Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ 【 第72章 】

第七十二章 『 真の愛 』


がむしゃらに動いた足はいつの間にか苺華の家に着いていた。
頭の中は真っ白のまま。何を話せば、どんな顔すればいいのか分からない。
でも、俺の気持ちはただ一つだけだから...、ここで会って置きたい。(ただ事じゃ無さそうだし)

俺は勇気を振り絞って、インターホンに手を伸ばした。

─ピーンポーン。

何も知らないインターホンは無邪気な明るい音をたて、鳴り響く。
タタタッ、と足音がこっちに近づいてくるのが分かる。
距離が近づく度、鼓動が速くなって行く...。

落ち着け、大丈夫。大丈夫...、

─ガチャッ....

「 ....えっ? 」

開いた扉の先を見るや否や、俺は目を丸くし、口をポカンと開けた。
いや、おかしいだろ。なんで長谷川が苺華の家から出てくるんだよ─....。
しかも、長谷川の顔は真っ青。冷や汗を流して、まるで殺人した人の顔だ。

そんな事を思いながら呆然としていると、長谷川が駆け足で駆け寄ってきた。

「 来てくれてありがとう...!さ、こっち...! 」
「 ぬ、おえ!? 」

オイオイ、苺華の家なのに勝手に入っていいのか?
第一なんで長谷川が家の人みたいに仕切ってるんだよ...。家の人はどこに... 

そんなこんなで連れて来られた場所は、ドアに『 苺華 』と掛けられた看板がある部屋。
すぐに何の部屋かは察しがつく。苺華の部屋だろ?だが、一つ疑問が浮かぶ。
長谷川は今俺と苺華がどういう状況か知ってるはず。なのになんでこんな場所に...

「 早く入って! 」

─ガチャッ!!

勢いよくドアノブを捻り、扉を開けた長谷川。
その扉の隙間からは見えたのはとんでもない光景─。

「 苺華....!? 」

苺華がぐったりと床に横たわっている光景だった。
顔は真っ青で、うぅん、とずっと唸り続けている状態だ。
何があったのかは分からないが、俺はとりあえず苺華をベッドに運んだ。
そして、氷枕を作り、額に冷却シートを貼り、必死に看病を行った。

だが、やはり疑問が生じる。

全ての看病を終えた俺はくるりと振り返り、長谷川を見た。

「 ...お前、何してるんだ? 」
「 ...ごめんなさい、ボーッとしてて。 」

いつもの長谷川らしくない発言。もう少ししっかりしてる奴だろ、お前は。
俺は長谷川に近づき、顔を伺うように覗き込んだ。
すると一瞬、ほんの一瞬だが、長谷川の目がギョロッと泳いだ。

すぐに勘付いた。何か隠してるな、と。
そういえばまだ疑問がいろいろ残っている─。聞かなければ。

「 なあ、何があったのか...説明してくれないか? 」
「 ....わかった、日村君には言う。 」

長谷川は目に涙を浮かべながらも、必死にそれを堪え、話してくれた。
その原因は全て俺にあった。俺のため、やった長谷川の行動が長谷川を苦しめた。
俺がモタモタしてきちんと苺華に気持ちを言わなかったから...。
俺が傷ついてるとこ見せてしまったから、長谷川は親友を問い詰める形になったんだ...。

全て、俺が....

「 日村君は悪くないよ。 」
「 え? 」
「 そんな顔してる。悪いのは出しゃばった私だから。 」
「 ....無理させて悪かったな。後は任せろ。 」

俺はそう告げ、長谷川を玄関まで送った。
携帯を取り出し、功に連絡。

『 苺華の家で、長谷川が待ってる。早く迎えに来てやれ。 』

とだけ素っ気無いメール。功はこれだけでも分かってくれるはずだ。

「 ありがと、宮木君来るまで外に居るわ。 」
「 いや、外は...。 」
「 ううん。日村君は苺華の傍に居てあげて欲しいな。 」
「 ....了解。風邪引くなよ。 」
「 はーいっ。 」

そう言って、ヒラヒラと手を振り、長谷川は笑って外に出て行った─。
俺はガチャリと鍵を閉め、苺華の居る部屋へ向かう。
窓の外を眺めると、携帯を寂しそうに見つめながらため息を零す長谷川の姿が。

大きな荷物を抱えて...、夜通しで苺華に問い詰めたのか。
やりすぎ、と思う反面、俺のせい、と責めてしまう自分もいる─。
さっきの長谷川の顔...、少しやつれていた。目のしたにクマができていたし...。
やっぱ、無理してるなって感じだった。

功に怒られたりしそーで、怖ぇな。

そんな事冗談っぽく思い、一人でフッと笑った─。
その時、長谷川を迎えに来た功の姿が。

「 お、来た来た。 」

俺は微笑みながら、二人手を繋ぎながら帰る姿を頬杖をつきながら見つめる。
微笑ましくてついプッと笑ってしまった。

その時─、

「 ん....、んん... 」
「 お 」
「 ん....か.... き 」
「 えぇ? 」

聞き取りにくい言葉に耳を澄ます。
苺華の口から零れる吐息を耳に感じながら、言葉を聞き取る。

「 ...一...輝.... 」
「 ....! 」

俺は目を丸くして驚いた。そして、思った。
傷つけてたのは俺なんだ...と。

力強く細く小さい手を握り、顔を伏せる...。
一番逃げてはいけない俺が苺華から逃げていた...。
支えてあげなきゃいけないのは自分じゃなくて、苺華だった。

俺は握り締めた手を放さないと近いながら、手の甲にキスを落とした。


続く。




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