Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


初雪 【 短編小説 】

初雪 『 短編小説 』


純粋な白に染められた雪が、キラキラと地に降り注ぐ。
私はそれに手を伸ばして、掌に浴びせてみる───……。

そんな事をしながら待っていた、12月。

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本格的に寒くなってきた12月。
とうとう冬が来ちゃったな、と思う。
半そでだったのが、ついこの間のように感じる──。


もう……、冬なんだな。


「 ……はあ 」
つい零れてしまう溜め息。


それと共に時間の変化を更に分からせるように出た白い吐息。
かじかんだ手をポケットに突っ込みながらまた頭に色んな道を繰り広げる。


……12月と言えば、クリスマス。
クリスマスと言えば誰もが連想する、「恋人との時間」


そして、私は今それに悩まされている。


と、言うもの実は私は今好きな男子がいる。
別に私は目立つタイプでもないし、付き合うとかいう柄ではないけど……、
でもこれは興味本意とかではなく、私は真剣に彼と付き合いたいって思ってる。


こんな事、言ったら笑われちゃうんだろうけど。


「 ふぅ 」
そんな事言ってる場合じゃないだろ、と自分で突っ込む。


受験前だし、そりゃあこんなんしてる場合ではないって自分が一番知ってる。
でも、受験生でも恋しちゃうことだってあるから───……。


そんな言い訳を繰り返しながら、一人通学路を歩く。
すると後ろから激しい足音が聞えた。とてつもなく嫌な予感をさせながら……。


歩いていた足はピタリ、と止めて振り返る。
そこには予想通りの人物が立っていた。


「 沙雪ってば歩くの速すぎでしょーっ! 」
息を切らして私の前に立っているのは、小学校から同じの佐川結衣。
中々容姿は整ってて、スタイルも抜群なのだが……、ただ。


「 もぉー!ほんっとうに速すぎ!
      私が過呼吸になって死んだらどうすんの!?ねぇ、沙雪! 」

「 ……… 」


……ほんっとうに、うるさい。


時々、どう対応すればいいかわかんないときがある。
まあこれを抜いたらすっごく可愛くていい子なんだけど……。


「 ───って沙雪聞いてるの? 」
まるで幼児の顔を伺うかのように、眉を歪めて尋ねる結衣。


「 き、聞いてるよ 」
少し顔を引きつらせながら答える。


そんな私の顔を見た結衣は溜め息を零しながら腕を組んだ。
それと共に突然吹いた冷風───……。


「 沙雪、なんかあったね 」
まるで探偵にでもなったかのように尋ねる。


私は顔を強張らせながら、「なんで分かった」というような顔を浮かべる。
鋭い結衣は、土足で張り込むように私にグイグイ近づいて来た。


「 何があったの?話してみ 」


「 ……う 」
結衣の鋭い目つきと、そして言わなかったらどうなるか分からない危険を感じ、
私はしぶしぶと口を開いていった───……。


説明は至ってシンプル。
ただ、好きな男子にクリスマスまでに告白するかしないかの話だ。


だが、そういう話が好きな結衣は一瞬で食いついた。


「 ───えぇっ!?告白ぅ!? 」


「 シィーッ!聞えるでしょーがああぁ! 」
人差し指を口元に置き、「静かに」と合図を交わす。


だって結衣が大声で叫んだ場所は、ガッツリ皆が通っている通学路だからだ。
同じ制服を着用した生徒がゴロゴロと見えてきてるくらいの場所──。


「 あ、ごめんごめん…… 」
苦笑いで後頭部に手を当てる結衣。


そして、話を本題に戻す。


「 ……で、告白って本気なの? 」
今度はしっかりと小声で尋ねてきた。
私は極力声を出さないように、コクリと頷いた。


「 そっか、頑張って来いよ!! 」


「 グヘッ……! 」
バシッといういい音と共に背中に走る激痛。
でもなぜかそれは嫌な痛みに感じなかった……・。


いや、むしろ「ありがとう」と結衣に微笑んだくらいであった。
このおかげでなんだか気合入ったような気がしたから───……。


「 ……頑張るね、結衣 」
私に背を向けたとき、呟く──。それは私の決意票目でもあった。


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結衣、そして協力者によって場所は確保できた。
だが……、問題は台詞だ。


私は顎に触れながら考え込んだ。
すると、目の前にはキラキラと何かが輝く……。


「 ……雪? 」
疑うように手を伸ばすと、ヒンヤリとしたものが掌に落ちる。

今年初めての雪だ。

純粋な白に染められた雪が、キラキラと地に降り注ぐ。
私はそれに手を伸ばして、掌に浴びせてみる───……。

そんな事をしながら待っていたら、目の前には彼の影が。


「 ……あっ 」


とうとう来た瞬間だ。


「 どうしたの? 」


ちゃんと言わなくてはいけない…、瞬間。


「 え、えぇと… 話したいなぁって思ってさ…… 」
人差し指で頬を掻き、照れくささを隠す。


彼は不思議そうな顔で首を傾げ、私の隣にちょこんと座る───。
そして肩と肩があと少しでくっきそうな距離で……。


余計緊張が高まる。


「 あ、あの…… 」
こんな時に限って話題が出てこない。
彼の傾げた首が妙にプレッシャーを与えてくる……。


……そんな時だった。


「 冷たっ…! 」
頬にヒンヤリとした物が降り注ぐ。その正体は、勿論あの初雪だ。
彼は心配そうに「大丈夫?」と尋ねている。


そして、閃いた。


「 き、今日初雪だね! 」


「 あぁ、そういえばそうだねー 」


こじつけでもいい。


「 今日雪降って欲しいなって思ってたんだ 」


「 え?なんで? 」


笑われてもいい。


「 大事な……、日だから 」


「 ……? 」


全てを伝えるんだ。


「 ……実は、言いたい事があるの 」


「 何? 」


あの日から始まった君との恋を始まらせるために───、


「 私、あなたの事が…… 」


言え、言え、言え……!!!!!!



「 ……大好きです 付き合ってください 」


「 えっ…? 」


言ってしまった。言っちゃった。
思わず顔を伏せ、目をギュッ……と閉じる。


そして数秒の沈黙を抜け、顔を上げると彼の顔は真っ赤になっていた。


「 …あ、あの 」


「 あ、えと…返事だよね 」


「 はい…… 」


「 それはもちろん…… 」
彼の口角は上がって行き、笑顔に包まれる───。
そして、ポケットに突っ込んでいたカイロを私の手の上に置いた。


「 こ、これは……? 」
首をかしげて尋ねる。


すると彼はギュッとカイロを握らせて言った。


「 僕はこのカイロみたいに、君を温かく包み込んでいたい…… 」


「 えっ…、それって… 」


「 …僕も君が好きだ 」


「 ………! 」
私はその後、何も言えなくなった。
そして彼は本当に何もかも包み込むような温かい手で頭を撫でてくれた。


そして、初雪をも溶かすくらいの体温に包まれたのだった。
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END
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2013/12/03 18:48
ステキなお話ですね*
ロマンチックで♡

現実にもこういう人が現れたらいいんですけどね笑



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