恋の芽が出る頃に 【 第九章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/12/11 20:20:40
第九章 『 事の重さ 』
美由の違和感ある行動の謎を解く鍵は一つ。
本人に直接聞く事である。
「 お疲れ様でした~ 」
部室を出る際、先輩に軽く一礼をする。
そしてすぐに取り出したのはスマホだ。
勿論、開いた番号は『美由』と書かれた場所である。
美由から聞き出さなくては、モヤモヤが収まらないし。
美由から聞かなくては、何も解決しないから───。
このまま避けられても困るし。
プルルル.....
呼び出しベルが鳴り響く。
その音が妙に耳に付いてなんだか嫌だ。
朝の春の暖かい気候が嘘のように寒さを感じる夕焼けの帰り道。
私は一人、鞄の中で冷たくなったスマホを片手に歩く───。
プツッ....、
「 あっ、美由…『 只今、電話に出ることができません 』
電話に出たと思えば出たのは留守番サービス。
一気に首を落とし、また溜息を零す。
やっぱり美由は私を避けているのか……。
そう考えると、明日の朝が不安で堪らなくなった。
「 …美由 」
留守番サービスが出ているスマホ画面を見つめ、呟く。
美由に何か悪い事をしたのか……、今はそれだけ考えて歩む。
きっと知らないところで心を抉ったのだろう。
それが分からない私は、最低だ。
だから、最低になる前に…見当を付けておきたい。
……今後の未来のためにも。
「 おぉ~い!夏芽! 」
後ろから聞えた瑠衣の声。
その声は段々とこちらに近づいてくる。
振り返れば、瑠衣の息切れした姿。
「 ちょ、部活終わりに走らせないで~… 」
胸を押さえながら、呟く。
「 ごめんごめん 気づかなくて…… 」
首筋を右手で触れながら、苦笑いを浮かべる。
「 どうしたの?やっぱ……美由の事? 」
少し不安気な表情で顔を覗き込むように尋ねる。
「 まぁ…、そんな所かな? 」
私はまだ苦笑いを浮かべながら返す。
「 そっかぁ…、やっぱ気になるよねぇ
いつも一緒に登校してるから余計だよねぇ~ 」
私の横に並び、スマホをいじりながらそう言った。
コンクリートの大地に響くローファーの当たる音が響く。
春だと言うのに、こんなにも肌寒く感じる───。
罪悪感からだろうか?
「 あ、そういえばさ 」
何かを思いついたかのように、こちらを向いた。
「 レギュラー、決まったんだって? 」
ニコニコとスマホを片手に尋ねる。
「 あ、うん 」
「 よかったねー!おめでと! 」
まるでさっきのしんみりした空気を壊すかのような明るい声。
だがしかし、私はその流れについていく事はできない。
それは誰だって一緒のはずなのだが。
「 あ、ありがと 」
とりあえず、お礼だけ交わした。
「 私も早くレギュラー取りたいなぁ~ 」
さっきの美由の話がまるで無かったかのような言葉。
やっぱり瑠衣はそこまで深く考えてないようだ。
そんな瑠衣には今日は付き合えないな。
「 ごめん、寄る所あるから 」
「 え?そうなの? 」
「 うん、バイバイ 」
変な口実を作り、彼女とは別の場所へと帰った。
確実に遠回りなのだが……、仕方が無い。
私は鞄に直していたスマホをもう一度取り出し、メールを打つ。
『 話せない? 』
と素っ気無い一言のメール。
「 …返事来るかなぁ 」
と、一人で呟く。
…いや、来てくれなきゃ困る。
明日はきっちり笑って話せるようにしたいから──。
「 …はあ 」
今日何度目かわからない溜息。
プルルルッ.....
「 うわっ! 」
スマホを握っていたほうの手が突然震える。
つい、たった一人で大声を上げてしまった。
チラリと画面を見ると、そこには『美由』と書かれていた。
「 美由… 」
慌てて電話のボタンを押す。
「 もしもし? 」
『 …夏芽ちゃん、ごめんね心配掛けて 』
そこにはまだ震え声が収まっていない美由の声が。
「 あ、ううん… 大丈夫? 」
自分のせいかもしれないと分かっていながら、様子を尋ねる。
『 うん、大丈夫 少し話そうか 』
それは何かを決意したような声だった。
「 …うん 」
どこか切なくなってしまうほどの。
『 じゃあ、晩御飯ついでに食べようか 』
「 うん 」
夕飯の誘い…、話が長くなるという事だろうか?
『 じゃあ駅前のファミレスで待ってる 』
「 了解 」
そう言って電話を切る。
たったこれだけの電話だが、十分だった。
今は会う事だけに集中すればいいんだ。
「 …よっし 」
気合を入れなおし、ファミレスに向かった。
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第九章 『 事の重さ 』 END
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~あとがき~
とにかく更新が遅いですね。
短編ばっかり出しちゃってる(´・ω・`);
次は早く更新しますノノ
続き楽しみです!!
短編も面白いんで楽しみにしてます^^
美由ちゃんの話...一体なんなんでしょう...?
気になります...!
続きが今回はもっと楽しみです^^*