ストロベリーラブ 【 第77章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/18 14:53:50
第七十七章 『 香理奈の思惑 』
<<香理奈side>>
それはついさっきの話。
苺華の家から出て行き、そのまま宮木君と居た時の事。
私の目の前には一人の男が現れた。名前は、英雄と言われてる桐崎君。
だが、私はソイツが好きではない。だって一輝君をあんな目に...。
苺華の事だって、あんな事になるまで苦しめている。
いくら有名人だからって、許せる事と許せない事があるんだから。
目の前に現れた桐崎君を睨み、口を開く。
「 何か用でも...? 」
きっと冷たかっただろう。自分でも分かるくらいだ。
私、こんな声のトーン低くできたんだと発見できるくらい。
だが、桐崎君は顔色一つ変えずニヤついている。
「 へぇ、気強いんだね。アンタ。 」
まるで人を馬鹿にしたような言葉だった。
斜め上に上がった口角が、妙に私の勘に触る。
このままではいけない。
私の無駄な正義感がまた出しゃばった。
「 ....宮木君、ちょっと私行くわ。 」
「 ハ、ハァ....? 」
そう言って、桐崎君の腕を掴んで私は駆け出した。
何も理解できていない宮木君を置いたまま。
きっと、宮木君はこう言っただろう。
「 意味わかんねぇ。 」
************
全て上手く行かせるためには誰かが傷付かなきゃいけない。
しかも、それは浅はかな傷ではなく、深く抉られるような痛みだ。
恋をすれば誰かがどこかで悲しんでる。それをわかってないと駄目だ。
「 ....で、苺華の事諦めてください。 」
「 何で? 諦める必要ないじゃん。 」
人気の少ない公園、ただ遊具がポツンと並び、ブランコが妙に目立っている。
私達はブランコに腰を落とし、話していた。もちろん、あの話だ。
頑固なのか、なかなか話を聞いてくれない桐崎君。いい加減苛立ちを覚える。
”諦める必要ない”なんて言葉はもう私の中で論外中の論外だった。
「 諦めなきゃおかしいでしょ? 苺華には一輝君がいる。 」
「 奪えばいいじゃん。実際、アイツは俺に少し気が行ってるね。 」
聞いて呆れた。コイツはどこまで馬鹿なのかと思った。
本気で一輝君の事好きな苺華が、まさかアンタの事好きになるわけが...と。
キスをした件では疑ったが、その誤解だってもう私の中では解けている。
問題は、無理矢理奪ったこいつだ。
”貰えないなら奪えりゃいい”というこいつの法則を聞いていれば、
苺華を疑う余地など、なかったのに。
私は額を押さえ、ため息を零して言った。
「 あのね、奪ったら苺華が不幸になっちゃうでしょ...? 」
まるで小さな幼児に教えるかのように、説明した。
だが、次に返って来たのは驚きの言葉。
ムスッとした顔で、私に怒鳴った。
「 だから、俺が幸せにするんだよっ!!!!!! 」
「 ....!? 」
信じられなかった、というかもう信じたくなかった─。
こんなチャラ男で人気者の彼が、馬路顔で女性を幸せにしたいと言うなんて。
滅多にある事じゃないからこそ怖い。本気という精神は痛いほど伝わった。
なんで、苺華なの。なんでよりによって、苺華...。
苺華じゃなかったら私はこんな苦しまなくてよかったのに。
苺華じゃなかったら私は今頃宮木君と笑い合えてたのに....。
最悪。
「 ....じゃあ、諦めるまで私は諦めない。 」
「 ....無理だな、それは。 」
「 何で? 」
眉を歪めて尋ねると、彼は綺麗な顔で言った。
「 俺、永遠に好きだから。 」
「 ...... 」
何も言えなくなった。彼の微笑む姿を見てると言葉も出ない。
いや、むしろ罪悪感さえ生まれてきたくらいだ。
本気の人に向かって、諦めろと連呼してた自分が恥ずかしい....。
もう、無理なのか....?
誰か他の女性を連れてきて....、
......ん?
( 閃いた.... )
「 ね、じゃあ一つ提案。 」
「 んぁ? 」
「 今日、夕飯はうちで食べて行って。いいでしょ。 」
「 ....い、いいけど。 」
「 よっしゃあ!!! 」
私は閃いちゃった。皆にとって一番いい方法を...。
思わず顔がニヤけ、自分を褒めてしまうくらいの事だ。
**************
ガチャ....
その後、すぐに家に向かった。
夕飯の買い物はすぐに済ませたのだ。
「 じゃ、上がって? 私は支度するから...。上に居て? 」
「 ....お、おう。 」
私はニヤニヤとニヤつきながら、上に上がっていく彼を見守った。
さて、ここからは桐崎君の問題ですよー。(笑)
***************
<<桐崎side>>
やけに優しくなった長谷川に違和感を感じつつも、俺は言われた通り向かう。
そこには一つの茶色いドアが。看板には客間と書かれてある。
客間で待たされるのは普通だろう、と何も違和感を感じず、ドアノブを捻った。
キィ.....
「 ....ん? 」
ドアの隙間から何故かすごくいい匂いがした。
花の香り...、バラか? 誘惑するかのような香りだ─。
俺は誘われるかのように、引き寄せられるかのように、部屋に入った。
すると、
「 う....え....? 」
そこには一人の少女が寝ている姿があった。
無防備すぎる、男が来る客間で寝ているとは....。
タンクトップに短パンとか、余計無防備すぎるだろ、この子...。
見てるこっちが恥ずかしくなるから、自分のブレザーを掛けてやった。
何故か、ドキッとした自分が居たのも事実だ。
まさか長谷川...、分かっててここに連れ込んだのか?
畜生、アイツだったらやりそうだな。
「 うぅん.... 」
「 ....お。 」
少女は目を覚ました。そして、目と目が合う。
「 ....え。 」
「 え。 」
数秒間の沈黙はあったんだ。...だが、それもつかの間。
「 イッヤアアアアアアアアッ!!!!! 」
「 ああああ、何もしてないから落ち着けー!!!! 」
俺は一瞬で長谷川を恨んだ。
続く。
かりなちゃん頭イイですねww