Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


愛する条件 【 短編小説 】

愛する条件 【 短編小説 】



たまたまふらりと寄った本屋に並ぶ女性雑誌。
その表紙にはデカデカと『愛される条件』などと書かれている。


まあ、よくある表紙のキャッチコピーだ。
どの雑誌もクリスマスシーズンになってからそんなのばかり書いてある。
いい加減飽きてきたし、そこまで興味もそそられない。


今日もこんな雑誌しかないのか。


少し呆れ気味で目を雑誌から逸らす。
すると、ふとあるキャッチコピーが目に入った。


そこには『愛される条件』じゃなく、『愛する条件』と書かれていた。


「 ……? 」
少し眉を歪め、雑誌を手に取る。


『愛される』ではなく『愛する』なんて……。
こんなクリスマスシーズンに受身じゃないキャッチコピーを入れるとは。
どんな雑誌だ、と眉を歪める。


だが気づけば私はその雑誌の虜になっていた。


鞄からいつの間にか出ていた財布。
そして出てきた千円札。


私の呆れた足はレジへと進んでいた。


「 いらっしゃいませぇ 」
やる気のなさそうな男子店員が雑誌を受け取る。


「 …… 」
私は無言でお金を差し出した。


「 ……? 」
突然眉を歪めながら、雑誌を見つめた。


アルバイトだから仕方ないけど、失礼過ぎるでしょ……。
と、また男子店員を見て呆れる。


「 あの、失礼ですけど…… 」
口をとうとう私に開いた。


「 何ですか? 」
鋭く尖った目で尋ねる。


「 えっと、すみません 
        珍しいなって思って…… 」
眉を潜めながらそう不思議そうに雑誌を持つ。


「 何がです? 」
目を鋭くさせたまま、尋ねる。


「 こんなクリスマスシーズンにこの雑誌って……
   あ、まあ有難いんですけどね、これ在庫有り余ってるし 」
冗談っぽくそう笑う彼。


少しイラッとさせるような顔に思えた。
鞄からもう一枚千円札を手に取り、レジに投げる。


「 何?こういう事? 」
少し怒った声で尋ねる。


「 え、違いますよ ただ俺は── 」
「 急いでるんで、会計済ませてくれません? 」
眉間によるシワは一向に強まるばかり。


「 か、かしこまりました 」
彼は黙って会計を始めた。


袋を受け取り、本屋から立ち去る。
気分は勿論、最悪だ。



──家に帰ってからすぐに雑誌を開く。
ベッドの上で寝そべり、片手にはコーヒー。


私にとって最高の時間だった。


「 フンフ~ン…… 」
気持ちよく鼻歌なんかも歌ってしまった。


それはさて置き、雑誌の内容と来たら興味深いモノばかりだ。
どうしてこれが在庫切れにならないのか不思議で仕方ない。


そしてとうとう本題に入った『愛する条件』のページ。
そこには未知の世界が広がっていた。


「 愛する…条件… 」
ポツリと呟いた一言───。


そこにはこんな事が書かれていた。


『 愛するためにはたった一つだけ条件があります それは…… 』


「 まず、自分を愛する事…… 」
つい口に出てしまった条件。


今思えば私は最近自分に自信を失っていた。
人を愛せなかったし、そもそも自分さえも───……。


そうだったんだ……。


「 これは失恋した子にも読ませたいな…… 」
慌てて雑誌を机に置き、もう一冊買いに出かけた。


失恋した子に読ませたいという一心で、千円札を握りながら。
あの店員の事さえ気にならないくらいの勢いで。



──本屋に着くとすぐに雑誌をレジに渡した。


「 あ、あれ? 」
店員はまださっきの奴みたいだ。


「 早くお会計済ませてください 」
千円札を渡す。


「 お客さん、もう読み終わりました?これ 」
会計しろと言ってるのに投げ掛けてきた世間話。


「 読みましたけど? 」
そっけなく返す。


「 実は僕もさっき読んだんですよ すごくよかったですね 」
笑顔で語りかける。


「 そうですね、私も失恋した子に読ませたくて…… 」
いつの間にか私も答えをきちんと返していた。


「 あぁ~、僕も最近失恋しちゃったんですよね 」
少し照れくさそうに言った。


「 そうなんですか?実は私もです 」
共感の目を向ける。


「 本当ですか?アハハ、同じですね 」
彼の笑顔がいつの間にか微笑ましく見えた。


「 よければ、今度ご一緒にどこか行きませんか? 」
突然の誘い。


「 え? 」
戸惑い、目を丸くする。


「 失恋した者同士、ね? 気晴らしにでも 」
ニコッと笑み、ウインクを投げる。


「 …そうですね 」
何故かその時私は嫌な顔一つせず答えを出した。
というかこれを待っていたのかもしれない。


愛する条件を……、知ったから?


「 じゃあ今度、また会いましょう 」
ニコッと微笑み、会計し終わった雑誌を渡す。


「 はい、楽しみにしてますね 」
雑誌を受け取り、微笑み返した。



私達が末永く幸せに暮らすのはまだ少し先のお話っ───。


END

アバター
2013/12/10 20:27
ん、遠慮なし。

待ってるね^^
アバター
2013/12/10 19:37
謝ることないよ?
謝る必要ないもん
アバター
2013/12/10 19:22
こんばんは*

そっか、、、
アバター
2013/12/10 18:31
このあとが少し気になりますが、
いいですねー

自分に自信を持つこと、ですか・・



月別アーカイブ

2019

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.