Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


恋の芽が出る頃に 【 第三章 】

第三章 『 恋の芽生え 』


後悔の波に飲まれながら、辿りついた先は綺麗に輝く講堂。
外に居ても、かの有名なバスケチームのバッシュが擂れる音が聞える。
キュッキュッ……、と。この音の懐かしさに私は包まれ、自然と足が前に進む。

恐る恐る講堂の扉を開けると、一斉に先輩達はこちらを見た。
突然の視線に戸惑いながらも足を前に進め、軽く一礼した。
すると、先輩は目をキラキラと輝かせて私に駆け寄ってきた。

「 1年生だよね!?こんにちは! 」

「 ……こ、こんにちは。 」

先輩の威圧感に負けながらも、返答はきちんと返す。
先輩は皆綺麗で細い人達ばかり。さすがだなって思う…。
そんな先輩の細い指は私の腕をガッシリと掴んで、コートへと連れた。
ボールを握って、先輩が私に渡す。

「 新入部員希望でしょ?だったらテストしなくちゃ。 」

ニッと笑いながら、年季の入ったバスケットボールを私に差し出し、握らす。
先輩は長い指でゴールを差して、「あそこに入れたら合格」と説明してくれた。
心の中で「何この簡単なテスト」と呆れながらも私は真面目にゴールに目掛けて投げた。

ヒュッ…、と手を擦るボールの音が講堂に響く。
ボールを目で追いかけていると、すぐにゴールへと突っ込んだ。
役目を終えたボールが床に勢いよく落ちて跳ね上がる……。

一発でゴールを決めた私を丸い目で見る先輩達。
私は首を傾げ、先輩達に笑顔で尋ねた。

「 ……合格ですか? 」

先輩達は体をビクッと動かし、顔を見合わせた。
だが驚いてる中、一人の先輩だけ立派に凛と立っていた。
細くて大きな掌でパンパンッ!と大きな音を講堂に響かせ、拍手する…。
この人がすぐに誰だか私には分かった─……・。

バッシュの音を鳴らしながら、こちらへ一歩ずつ近づいてくる。
私はその姿をひたすら見つめながら、待った……。
そして、手を伸ばせば届く距離になった所で足を止めた。

「 ……バスケ、上手いのね。 」

誰よりも出来るオーラを放っている黒髪の一つ結びの先輩。
結ばれる余りの髪を見る限り、短髪のようだ。
細い腕、焼けた肌。それは口で言わなくても分かるオーラを放っている。

「 私の名前は徳井沙紀。このバスケ部のキャプテンをしてるわ。 」

それを聞いた私は、やっぱりなと頷いた。

「 私は今野夏芽と申します。宜しくお願いします。 」

「 まあ、礼儀正しい一年生でよかったわ……。 」

徳井先輩はそう言って、嬉しそうに笑った。
クスッという笑い方が上品で、やっぱり別格だなと思う…。
次第に他の先輩も口を開き始めて来た。

「 徳井先輩、あの子達はどーします? 」

そう言った一人の先輩の先には、バテて疲れきった女子生徒の姿が。
恐らく、新入部員として志望しに来たが、テストに合格できなかった人達だろう。
ついつい見てて優越感が出てしまう意地悪な自分が出た。

その気分を改め直すように徳井先輩に向かい、尋ねた。

「 私は合格でしょうか……? 」

その質問に先輩は笑顔で答えてくれた。

「 当たり前でしょ! 」

「 やったぁっ……! 」

思い切りガッツポーズをし、嬉しさのあまりボールを手にとりゴールを決めた。
そしてまた先輩達に拍手されて褒められる……。

また学校でバスケに没頭できると思うだけで幸せだし、しかもこの有名チームで…。
もう私の高校生活には花が咲き始めていた……。

「 ……ん? 」

チラッと見たその横には、男子のバスケが見えた。
もう新入部員も入っており、皆揃いに揃ってゴールを決めて練習中。
その中、一人だけズバ抜けてゴールを決めまくっている一年生が目立った。

茶髪で、クセッ毛の短髪……。なんか犬みたい。
顔は優しそうだけど、ゴール決める時の目は鋭いな。
バスケの基本体勢もまったく文句ないくらいできてる……。
初心者じゃない事はすぐに分かった。

……と、いうか思わず見入ってしまっていた。
何故か彼の名前が少し気になった。

「 じゃあ新入生…、というか夏芽ちゃんしかいないけど。
 早速練習始めちゃおうか!  ……って言っても私達より上手いけど。 」

そう言って、また年季の入ったバスケットボールを私に差し出した。
私は家から持ち出したこれまた年季の入ったバッシュを取り出し、履く。
周りの先輩には「本格的だね」と褒められたくらい年季が入っている……。
このバッシュが一番履き心地が良くて、シュートも決めやすいのだ。
買い換える気は一切ない。

「 はーい、じゃゴール決めてねぇ。 」

「 はい! 」

言われた通り、ゴールをバシバシ決めて行った。
周りの先輩が息切れした頃でも私はシュートを決めまくっていた。
久々のバスケで心が弾けてしまっているのだ。

やっぱりバスケは良いものだ。
改めてそう感じさせてくれた日だった……。


そしてようやく休憩に入り、タオルを首に掛けて講堂の壁に靠れかかる。
ようやく一息着いた私は落ち着いた体勢で男子のバスケを見つめていた。
その視線の先にいるのは勿論、さっきの男子だ。

やっぱり上手い。姿勢も完璧。
何度も再確認するが、上手さは変わらない。
水を体に注ぎ込みながら、見入ってしまうほど……。

「 おーい。坂谷ー! 」

「 あ、はーい。 」

彼は「坂谷」と呼ばれて先輩のほうへと駆けつけていった……。
そこで私は飲み口を口に当てながら、心で呟いた。

( 坂谷って……、言うんだ。 )

どうでもいい事のはずなのになぜか凄く気になっていた。
上の名前を知れば、次は下の名前が知りたくなってしまう。

別に好きとかそういうのんじゃないんだろうけど……。
彼の事、少しだけ気になるな。

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第三章 『恋の芽生え』 END

↓~あとがき~
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第三章、お楽しみ頂けたでしょうか(´▽`*
高校生の甘酸っぱい青春物語を書くのはやはり楽しい……!
これからも短編などでバシバシ書いていきたいなって思います。
リクエスト等あればどんどん言ってくださいませ。

今回もご拝見ありがとうございました。
ほんの独り言のような微かなアドバイスや感想でも良いので、
どうか、コメントを残して帰ってくださいませm(_ _)m

では、また更新日にお会い致しましょう(^▽^*

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2014/02/24 18:08
三話まで拝読しましたが中間感想残させていただきます。
うーん、どのラインからシュートしたのかがわからないと、夏目ちゃんのすごさが伝わりません……。
ハーフコートのフリースローラインなら運動音痴の私でもバテる前には入ってしまいますし、
まさか全面コートの反対側から反対側まで……は黒子のバスケの読み過ぎですね(笑)
ハーフコートのハーフラインぐらいでしょうか?



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