Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第六章 】

第六章 『 零れたもの 』



バスケットボールを握る彼の背後に立つ私。
彼の背中からはシャンプーの匂いが穂のかに香る……。


めっちゃくちゃドキドキするんですけど……。


「 次、君の番だよ 」


「 あ、うんっ 」
ドキドキを必死に押さえ、ボールをゴールに目掛けて投げる。


やはりコントロール力は自信があるだけある。
ボールはまっすぐゴールへ向かってしっかりと役目を果たしてくれた。


それを見た彼は笑顔で拍手してくれた。
そんな笑顔にまた胸を躍らせる。


「 ……あ、ありがとう 」
少し照れながらも彼の拍手に応える。


次第に彼の拍手は止み、またボールを手に取った。
ゴールを決める姿勢…、私が見入ったあのゴールの姿勢だ。
ボールを優しく持ち上げるように持つ大きな両手……。


でもどこか繊細で……。
温かささえ感じさせてくれるような……そんなゴール。


ボールが入った音が講堂に響き渡る。
それと同時に私は我に返った。


彼は振り返り、笑顔で私に言った。


「 へへっ、ナイスシュートでしょっ? 」
満面の笑みだった───。


その笑みはまるで、無邪気な少年のようで……。
そして自ら輝きを放つ太陽のようだった。


また私の心を大きく揺らす。
自分の気持ちに気づいた今だからこそ、振動も大きい。


だが、彼はそんな気持ちには気づくはずもなく私にボールを差し出す。
勿論、あの無邪気な少年のような笑顔で……だ。


震えた手を抑えつつ、ボールを受け取り、シュートする。


「 ……あっ 」
つい出てしまった声。

シュート決めたボールは私の声と共にゴールから外れて行った。
背後から感じる視線。振り返るのが少し怖くなった……。


……彼にどう思われただろう。
「バスケできない女なんて消えろ」って言われる?


心と体を震わせながらも、ゆっくり体を後ろへ振り向かせる──……。
だが、彼の表情は予想外のものだった。


「 ドンマイドンマイッ! 」
また、あの無邪気な少年の笑顔……。


私が外したボールを拾いながら、励ましてくれた。
思わず涙腺が刺激される。


首に掛けたタオルで必死に目を覆い、鼻を音を立てず啜る。
そして、また彼のシュートを目にする番だ。


こんな事を繰り返し、先輩が来るまで私は幸せな時間を過ごしたのだった……。



……そして、部活終了後。


「 あぁ、疲れたぁ~…… 」
汗を拭きながら、帰り道の廊下を歩く。


窓の外を見ると、外はもう真っ暗。
街頭と月が光を照らしてるだけで、他は黒に包まれてる。


やはり部活をしてたら時間がなくなるな……。


改めて痛快した。


そして、ようやくの思いで門の外へ……。
窓越しではなく、直接見る外はやっぱり暗くて怖い。
こんな時に限って昔見たホラー映画や事件が頭に浮かぶ。


そういえばこの辺りで不審者出たとか言ってたな……。
ヤダ、どうしよう……。なんか怖くって進めないな……。


足が怖くて竦むなんて柄にも合わない。
こんなとこ誰かに見られる前にさっさと帰ろう……


そう思い、足を一歩進めた瞬間───


……ゴロゴロゴッ!


「 うわあっ……! 」
つい耳を両手で覆ってしまうほどの大きい音が鳴り響く。


正体は雷。今更今日天気予報で『雷に要注意』と言ってたのを思い出す。
今私の頭の中は恐怖で支配されてしまった……。


ついにプライドを捨てて、その場に本当に立ち竦んでしまった。
私らしくないと思いながらも足はやはり進まないのだ。


ヤダヤダ、最悪。もう何なの……


また溜め息。今日何度目かもう分からないくらいしてる。


そんな時だった───、


「 あれっ?今野……? 」


「 ………! 」
振り向けばそこに立っていたのは、坂谷君だった。


立ち竦んでいた足は気づけば彼のほうへ駆けて行っていた。
さっきの恐怖は嘘のように解けて行った。


「 坂谷君……!な、何で……? 」
尋ねると、彼は笑顔で答える。


「 何でって…、男バス今終わったんだよ 」


「 ……あ、あぁ 」
そうだったんだと胸を撫でる。


とにもかくにも彼が居てくれてよかった……。
このまま途中まで一緒に……!


「 あっれー?勇 もう彼女できちゃった系? 」


………は?


「 えー!早くね!? お前、いい加減にしろよー! 」


………え?え?


「 ……え、えぇと 」
彼の背後を見ると、そこには沢山の男子が居た。


もう見るだけで察しが着く。男バスの奴らだな………。
皆別々に帰るとかできなかったのー……?


ここでまた溜め息が零れる。
私は諦め、背を向けて歩いていった。


すると次の瞬間、腕に違和感を感じた。
何かギュッ……と捕まれたようなそんな違和感。


まさかと振り返ると、やっぱりだった。


「 待てよ今野 もう暗いし、一緒に帰ろうぜ 」
そう笑顔でまた魅了しながら誘ってくる。


そして背後からもなにか声が飛び交っている。


「 そーだよ!一緒に帰ろう~ 」


「 ……は、はい。 」
少し顔を引きつらせながらも答える。


すると男子はコソコソと何か話し始めた──。
薄っすら聞える単語は「彼女」と「交際」であった。


私は呆れながら先頭に立ち、歩いていった………。
私の横には、坂谷君。


後ろの男子は少しうるさいけど………、
今日は史上最高に幸せな日だな……。


今、零れたのは溜め息ではく
”笑み”であった。


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第六章 『零れたもの』
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~あとがき~
第六章いかがでしたか?
弱音を沢山吐きつつも頑張っています(´▽`;
やはりまだまだ弱輩者なので退屈させる小説です。
ですが日々精進致しますので温かい目で見守ってください!

ではまた更新日に\(´▽`*

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2013/11/27 17:00
好きな人と一緒にスポーツとか、一緒に帰ったりするのって女子の理想ですよね~
すっごいドキドキしました

続き気になります!



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