Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ 【 第69章 】

第六十九章 『 手段 』


ゆっくりと体は離れ、そしてお互い目を向けあった。
私達は何も言わなかった。桐崎君も何も言わなかった。
ただ口を片手で押さえて眉を歪めているだけ。私はそれをただ見ている。
平然としている自分がいたから少しビックリした。どうしてこんなに冷静なんだろ、私。

ボーッと彼を見つめていると、やっと口火を切った。

「 ....わりぃな。本当。俺の悪い癖だよ。 」
「 え? 」

突然吐き出した言葉。彼の言っている”悪い癖”の意味が少し分からなかった。
屋上に吹く突風で髪を靡かせながら、私は言った。

「 悪い癖...? 」

口を少し詰まらせながら尋ねる。

すると彼はこう答えた─。

「 あぁ、すぐにこうやって手ぇを出す悪い癖だよ。 」
「 .....すぐに手を出す、か。 」

私の頭に過ぎったのはこの人の今までの行動だった。
振り返れってみれば、彼は本当に酷い男だなと思う。

人気な彼は女子にモテる。女子を毎日のようにとっかえひっかえして、遊んでいる。
サッカーの救世主とはいえ、やって良いことと悪い事があると思ってたけど...。

この人はこの人なりに、これが悪いって自覚してたんだ...。

そう心の中で呟き、少しだけ見直した私はコクリ、と頷きながら言った。

「 悪いって分かってるんだったらいいと思う。 」
「 ....ま、直せないんだけどな。 」
「 ....直すように努力して。もう二度とこんな事しないで欲しい。 」

目をまっすぐ向け、訴えるように頼んだ。
その訴えに彼はただただ頷き、わかったと返事してくれた。
答えを聞き、ホッと安心した私は急いで一輝を探しに向かった....。

─ガチャッ....バタン。

「 ....斉藤苺華。甘く見てたわ。 」

屋上を後にし、私はただ、全速力で駆けていった...


**********

走って、走って、走って...やっと見つけた場所は校舎の裏。
いつもこんな場所に来ないのに...、やっぱり傷つけてしまったんだ。
私は罪悪感を溢れさせながら、一輝に近づいていった─。

すると...、

「 まぁ...、気にするな。 」
「 ......! 」

聞えるはずのない宮木君の声が聞えた。
どうやら、校舎裏で宮木君と話しているようだ...。お邪魔だったようだ。

私は振り返り、一歩進めた。
その時だった....、

「 気にするな?そんなの無理だろ...キスだぞ?キス。 」
「 ....あっ 」

一輝の怒りの声が耳に突き刺さる。
私は再び振り返り、壁に隠れながら一輝の声に耳を澄ませた。

「 大体...なんでキスなんか...。 」
「 まあ、理由があるのかもしんねぇぞ? 」
「 ....そういう問題じゃねぇ。結局キスした事は否定しなかったワケだし。 」
「 そりゃあ、まあ...そうだけどさ。 」
「 じゃあお前、長谷川がアイツとキスしたーって言ったら笑ってれんの? 」
「 100%無理だな。ぶん殴る。 」
「 だろ?俺もやってやりてぇよ。 」

その会話を聞いた私は脱力し、下に崩れ落ちていった。
両手で口を押さえながら、声を殺し、涙を流す。

無常にも涙は流れて行き、私の頬をゆっくりと伝っていく....。
肩で必死に息をしながら、罪悪感に苛まれていた。

一輝達の声はまだまだ続く...。

「 初めて...こんなに好きになった人だから...辛いな、やっぱ。 」
「 ....一輝の気持ちがあれば大丈夫だ。 」
「 いや、もう駄目かも。キスしたって...言ってた時点で俺...ちょっと...、 」
「 自信なくした? 」
「 ....否定しなかったってとこがまたな。俺に飽きたのかもしんねぇな。 」
「 それはねぇだろ、苺華ちゃんに限ってさぁ... 」
「 そう信じてぇな。 」

発言が終わったと同時になる足音...。
こっちに近づいてくる─。

私は慌てて腰を低くしながら見つからないよう、壁に隠れた。
その場から、私はしっかりと見ていた。
一輝が涙を流した跡を─....。

「 ....一輝、ごめん。 」

一輝のために今どうするべきか...私は考えた。
壁に靠れかかりながら、色んなことを頭の中で巡らせる。

私はいったい、どうするべきなのか....考えた。


続く。





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