アリスサークル小説。【短編】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/07 20:46:07
# - 殺人鬼と泣き虫の時計屋。
殺人をはじめたのは、ただ失恋したからなんて理由じゃない。
目の前で愛する人を奪われて、ふと思ったんだ。
あいつらを斬ったら、どんな色の血が出るかなって。
――殺せ、とキコエた。
熱に浮かされたように茹だった頭の中に響く声。
手にした剣を振るえば、ぶばっと真っ赤な飛沫が四散した。
綺麗だ、と思った。
――殺セ、トきこえタ。
コノ世ノ何モカモ、オ前カラ愛スル者ヲ奪ウ全テヲ、殺シ尽クセ。
視界が真っ赤に染まるほどに、灼けるような衝動が胸を貫く。
骨を断ち、肉を裂く感触に腕が痺れ、その重さに愛おしささえ覚えた。
耳障りな悲鳴に憎しみが満たされる。
ぞくぞくと背筋を這い上がった快感は、今までに感じたこともないような興奮。
――サア、殺セ、オ前ノ欲望ヲ満タスマデ――
「……ぅ……あ……ッ」
そうだ。殺そう――殺せば、殺セバイインダ。
消えろ。消えてなくなれ。
俺の前から消えてしまえ。
〝――返セ、俺ノ、****。〟
「うおああああぁぁあぁああああああああああああ――――ッッ!!」
*
『 ねぇ、クロウ 』
――――ん?
『 いつか私が何もかも忘れちゃっても、クロウは傍に居てくれる? 』
――当たり前だろ。忘れちまったら何度だって呼んでやるし、頼まれたって離れない。
それに、俺のことだって忘れたなんて言わせねぇ。
『 ……うん 』
彼女との約束。
戻れない日々。
優しくて暖かかったあの時間。
俺はそれを取り戻したかったわけでも、縋っていたわけでもなくて。
ただ、復讐を願ったのだ。
俺から彼女を奪った全てに、災いを。
――あの日から。
敵は、どれだけ討てただろう。
いつしか無差別な殺人になっていた復讐劇。
自分が何をしているのかわからなくなっても。
――終ワらせルモノカ。
許さない。許さナい。許サナイ。
死んでも俺は諦めるものか。
この思いが、憎しみが、永遠に残ればいい。
堆積したこの願いがたくさんの人々を渡って膨れ上がり、いつか形になって、何度でも蘇るように。
〝殺人鬼クロウ〟の名を、誰にも忘れさせはしない。
あの恐怖を。あの忌名を。
――――もう少しで、終わるはずなんだ。
あいつらを根絶やしにする。
何年かかっても、子孫まで、先祖まで、一族全員を、その血を引くものすべてを許さない。
殺してやる。
*
「……、あ」
ふと、目が覚めた。
夢、だったのだろうか。
窓際に目をやれば、既に夕刻。
眩しい西日が部屋を照らしていた。
夜型ゆえ朝方から眠っていたのだが、また夢を見ていたらしい。
しかも、見る夢はいつも決まっている。
だれかの記憶のような、鮮やかで生臭く、優しい夢。
「おはようございます。マル様、どうかなされたんですか?」
夕日を背に、窓辺に腰掛けていたセシリーがそっと問うてくる。
マルファスは首を横に振った。
「何でもありませんよ」
セシリーはまだ不安そうな顔をしていたが、無視して寝巻きから普段着に着替えを済ませた。
身支度を整え、鏡で姿を確認する。
……そうだ。
今日は、アレを着ていこう。
「マル様?今日はどちらへ――」
上質なベルベットの羽織り。これは城に出向き、国王陛下と謁見する時にしか身につけないものだ。
普段はクローゼットの奥で眠りについているそれをわざわざ起こした。
「街へ行きます」
「ッ!」
サラリと答えると、セシリーは目に見えて顔色を変えた。
理由は、知らない。
けれど本当は知っているのだろう。
だがもう決めた。
なんとなく、呼ばれた気がして。
己の身に内に潜む、別の誰か――夢を見せる――に。
全身がざわめく。得体の知れない衝動が待ちきれないといわんばかりに胸を灼いた。
「夜明けには帰ります。それまで〝血〟はお預けですよ」
セシリーの制止の声が聞こえたが、既にマルファスは窓から飛び降りていた。
真っ黒な翼を広げて。
*****
新キャラのための伏線~☆⌒(>。≪)
凄い勝手にセシリーちゃん妄想しちゃってごめんなさいわばばばば……
ちなみに別の新キャラについては明日あげます。
結構気に入った。
そこまでわかってるなら自分を信じるのさ!!
マルファスが二代目クロウ=夢は彼のもの
殺人に出向くのは、それが理由なのです
すみまそん(´・ω・`)
ありがとね!
えっと、確かマルクさんは二代目クロウなのだったっけ、それ関係か!!
一代目の夢を○様が見てる、とか?
むむむむわからへん
いえいえ、むしろ使っちゃってください
うちの子なら自由に使っていただいて結構です!!