ストロベリーラブ 【 第65章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/10/20 23:08:08
第六十五章 『 桐崎の独占欲 』
やってしまった事の重大さは後から気づく物だ。
苺華は怒鳴った後、教室に足を踏み入れた瞬間青ざめた─。
どこのクラスでも注目の的の桐崎雅人に怒鳴り声を上げてしまったのだ。
もちろん、自分のクラスでも人気な雅人なのだから今の怒鳴り声を聞いた女子は...
「 ねぇ、何様のつもりなの? あの子~.... 」
「 信じられないっ!!桐崎君に怒鳴り声上げるとか一億年早いわよねぇ。 」
苺華はやっぱり...と、女子特有のヒソヒソ声を耳にいれる。
嫌な予感は的中する物。女子のヒソヒソはエスカレートしていく。
「 ねぇ、あの子名前なんだっけ? 」
「 さあ?あんな目立たない子の名前とか覚えてなぁ~い♡ 」
「 きゃぁ、淳子ってば酷いぃ~ 」
それはお互い様だ、とツッコミたい苺華だが、今はそんな気分ではない。
普段こういうの気にしない苺華でもさすがにコレは気になる。
一言一言が胸を突き刺し、最後辺りではもう涙が浮かんでいた。
膝の上にヒラリとあるスカートをギュッ...と掴みながら、必死に堪えた─。
だが、いくら堪えたって出るものは出てしまう...。
「 っ.... 」
ポロッ...と一瞬苺華の頬が濡れた。
その瞬間、女子達が一斉に騒ぎ始めた─。
「 ねえっ、今泣いてなかったぁ? 」
「 やぁだ。嘘でしょぅ? 」
女子達の罵声を浴びながら、必死に流れてしまった涙をセーターで拭う。
こんなの...なると思わず怒鳴ってしまった苺華は後悔した。
その時─....
「 オイ、てめぇ等。 」
「 は、はいぃ...? 」
教室のドアをガッ...と開け、手を掛けながら女子達を睨む雅人。
そんな雅人を初めて見た女子達は少し怯えているようだ。
そして、その怒鳴り声に少し驚きを隠せない苺華は思わず涙を拭う手を止めていた。
「 ....? 」
「 ? 」が浮かぶ苺華の顔をクイッ...と人差し指で上にあげて、目線は女子達に向けた。
「 オイ、てめえ等が手ぇ出そうとしてンのはなァ.... 」
「 .....んっ....!? 」
グイッと引き寄せられ、引力に負けた苺華の唇はあっという間に奪われた。
何が起こったのかわからない苺華はパニック。怒鳴る事さえできない。
口を押さえ、「 え?え? 」ときょろきょろと目を泳がす事しか今はできなかった─。
だが、雅人はどうだ。雅人は大きな顔をし、女子達をニッとした顔で見ながら言った。
「 俺のオンナなんだぞ!!! 」
雅人の大胆発言プラス、嘘の発言は女子達を惑わせた。
むしろ驚きすぎて、女子達は数秒間沈黙した。そして、5秒後ぐらいになると、
「 えええええええええぇ....!? 」
と、女子達が一声に騒ぎ始めたのだ─。
「 どういう事だ 」「 説明して 」などの言葉が飛び交うが、雅人は構わない。
パニック状態の苺華の手を引っ張り、無理矢理屋上へ飛び出した。
「 ちょ、待っ.... 」
混乱と、動揺を隠せず、腕を振り払う事さえもできなかった─...。
このまま二人は愛の逃避行劇を見せたのだった。
**********
「 大丈夫か?少しは落ち着いた? 」
「 う、うん...ありがとう。 」
その頃、香理奈と功は資料室をゆっくり離れ、4階の廊下に居た。
窓の外を眺め、外の空気を吸うためだ。
香理奈もようやく落ち着き、今は笑顔で喋れるようになった。
それにホッとした功は背中をポンポンと摩る。
「 ....宮木君のおかげだな。 」
「 いや、日村のおかげでもある。 」
「 一輝君...? 」
「 アイツも一緒に探してくれてたからさっ...。 」
「 そうなんだぁ...。一輝君にもお礼言わなきゃいけないなぁ。 」
「 そうだぞ。 」
そんな会話をしている内に、4階の風が少し止んで来た。
そこで、功が言った。
「 なあ、屋上行かねぇ? 」
「 え?なんで? 」
「 風...来なくなったろ?浴びたくね?もっと。 」
「 うん...確かに来なくなったねぇ。屋上行こうかっ...! 」
「 そうと決まれば行くぞ。 」
手を引いて二人が向かったのはあの二人がいる屋上。
タイミングが悪い事も気づかず、二人は笑顔で走っていった。
そして、ドアノブに手を掛けてドアをゆっくり開いた...。
「 ....ん?シーッ、誰かいるぞ? 」
「 えぇ....?どれ? 」
ドアの隙間からこっそりと覗き、向こう側にいる”誰か”を見た。
そこに居たのは、言うまでもなく、キスされた苺華とキスした雅人の姿。
泣いている苺華とニヤニヤしている雅人が並ぶ不思議な光景だった。
その光景に首を傾げながら香理奈が言う。
「 ...え?なんで有名な桐崎君といるんだろ... 」
「 えぇ?あれ桐崎っ...!?...なんで苺華ちゃんといるんだ... 」
「 わ、わかんない...。でも苺華泣いてる....! 」
香理奈にとって一番気になったこと...それはどうして泣いてるのか。
そして、泣いている苺華を前にどうして桐崎はニヤニヤしているのか。
二人の口が動いてるので、会話はしてるようだが扉の分厚さが邪魔して聞えない。
だが、行動だけ見える...見えるのだ。
「「 ....えっ? 」」
二人の声が被ったと同時に、苺華達の影が重なった。
そして、二人は顔を見合わせた。
「 い、今... 」
「 だ、抱き...合った....? 」
続く─。