Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ 【 第73章 】

第七十三章 『 潤んだ唇 』


いつの間にか俺の視界はぼやけていた...。
苺華の細くて小さな手の甲がしっかりと見えない─。
涙が今にも頬を伝いそうだ。必死に俺は上を向いて堪えた。

苺華はうぅん、と唸り続け、そして俺の名を何度を呼んでいる。
その呼び声を聞くたび、俺の胸は張り裂けそうになる。

そして、数分後...。苺華の瞼がようやくうっすらと開いた。

「 苺華...! 」
「 ん...、ここ...どこ... 」
「 お前の部屋だろ? 」
「 ....うわぁっ!!! 」

俺の存在に気づいた苺華はズサッと後ろに下がり、身を引いた。
布団をまるで盾のように扱い、隙間からチラチラと俺を見た。
そんな姿を見てると、深刻だった心境が崩れ、ついプッと笑ってしまった。

だが、苺華は違う。苺華は辛そうに俯き、目を泳がせている。
やはりあの事を苺華も気にしているのか。罪悪感なのだろうか...。

「 苺華、ちゃんと話し合おう。 」

やっと言えた。やっと俺から...踏み出せた。
苺華は隠してた顔を上にあげ、眉を歪ませて目を潤ませている。
口は微かに「一輝」と動いてるように見える。

俺は苺華を抱き寄せ、肩をポンポンと撫でながら大丈夫と囁く─...。
そして、ゆっくりと離して俺は苺華の話を聞くことにした。

「 実は、あのキスには私の気持ち入ってなかったの... 」
「 え? 」
「 無理矢理...なんだけど。信じてもらえないよね... 」
「 ....大丈夫、信じるよ。 」

抱きしめてる力を増し、苺華の体を強く強く抱きしめる...。
苺華の涙が俺の肩を濡らす。そして、また離す。

苺華の潤っている唇が俺の目の前に来る。
それを察したのか、苺華はゆっくりと瞼を閉じ、俺に唇を差し出す。
俺は濡れる苺華の頬に触れ、ゆっくりと唇を近づけていく...。

だが....

─ピタッ。

「 ....一輝? 」

驚いた。俺は本当に心の底から驚いた...。
苺華の事が好き、大好き、誰よりも愛してるはずなのに...。

俺は苺華にキスができなかった─...。

「 ....苺華。 」

口に手を当て、俺はズサッと身を引く。
それを見て、苺華は眉をゆがめ、体を硬直させている。

「 やっぱり...、そうなんだね。 」

そう呟いた苺華は布団にもぐりこみ、俺から姿を消した─。
いつもだったら布団をはがしてちょっかいを出すはずなのに。
俺はその場で何もできず、荷物を肩に掛けて苺華の家を出て行った。

自分でも信じられなかった。こんなんになるなんて...。
俺は...、苦しかったんだ。潤んだ苺華の唇にアイツもキスをしたと思うと...。
無理矢理っていっても、結局したには変わらないし。
何回俺が苺華にキスしてたって...、やっぱ嫌なもんは嫌なんだよ。

「 はあ....。 」

─ピルルルル....

「 ....! 」



続く。

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2013/11/08 18:57
続きすっごい気になります・・・

キスをこばまれるのは悲しいですよね



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