LOVE SONG 【 短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/12/08 15:21:25
LOVE SONG 【 短編小説 】
今日も激しくて体を貫通するようなメロディーが部室から聞える。
それを流しているのは私が所属する『軽音部』だ。
ヒヤリと冷たいドアノブに手を掛け、ガチャッと捻る。
それと共に私を見た部室仲間が目を光らして駆け寄ってきた。
「 凪沙~!遅かったね! 」
部活の中で同年代の親友、中河京香が目を輝かす。
私篠田凪沙はこの軽音部の部長であり、そしてボーカルでもある。
いや……、詳しく言えば違う。ボーカル兼ギターだ。
そして親友の京香はベース。
彼女は私が唯一心底信頼している副部長でもある。
「 凪沙が来ないから……、後輩と気まずかったじゃん 」
少し声を小さくさせながら囁くように私に言う。
理由は二つある。
一つ目は、京香と後輩の意見のぶつかり合いだ。
京香は勿論この部活の中でベースが一番上手く、経験も積んでいる。
だがこの部活は目立ちたがり屋が多いため、いつも京香とぶつかるのだ。
「ここはこうしたほうがいいですよ」とか一丁前に言っている。
もう一つ。
京香は茶髪の巻き髪で、短髪の女の子。
まあ所謂この部活の中でも美人な方なのだ。
そのため嫉妬を被せられる事が多く、あまり口を交わしてない状況だ。
こんな風に濁った部活だが、今日も活動はしている。
「 今日も愛海ちゃんがさ…… 」
少し困ったような表情を作り、眉を歪める。
京香の言う「愛海ちゃん」というのは、ベースをしている子。
と言っても勿論京香よりはレベルが低い。
学年は二年生にも関わらず三年生の京香に激しく反論する後輩でもある。
今日もこの子に困らされてたようだ。
「 馬路で止めてほしいね!私別に拓斗の事好きじゃないのに…… 」
頬杖をつきながら、ため息を零す。
「拓斗君」というのはたった一人の男子部員で、私と同じボーカル兼ギター。
美声だと有名でおまけにイケメンというモテ男君。
だが京香はまったく興味ないし、むしろ別の人が好きだ。
だが愛海ちゃんに勘違いされて、激しく嫉妬されてるようだ。
「 キャハハッ、拓斗君ってばぁ 」
拓斗君は三年生という私と同年代。
……にも関わらず後輩の愛海ちゃんは馴れ馴れしい。
拓斗君に興味ない私でも時々苛立たしくなるくらいだ。
「 うぅん、そうねぇ…… 」
部長としてどうにかしなくてはならないと思う。
顎に触れながら考える。
「 ……うぅん 」
足を組み、頬杖を着く。
そんな事をしてる内に時計の針はいつの間にか六時を刺していた。
部員達は皆帰って行き、京香にも先に帰ってもらった。
いつの間にか外は真っ暗だし、廊下も薄暗い。
「 ヤバイッ……! 」
慌ててギターをケースに仕舞い込み、抱える。
そして楽譜を重ね、ファイルに直そうとした瞬間──、
「 あぁっ! 」
声を上げた時にはもう遅かった。
楽譜は床にばら撒かされ、揃えてた番号もバラバラになった。
慌てて拾い、楽譜を重ねていく───。
すると、後ろから扉の開く音が聞えた。
体を震わせ、振り返る。
そこには混乱の本、拓斗君だった。
「 あ、あれ…?まだ帰ってなかったの? 」
少し怯えた胸を撫で下ろし、楽譜を整える。
すると拓斗君が無言で私に近づいた。
なんだか少し焦っているようにも見えた。
「 あぁ…、実はさ 忘れ物しちゃってさぁ 」
冷や汗まで掻いている。
そんなにまずいものを忘れたのだろうか?
「 ふぅん…… 」
あまり興味を示してないように返答した。
彼は部室の机を探り、引き出しを開き始める。
そこには大量の楽譜が保管されていた。
「 ……ん? 」
すると一枚の楽譜に違和感を感じた。
それは今まで見たことのない、しかも手書きの楽譜だったから……。
それに大雑把に書いているような感じ…男子が書いた殴り書きのような。
だが彼は大事そうにそれを抱えて、安心している。
「 よかったぁ~… 」
肩に掛けている鞄に楽譜を仕舞い、チラリと私を見た。
その目はまるでまずい物を見られたかのような目だ。
「 …見ちゃいけなかった? 」
首を傾げて尋ねる。
「 い、いや別に 」
少し気まずそうに返答する。
「 ふぅん、そっか …じゃ 」
ギターケースと鞄を手に教室を出る。
すると追いかけるような足音が背後から聞こえた。
とても速いリズムだ。
「 なぁ、もう暗いしさ……
危ないから送るよ 」
少し目を泳がせながらそう言う。
私は何も違和感を感じず、
丁度合わせたい楽譜もあったから「うん」と返答した。
だが彼はまるで目的はそれじゃなかったかのように私に密着する。
横並びになり、肩と肩を合わせる。
さっきから肩と肩がぶつかり合っている。しかもわざとらしい。
何度も距離を離しているのに近づいてくる。
いい加減我慢の限界だ。
「 ちょっと!気づいてるでしょ!?何なの!? 」
眉を斜めに上げ、怒る。
すると彼は突然真剣な表情を見せた。
「 お前だって分かってるだろ 」
まるで私を試すような台詞。
私だってそこまで鈍くは無い。
ここまで言われれば先は見当がついた。
だが、私はこのまま知らない振りをしようと決めた。
「 知らない、何の話? 」
腕を組み、左に体重を掛ける。
それと同時に冷たい風に揺らされる茶色い巻き髪。
彼も同じように茶髪のクセッ毛が揺らされた。
「 …へえ、知らない振りするんだ 」
すねたように呟く。
「 だって本当に知らないもん 」
顔を澄まし、演じる。
「 じゃあ知らない振りできないようにするまでだよ 」
「 は? 」
目を丸くしてすまし顔も崩れた瞬間──、
もう遅かった。
私の体は彼の胸の中に包まれ、愛情が体中に染みこんだ。
何故だかその刹那、さっきの澄まし顔さえできなくなった……。
体を引き離されると、なぜか切ない気持ちになる。
「 ……これでも知らない振りできる? 」
ニッと笑う彼。
そして今気づく。
私は彼が好きなんだ、と……。
ずっと愛海ちゃんの件で振り回されたくないと思って隠していた。
彼への……、気持ち。
ずっとモヤモヤすると思っていた。
「 え、えっと 」
戸惑いながら、目を泳がす。
すると彼は鞄から先程の殴り書きの楽譜を見せた。
そこには『LOVE SONG』と書かれた歌詞が表されている。
これは一つの彼の気持ちなのだろうか。
「 君への気持ちだよ 」
そう微笑み、彼はギターを取り出す。
「 まさか、ここで歌うの? 」
少し困り気味で尋ねる。
「 まだ自信ないけどね 」
と言いながらもギターの調整をし、楽譜を広げる。
そして歌い始めた。
もちろん、周りの視線は痛いほど集まる。
だがそんなものは気にもならないほどいい歌詞で……
すごく心に染み渡った。
「 っ…… 」
つい涙が溢れる。
「 凪沙、俺とこれからもっと曲を奏でてくれませんか? 」
ギターを止め、尋ねる。
もちろん答えは決まっている。
「 ……はい 」
最高のLOVESONGをありがとう。
END
~あとがき~
最後のLOVESONGは皆さんのご想像にお任せしますw
皆さんはどんな曲を貰って凪沙がああなったと思いますか?
実際にある歌、自分で考えた歌を当てはめてみてください^^*
▽私はこんなサークルに所属しています。
http://www.nicotto.jp/user/circle/index?c_id=225976
「軽音部」「学園モノ」というキーワードはこのサークルから頂きました。
皆さんも私やそしてサークル仲間と一緒に小説を作ってみませんか?^^
お待ちしております。
そっか、よくなったようで安心した^^
遅くなってごめんね、今からなら大丈夫だよ^^
面白かったです!
今日はいったん、おやすみなさい*
良い夢を
拓斗君みたいにステキな人がいたらいいですね~^^
ひゃぁあああ...
こんなことされたら萌えて死にます(何
そんなそんなΣ
ほんまに本心ですからね( ・`ω・´)✨
なんかもう読むのがいつも楽しみです^^♡゛
では、サークルにお願いしますねb
では、いつもの場所で
でも、今日連絡が取れたのであれば、一安心ですね
いつも素敵な文章が書けて羨ましいなと思いながら
読ませていただいています^^
ありゃりゃ^^;
忙しかったんですかね
おお^^
なにもかも素晴らしいですb
こんな作品が書けるなんてね、すごいです
サークルでお題決めたとか、関係ありませんねb
学園物はやっぱりいいですよね~