愛する条件 【 短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/12/09 23:38:49
愛する条件 【 短編小説 】
たまたまふらりと寄った本屋に並ぶ女性雑誌。
その表紙にはデカデカと『愛される条件』などと書かれている。
まあ、よくある表紙のキャッチコピーだ。
どの雑誌もクリスマスシーズンになってからそんなのばかり書いてある。
いい加減飽きてきたし、そこまで興味もそそられない。
今日もこんな雑誌しかないのか。
少し呆れ気味で目を雑誌から逸らす。
すると、ふとあるキャッチコピーが目に入った。
そこには『愛される条件』じゃなく、『愛する条件』と書かれていた。
「 ……? 」
少し眉を歪め、雑誌を手に取る。
『愛される』ではなく『愛する』なんて……。
こんなクリスマスシーズンに受身じゃないキャッチコピーを入れるとは。
どんな雑誌だ、と眉を歪める。
だが気づけば私はその雑誌の虜になっていた。
鞄からいつの間にか出ていた財布。
そして出てきた千円札。
私の呆れた足はレジへと進んでいた。
「 いらっしゃいませぇ 」
やる気のなさそうな男子店員が雑誌を受け取る。
「 …… 」
私は無言でお金を差し出した。
「 ……? 」
突然眉を歪めながら、雑誌を見つめた。
アルバイトだから仕方ないけど、失礼過ぎるでしょ……。
と、また男子店員を見て呆れる。
「 あの、失礼ですけど…… 」
口をとうとう私に開いた。
「 何ですか? 」
鋭く尖った目で尋ねる。
「 えっと、すみません
珍しいなって思って…… 」
眉を潜めながらそう不思議そうに雑誌を持つ。
「 何がです? 」
目を鋭くさせたまま、尋ねる。
「 こんなクリスマスシーズンにこの雑誌って……
あ、まあ有難いんですけどね、これ在庫有り余ってるし 」
冗談っぽくそう笑う彼。
少しイラッとさせるような顔に思えた。
鞄からもう一枚千円札を手に取り、レジに投げる。
「 何?こういう事? 」
少し怒った声で尋ねる。
「 え、違いますよ ただ俺は── 」
「 急いでるんで、会計済ませてくれません? 」
眉間によるシワは一向に強まるばかり。
「 か、かしこまりました 」
彼は黙って会計を始めた。
袋を受け取り、本屋から立ち去る。
気分は勿論、最悪だ。
──家に帰ってからすぐに雑誌を開く。
ベッドの上で寝そべり、片手にはコーヒー。
私にとって最高の時間だった。
「 フンフ~ン…… 」
気持ちよく鼻歌なんかも歌ってしまった。
それはさて置き、雑誌の内容と来たら興味深いモノばかりだ。
どうしてこれが在庫切れにならないのか不思議で仕方ない。
そしてとうとう本題に入った『愛する条件』のページ。
そこには未知の世界が広がっていた。
「 愛する…条件… 」
ポツリと呟いた一言───。
そこにはこんな事が書かれていた。
『 愛するためにはたった一つだけ条件があります それは…… 』
「 まず、自分を愛する事…… 」
つい口に出てしまった条件。
今思えば私は最近自分に自信を失っていた。
人を愛せなかったし、そもそも自分さえも───……。
そうだったんだ……。
「 これは失恋した子にも読ませたいな…… 」
慌てて雑誌を机に置き、もう一冊買いに出かけた。
失恋した子に読ませたいという一心で、千円札を握りながら。
あの店員の事さえ気にならないくらいの勢いで。
──本屋に着くとすぐに雑誌をレジに渡した。
「 あ、あれ? 」
店員はまださっきの奴みたいだ。
「 早くお会計済ませてください 」
千円札を渡す。
「 お客さん、もう読み終わりました?これ 」
会計しろと言ってるのに投げ掛けてきた世間話。
「 読みましたけど? 」
そっけなく返す。
「 実は僕もさっき読んだんですよ すごくよかったですね 」
笑顔で語りかける。
「 そうですね、私も失恋した子に読ませたくて…… 」
いつの間にか私も答えをきちんと返していた。
「 あぁ~、僕も最近失恋しちゃったんですよね 」
少し照れくさそうに言った。
「 そうなんですか?実は私もです 」
共感の目を向ける。
「 本当ですか?アハハ、同じですね 」
彼の笑顔がいつの間にか微笑ましく見えた。
「 よければ、今度ご一緒にどこか行きませんか? 」
突然の誘い。
「 え? 」
戸惑い、目を丸くする。
「 失恋した者同士、ね? 気晴らしにでも 」
ニコッと笑み、ウインクを投げる。
「 …そうですね 」
何故かその時私は嫌な顔一つせず答えを出した。
というかこれを待っていたのかもしれない。
愛する条件を……、知ったから?
「 じゃあ今度、また会いましょう 」
ニコッと微笑み、会計し終わった雑誌を渡す。
「 はい、楽しみにしてますね 」
雑誌を受け取り、微笑み返した。
私達が末永く幸せに暮らすのはまだ少し先のお話っ───。
END
待ってるね^^
謝る必要ないもん
そっか、、、
いいですねー
自分に自信を持つこと、ですか・・