ストロベリーラブ 【 第75章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/09 23:02:49
第七十五章 『 大事な人...? 』
「 ...ここが病院かぁ 」
大きな総合病院を見上げながら、口を開けて唖然としている。
本当にこの地域にあまり来たことがないのだろうか...。
彼女はニコッと笑ったまま、ヒラヒラと手を振ってありがと、と言った。
「 あ、はい。 」
俺は浅く一礼をし、振り返って帰って行った...。
彼女も俺も、一度も振り向かず...。
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<<琴美side>>
案内をしてもらった私は、一度も振り返らず必死に病院内へ駆けていった。
中には私の大事な人が待っている...私の大事な人が...。
駆け足で受付に行き、受け付け嬢に声を掛ける。
「 すみません、ここに”蒼井竜馬”という人が入院してると思うんですけど... 」
「 蒼井さんですか...?ええ、確かに入院していますけど... 」
「 どこの病室ですか!? 」
「 え、えと...505号室です。 」
「 ありがとう...! 」
私は慌ててその病室へと向かった。早く行かなきゃ、早く会わなきゃいけない。
蒼井竜馬に...、会わなきゃいけない...!!
私はゼェゼェと息を切らしながら、病室に着いた。
勢いよくドアをスライドさせ、扉を開ける─...。
その先には、ベッドに足を吊るされた蒼井竜馬の姿が見えた。
「 竜馬... 」
「 琴...美...? 」
やっと会えた。大事な人。
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<<苺華side>>
キスを拒まれた...。それがショックで仕方がない。
頭をクシャクシャと掻き毟り、はあ、とため息を零す。
視界は真っ暗、闇に染められている。布団に包まり、目を瞑る。
まるで真っ暗闇の森の迷宮に連れ込まれたような気分だ─....。
「 うぅぅぅう.... 」
うめき声を上げながら、体を震わす。
気づけばベッドのシーツが濡れているくらいになっていた。
悪いのは私、全部分かってる。
でも...、私だってしたくてした訳じゃないし...。
ううん、こんなのただの言い訳にしか...聞えないに決まってる。
だから「信じる」って言った一輝も私にキスができなかったんだ。
信じられないのは...当たり前なんだから...。
そんな甘ったれた事言ってると、一輝に悪いよね...。
でもやっぱり、蘇るのはあのキスを拒んだ時の一輝の顔と体。
今でも思い出すだけで、体が硬直する...。
微かに聞えたような気がする、”ピタッ”という音を鳴らして...。
「 うぅっ....! 」
やばい、吐き気がしてきた...。
私は慌ててトイレに駆け込み、吐く。
まさかストレス?胃腸炎...?
....私、最低だ。
こんなんじゃ自分が悲劇のヒロインみたいじゃん。
必死に吐き気を抑えながら、口に手を当て、気分を落ち着かせる。
「 ハァ...ハァ...ハァ...ハァ.... 」
やばい、息が....
─バタッ。
一輝....私は、もう...この世に居ないほうがいいのかもしれないね。
※続く。