ストロベリーラブ 【 第64章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/10/19 16:45:19
第六十四章 【 狼 】
北山から情報を得た苺華はホッと胸を撫で下ろし、保健室を出た。
扉の前で胸に手を当てながら何度も「 よかった... 」と、繰り返した─。
そして、キョロキョロと左右を見て確認してから、教室の方向へと帰っていった。
なぜなら、この行為は一輝には隠してやってることだから。
ワケは色々あるが、一番はやっぱり変な勘違いされる事だ。
さっき、蒼井とあんな事があったばかりだし、誰だって勘違いはしてしまう。
そう思い、苺華は一輝には内緒でここまで来た。
もちろん、やましい気持ちなんて1mmもない。
むしろ、蒼井に対する憎しみでいっぱいいっぱいなのだ。
だが、この状態で死なれては困るため、様態を聞きに行ったというわけだった。
「 ....ふぅ、無事到着っと。 」
教室の前に立ち、汗を拭く苺華。
見事に一輝とは一度も顔を合わさずに済んだ─。
一輝のいないルートを選んだ...わけではないが、運がよかった。
とりあえず、教室に入ろうとドアノブに手を掛けた瞬間、
「 なあ、オイ。 」
「 はい...? 」
突然後ろから声を掛けられた。その声は低音で、どこか冷たい声...。
振り向くと、メガネを掛けた短髪な少年が立っていた。
顔は整っており、眉毛はシュッとしていて、目は勇ましい。
「 あ、あなた...は... 」
苺華はすぐに思い出せた。違うクラスだったが、すぐに誰だか分かった。
そのわけは少年にあった。少年の名は、桐崎雅人と言い、サッカー少年でもある。
サッカーの才能は桁外れで、もうプロの世界に足を踏み入れている人間だ。
サッカー部にはなくてはならない存在、まさにゴッドを称された男だ。
そんな有名人、イケメンに興味ない苺華でも知ってるくらい学校中が知っているのだ。
だが、苺華は疑問に感じた。なぜ、こんな人が自分に話しかけてくるのか、と。
しかし、そんな疑問を感じている苺華を放置し、話を始めた。
「 お前...斉藤苺華、だよなぁ? 」
「 え? そうですけど? 」
有名人相手だからか、自然と敬語が零れる苺華。
そんなオドオドしている苺華を置いて、話を進める。
「 お前さぁ....、蒼井竜馬の事知ってンの? 」
「 は、はぁ...? なんで蒼井が出てく...るんですか? 」
「 ....お前には関係ないだろ? とにかく知ってるか知らねぇか言え。 」
いくら有名人でも、この態度はおかしいと感じた苺華の怒りは頂点へと達した。
「 知るわけないでしょーがそんな人っ!!!!!!! 」
とうとう怒鳴ってしまった...。廊下に立っている人々が揃って苺華を見る。
だが、そんなの気にしていられない。苺華はフンッと首を振り、教室に入っていった。
そんな苺華の背中を見ながら、唇を斜めに上げ、嫌な笑みを浮かべた。
「 斉藤苺華...なぁ...。へぇ、あんな女なんだぁ... 」
それは完全、狼が羊を見る目だった─。
続く....
続き気になります