Nicotto Town


小説日記。


アリスサークル小説。【短編】




# - 殺人鬼と泣き虫の時計屋。



 殺人をはじめたのは、ただ失恋したからなんて理由じゃない。
 目の前で愛する人を奪われて、ふと思ったんだ。
 あいつらを斬ったら、どんな色の血が出るかなって。

 ――殺せ、とキコエた。

 熱に浮かされたように茹だった頭の中に響く声。
 手にした剣を振るえば、ぶばっと真っ赤な飛沫が四散した。
 綺麗だ、と思った。

 ――殺セ、トきこえタ。
     コノ世ノ何モカモ、オ前カラ愛スル者ヲ奪ウ全テヲ、殺シ尽クセ。
 

 視界が真っ赤に染まるほどに、灼けるような衝動が胸を貫く。
 骨を断ち、肉を裂く感触に腕が痺れ、その重さに愛おしささえ覚えた。
 耳障りな悲鳴に憎しみが満たされる。
 ぞくぞくと背筋を這い上がった快感は、今までに感じたこともないような興奮。

 ――サア、殺セ、オ前ノ欲望ヲ満タスマデ――

「……ぅ……あ……ッ」

 そうだ。殺そう――殺せば、殺セバイインダ。
 消えろ。消えてなくなれ。
 俺の前から消えてしまえ。

 〝――返セ、俺ノ、****。〟

「うおああああぁぁあぁああああああああああああ――――ッッ!!」





『 ねぇ、クロウ 』
 ――――ん?
『 いつか私が何もかも忘れちゃっても、クロウは傍に居てくれる? 』
 ――当たり前だろ。忘れちまったら何度だって呼んでやるし、頼まれたって離れない。
    それに、俺のことだって忘れたなんて言わせねぇ。
『 ……うん 』



 彼女との約束。
 戻れない日々。
 優しくて暖かかったあの時間。
 俺はそれを取り戻したかったわけでも、縋っていたわけでもなくて。
 ただ、復讐を願ったのだ。
 俺から彼女を奪った全てに、災いを。
 ――あの日から。
 敵は、どれだけ討てただろう。
 いつしか無差別な殺人になっていた復讐劇。
 自分が何をしているのかわからなくなっても。
 ――終ワらせルモノカ。
 許さない。許さナい。許サナイ。
 死んでも俺は諦めるものか。
 この思いが、憎しみが、永遠に残ればいい。
 堆積したこの願いがたくさんの人々を渡って膨れ上がり、いつか形になって、何度でも蘇るように。
 〝殺人鬼クロウ〟の名を、誰にも忘れさせはしない。
 あの恐怖を。あの忌名を。

 ――――もう少しで、終わるはずなんだ。

 あいつらを根絶やしにする。
 何年かかっても、子孫まで、先祖まで、一族全員を、その血を引くものすべてを許さない。
 殺してやる。







「……、あ」

 ふと、目が覚めた。
 夢、だったのだろうか。
 窓際に目をやれば、既に夕刻。
 眩しい西日が部屋を照らしていた。
 夜型ゆえ朝方から眠っていたのだが、また夢を見ていたらしい。
 しかも、見る夢はいつも決まっている。
 だれかの記憶のような、鮮やかで生臭く、優しい夢。

「おはようございます。マル様、どうかなされたんですか?」

 夕日を背に、窓辺に腰掛けていたセシリーがそっと問うてくる。
 マルファスは首を横に振った。

「何でもありませんよ」

 セシリーはまだ不安そうな顔をしていたが、無視して寝巻きから普段着に着替えを済ませた。
 身支度を整え、鏡で姿を確認する。
 ……そうだ。
 今日は、アレを着ていこう。

「マル様?今日はどちらへ――」

 上質なベルベットの羽織り。これは城に出向き、国王陛下と謁見する時にしか身につけないものだ。
 普段はクローゼットの奥で眠りについているそれをわざわざ起こした。

「街へ行きます」
「ッ!」

 サラリと答えると、セシリーは目に見えて顔色を変えた。
 理由は、知らない。
 けれど本当は知っているのだろう。
 だがもう決めた。
 なんとなく、呼ばれた気がして。
 己の身に内に潜む、別の誰か――夢を見せる――に。
 全身がざわめく。得体の知れない衝動が待ちきれないといわんばかりに胸を灼いた。

「夜明けには帰ります。それまで〝血〟はお預けですよ」

 セシリーの制止の声が聞こえたが、既にマルファスは窓から飛び降りていた。
 真っ黒な翼を広げて。




*****


新キャラのための伏線~☆⌒(>。≪)
凄い勝手にセシリーちゃん妄想しちゃってごめんなさいわばばばば……

ちなみに別の新キャラについては明日あげます。
結構気に入った。

アバター
2013/11/08 17:38
>流ちゃん

そこまでわかってるなら自分を信じるのさ!!
マルファスが二代目クロウ=夢は彼のもの
殺人に出向くのは、それが理由なのです


すみまそん(´・ω・`)
ありがとね!
アバター
2013/11/07 23:17
最初の夢はなんだったのでしょうか?(´・ω・`)
えっと、確かマルクさんは二代目クロウなのだったっけ、それ関係か!!

一代目の夢を○様が見てる、とか?
むむむむわからへん


いえいえ、むしろ使っちゃってください
うちの子なら自由に使っていただいて結構です!!



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