恋の芽が出る頃に 【 第八章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/12/05 20:31:43
第八章 『 何かがおかしい 』
自分でもいいスタートを切れたなって思いながら教室に入る。
相変わらず教室はガヤガヤと賑やかだ。
そろそろグループもくっきりと仕切りが着いたかのように区切られてきた。
そんな中、私は今日も瑠衣と話していた。
「 ──でねっ、この前彼氏とさぁ~…… 」
細い指を口元に持っていきながら、満足気に話している瑠衣。
最近瑠衣には彼氏ができたらしく、ずっとその話ばかりしている。
「いや、前もそれ聞いた」という事はもう50回は繰り返しているくらいだ。
いい加減、区切りをつけて欲しいのだが───。
「 でねっ、でねっ…… 」
まだまだ続きそうだ。
窓から入ってくる隙間風を体に感じながら、溜息を風に乗せる。
少しピンクに染まったシャツが柔らかく風に揺らされる。
そんな時だった。
「 ……あっ 」
ジッと窓の外を見たときの事だ。
グラウンドに三本ほど並べられたゴールにボールを投げる彼の姿が。
思わず瑠衣の話はそっちのけで見入ってしまう。
ボンボンと何度もゴールを決めていく───。
その姿は他にゴールを決めている誰よりも格好良く見えた。
「 ──それでぇ、 …って聞いてる? 」
とうとう瑠衣にバレた。
「 あ、ごめん 聞いてるよ 」
笑顔で返す。
本当は聞いていなかった、というのに。
……そんなこんなで四時間の授業は終了。
今日は授業も上の空で、まったく話を聞いていなかった。
廊下をコツコツとローファーの音を鳴らして歩く。
お昼ごはんの時間なんだけど、美由がそそくさと教室出て行ってから
戻ってこない。いつも美由と食べてるから、美由を見つけない限りは食べれない。
そして、日差しを影で隠す……。
そんな瞬間だった。
「 グスッ……、うぅ…… 」
女の子の泣き声が聞えた。
幼い頃からいる友達だから、誰だかはすぐ分かった。
「 み、美由……? 」
慌てて泣き声のするほうへ駆けて行く。
そこは校庭の花壇だった───。
こんな人気の無いところで居るなんて、余程の事があったんだろうか。
私は眉を歪めながら、美由の隣に座った。
「 どうしたの? 」
背中を摩り、ゆっくり話してくれるように頼む。
だが美由は一向に口を開こうとしない。
いや、むしろ話さない方向へ促す───。
「 そういえばさ、夏芽ちゃん…!今からご飯じゃない? 」
鼻を真っ赤に染めながら、そんな陽気な事を言っている。
私でも分かる。美由が無理してること。
どうして昔から一緒に居るのに、話してくれないんだろう……。
私にも言えないことなんだったら、他にも言えないんじゃ………
「 夏芽ちゃん早く! 」
そんな顔じゃ戻れないって言うくらい顔は涙の跡がある。
やめてよ……、どうしてそんなに無理して笑うの?
私には……作り笑い見せないでよ……。
「 美由っ……! 」
教室に向かおうとする美由の細い腕を掴む。
途端に振り返った美由の頬に伝う涙はさっきより増していた。
呼吸だって、肩でするくらいになってしまっている。
「 ……まさか 」
勘付いてしまった。
「 アハハッ、気にしないで! 」
私が勘ぐったのを気づいたのか、美由は腕を振り払った。
「 ごめん、この顔じゃさすがに戻れないから先に食べてていいよ! 」
また作り笑いを浮かべてそう言った。
そして、私の応答さえ聞かずに走っていってしまった───。
こんな美由の姿を見るのは初めてだ。
なんというか……、いつもは素直に話してくれる。
というかむしろ私を頼ってくるのに。
……何かがおかしい。
少ししこりを感じながらも、これ以上追う事が出来ない私は立ち竦む。
恐らく今日はご飯を食べないことになるだろう……。
美由の泣き顔を頭に残しながら、溜息を零す。
そんな昼下がりだった。
何も分からぬままなってしまった放課後。
いつもは笑顔で「行ってらっしゃい」と美術部に見送るのに……
今日はあれから美由に避けられ、そそくさと美術部に駆けてしまった。
もしかしたら原因は私なのかもしれない。
あの時勘付いたことを巡らせながら、また一つ溜息を零した。
「 夏芽~ どうしたの? 」
後ろからヒョコッと出てきたのは瑠衣。
私は笑顔で「なんでもない」と返す。
そして新しく入部した瑠衣と共にバスケ部に向かった。
そんなバスケ部に向かっている廊下での事。
「 そういやさぁ~、今日美由の様子おかしかったくない? 」
突然口火を切った瑠衣。
私は驚いて慌てて彼女の顔を見、そして目を丸くする。
そんな私を見て彼女は事情を説明し始めた。
「 休み時間とかも教室に居たくなかったみたいだしさ。
何より授業中とか先生の話上の空だったじゃん? 」
そう言われてみれば、今日の様子はやっぱりおかしかったかもしれない。
朝は普通な感じだったのに。
どうしていきなりあんな風になってしまったのだろう。
いくら頭をめぐらせても分からない。もう迷路状態だ。
「 ……はあ 」
あ、また溜息だ……。
その溜息に、また溜息をつきたくなった。
いいスタートだと思っていたのに…どうしてだろう。
まあこういう日もあるか。
部活終わりでも美由に電話してみよう……。
そう頭で片付け、今日は部活に集中する事と決めた───。
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第八章 『 何かがおかしい 』 END
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~あとがき~
更新が遅れて申し訳ありませんでした。
テスト期間などがありまして、中々更新できませんでした。
読んでくれてる方、本当に申し訳ありませんでした。
……さて、今回の八章はようやく色々進めれた気がします。
瑠衣がバスケ部に加入したという情報も早く入れたかったのです^^;
ということで今回は部活仲間が増えたのですよ!
では、また更新日に^^
1章から読み始めたら止まらなくなりました(´`)*笑
美由ちゃん、何があったのかなぁ....??;
続きが気になります∩
あああ、心配ですねー