恋の芽が出る頃に 【 第五章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/25 21:47:11
第五章 『 恋の芽が出る頃 』
頭について離れない彼の名前、『 坂谷勇 』
髪は茶髪のクセッ毛で、まるで犬のような男子。
でも、決して恐持てな訳ではない。
窓の外で友と楽しそうに会話する彼の姿が目に映る──。
別に好きとかそういうのではないけど…、何故か目に付いてしまう。
……別に好きじゃないけど。
「 夏芽ちゃん。早く教室入ろうよ。 」
美由が教室を指差し、そう言った。
私はコクリと頷き彼を見ながらも教室に入っていった。
教室の中は初日だと言うのにワイワイガヤガヤと賑やか。
もうグループが固まってるところだってある。
私も早くグループを見つけなくちゃいけないな……。
そんな事を思いながら、席に着く。
席は出席番号順だから美由とは一旦お別れ。
ここでは、あの入学式で友達になれた『 今田瑠衣 』が居る。
丁度、私の後ろの席だ。
後ろからトントンと叩かれるような違和感を感じ、振り向いた。
振り向けば見えたのは瑠衣のニヤついた表情だった。
「 これからよろしくねっ! 」
手を差しだし、握手を求めている。
私はそれを応えるようにしっかりと手を握った。
そして、白い八重歯をヒョッコリ出した。
すると、瑠衣はニコッと笑って言った。
「 八重歯、可愛いね~ 」
「 ……えぇっ? 」
コンプレックスでもあった八重歯を褒められ、少しテンションが上がる。
両手で顔を覆い、トマトのように赤くなった顔を隠した。
それを見ながら「ハハハッ」と笑う瑠衣を私は指の隙間から見ていた。
瑠衣は可愛らしくて、気さくな子だ。
これからも仲良くして行きたいなって思える子……。
なんて思った矢先、彼女はニヤッとした表情に変えて口火を切った。
「 ノートとかも見せてね! 」
それが目的かいっ……!
と、心でツッコミながらもどこかでは瑠衣らしいと思っている。
私はその場で何も言わず言葉を飲みこみ、笑顔で答えた。
そして数分後、先生が入ってきて初回授業は開始された───。
6時間という物はあっという間に過ぎてしまうもの。
授業が終了すれば私は部活に直行──。
もちろん、美術部に所属した美由もそれは同じだった。
美由は好きな人に会えるからと言って、いつも走らないというのに
今回は「そんなに走れるのか」と驚いたくらい駆け足で美術室へ向かった。
そんな美由の背中を見つめ、振る片手を寂しげに見つめながらため息を零す。
私もバスケ部へ行こうと行動へ足を進めて行った……。
バスケのため、バスケ部に行くはずなのに……。
頭にはあの男子の事が頭から離れない。
これじゃあまるでバスケしにいくんじゃなくって………、
彼に会いに行ってるみたいじゃん……。
「 ……… 」
自分の心で思ってる事なのに、何故かその瞬間赤面する。
肩に掛けたスポーツバッグを握り締め、また溜め息。
別に好きとか一目惚れとかそんなんじゃないし、
しかも私の柄には合わない……。
…それに。
今更恋なんて……さ。
「 はあああ…… 」
今度は今まで以上に深い深いため息を零した。
オレンジ色に染まる夕焼けの廊下。
ローファーの鋭い音が静かな人気のない廊下に鳴り響く。
薄っすら閉じた瞼に差し込むオレンジ色がどこか寂しさを感じさせる。
窓の隙間から吹く隙間風が私の短い髪を靡かせる。
こんなんじゃいかんと思い、両手で頬をパンッ!と叩く。
今後は彼の事考えず、バスケ”だけ!”に専念しなくては……。
気合を入れなおしスポーツバックを背負いなおし、再び歩き始めた。
ローファーの寂しそうな音は今だに私の耳を突き刺すように鳴り響いていた。
講堂の前に着くと、もうすでにバッシュの音は鳴り響いていた───。
だが音は多数ではない……。恐る恐る扉を開けた。
「 ……っ! 」
驚いて声も出なかった。
扉の先に居たのは、忘れると決めた彼の姿だったから……。
切り替えたいと思った矢先にこんな事になるとは思ってもみなかった。
また深いため息が零れる。
だが、そんな事しながらも私の目はもう彼の虜だった。
シュートの仕方、ボールの握り方、ドリブル……。
そして、振り返る彼の…姿。
もうこの時から…、いや、本当は最初から気づいてたのかもしれない。
私にとって、目の前に立つ彼の存在の大きさを……。
「 ……あれっ、君。どうかしたの? 」
タオルで汗を拭きながら駆け寄ってくる彼。
私はまだボケーッとしたまま、バッグを抱えて立ち竦んでいた。
そんな私を不思議そうに見つめ、首を傾げながらチラリとスポーツバックを見た。
「 ……バスケ部の子? 」
「 へっ、あっ、は……はい。 」
知らぬ間に敬語になり、体も縮こまっている。
そんな姿を見て彼は「アハハッ」と笑った。
「 そんな怖がらなくても大丈夫だって!俺の名前は坂谷勇! 」
「 坂谷…勇… 」
ずっとずっと話したかった…。いつも見てた。
本当はバスケのフォームとか決め方とかそんな問題じゃなかった。
「 えぇと、とりあえず…君の名前教えてもらっていい? 」
「 ……今野…夏芽です。 」
「 今野夏芽…か。いかにもスポーツできそーな名前だなっ! 」
彼はそうニコッと微笑んだ。その笑顔にまた魅了される。
それを必死に返そうと笑顔を返す。
きっとその時無理矢理感が出てたのだろう。
彼は「アハハッ」とまた笑って言った。
「 そんな畏まらなくていいのに~。じゃ、バスケやろうか。まだ先輩来てないし。
丁度俺も一人で退屈してたんだ。よかったら一緒にやろうよっ! 」
「 え、あ、うん……! 」
まだガチガチに緊張しながらも、準備に掛かる。
私は彼のバスケに魅了されてたんじゃない。
「 早く早く~! 」
手招きする彼の笑顔を見て、思う。
私は彼の全てに、恋してしまっていたんだ……と。
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第五章 『 恋の芽が出る頃 』
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~あとがき~
皆さんどうでしたでしょうかっ?
第五章…、いよいよ恋が始まりましたね。
夏芽の恋を見守りながら楽しんでくださいませ!
では、また更新日に!
私もスランプ気味でなかなか更新が進みませんが
が、頑張ります笑
主人公の気持ちもしっかりと伝わってきて
すごく良い感じです。また来ますね!
小説とっても面白かったです^^♪
例えば
「とても、嬉しかった。」 → 「とても、嬉しかった」
のように、「」内の最後の点をつけない方が
良いということだったのですが……すみません説明不足で;;
思わずニヤニヤしてしまいました笑
夏芽ちゃんの恋の行方も気になるけど、
何気に美由ちゃんの方も気になりますね!
最後に「~でした。」など「。」をつけない方が良いらしいです。
蛇足失礼しました(*´▽`*)
面白いです!バスケ少女とバスケ少年の恋とかめっちゃ爽やかでもう楽しみすぎます!
aichaさんの小説は普通に面白いと思います、好きです!
これからも頑張ってください ^-^