一気に首を落とし、また溜息を零す。
やっぱり美由は私を避けているのか……。


そう考えると、明日の朝が不安で堪らなくなった。


「 …美由 」
留守番サービスが出ているスマホ画面を見つめ、呟く。


美由に何か悪い事をしたのか……、今はそれだけ考えて歩む。
きっと知らないところで心を抉ったのだろう。


それが分からない私は、最低だ。
だから、最低になる前に…見当を付けておきたい。


……今後の未来のためにも。


「 おぉ~い!夏芽! 」
後ろから聞えた瑠衣の声。


その声は段々とこちらに近づいてくる。
振り返れば、瑠衣の息切れした姿。


「 ちょ、部活終わりに走らせないで~… 」
胸を押さえながら、呟く。


「 ごめんごめん 気づかなくて…… 」
首筋を右手で触れながら、苦笑いを浮かべる。


「 どうしたの?やっぱ……美由の事? 」
少し不安気な表情で顔を覗き込むように尋ねる。


「 まぁ…、そんな所かな? 」
私はまだ苦笑いを浮かべながら返す。


「 そっかぁ…、やっぱ気になるよねぇ
    いつも一緒に登校してるから余計だよねぇ~ 」
私の横に並び、スマホをいじりながらそう言った。


コンクリートの大地に響くローファーの当たる音が響く。
春だと言うのに、こんなにも肌寒く感じる───。


罪悪感からだろうか?


「 あ、そういえばさ 」
何かを思いついたかのように、こちらを向いた。


「 レギュラー、決まったんだって? 」
ニコニコとスマホを片手に尋ねる。


「 あ、うん 」


「 よかったねー!おめでと! 」
まるでさっきのしんみりした空気を壊すかのような明るい声。


だがしかし、私はその流れについていく事はできない。
それは誰だって一緒のはずなのだが。


「 あ、ありがと 」
とりあえず、お礼だけ交わした。


「 私も早くレギュラー取りたいなぁ~ 」
さっきの美由の話がまるで無かったかのような言葉。
やっぱり瑠衣はそこまで深く考えてないようだ。


そんな瑠衣には今日は付き合えないな。


「 ごめん、寄る所あるから 」


「 え?そうなの? 」


「 うん、バイバイ 」
変な口実を作り、彼女とは別の場所へと帰った。


確実に遠回りなのだが……、仕方が無い。
私は鞄に直していたスマホをもう一度取り出し、メールを打つ。


『 話せない? 』
と素っ気無い一言のメール。


「 …返事来るかなぁ 」
と、一人で呟く。


…いや、来てくれなきゃ困る。
明日はきっちり笑って話せるようにしたいから──。


「 …はあ 」
今日何度目かわからない溜息。


プルルルッ.....


「 うわっ! 」
スマホを握っていたほうの手が突然震える。


つい、たった一人で大声を上げてしまった。
チラリと画面を見ると、そこには『美由』と書かれていた。


「 美由… 」
慌てて電話のボタンを押す。


「 もしもし? 」


『 …夏芽ちゃん、ごめんね心配掛けて 』
そこにはまだ震え声が収まっていない美由の声が。


「 あ、ううん… 大丈夫? 」
自分のせいかもしれないと分かっていながら、様子を尋ねる。


『 うん、大丈夫 少し話そうか 』
それは何かを決意したような声だった。


「 …うん 」
どこか切なくなってしまうほどの。


『 じゃあ、晩御飯ついでに食べようか 』


「 うん 」


夕飯の誘い…、話が長くなるという事だろうか?


『 じゃあ駅前のファミレスで待ってる 』


「 了解 」
そう言って電話を切る。


たったこれだけの電話だが、十分だった。
今は会う事だけに集中すればいいんだ。


「 …よっし 」
気合を入れなおし、ファミレスに向かった。



*************************************************************************
第九章 『 事の重さ 』 END
*************************************************************************
~あとがき~
とにかく更新が遅いですね。
短編ばっかり出しちゃってる(´・ω・`);

次は早く更新しますノノ

アバター
2013/12/12 18:27
美由ちゃんに何があったのか気になります!
続き楽しみです!!

短編も面白いんで楽しみにしてます^^
アバター
2013/12/12 18:01


美由ちゃんの話...一体なんなんでしょう...?
気になります...!
続きが今回はもっと楽しみです^^*




月別アーカイブ

2019

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.