Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


雪解け 【 短編小説 】

キラキラと雪が輝きながら地に落ち、そして解けていく─....。

落ちた雪は水となり、地に染み込み、そして、原型はもう留めることはない。
でも私達はこの雪に毎年驚かされ、目を輝かされる...。

それが消えて原型を留める事もないと知りながら─。


*******

「 なぁんか寒くなって来たなぁ~ 」

人気のあるチェーン店のファーストフード店で、スマホをいじりながら呟いたのは、
主人公の佐藤雪絵。目の前に同じ様にスマホをいじる親友、坂田美緒が答える。

「 そうだねぇ。ま、もう11月下旬だし当たり前でしょー。 」
「 そうか...もう11月下旬なんだ... 」
「 あ、ごめっ.... 」

慌てて口を両手で塞ぐ美緒。そんな美緒に気にしないでと笑い掛ける。
だが、空気は戻らない。軽いいつもの空気はあの時と同じような重い空気になった─...。

あの時とは、丁度今ぐらいの11下旬の事だった。
突然美緒のスマホの着信音が鳴り響く。何故かその瞬間、美緒は予感できてた。
美緒の予感は見事に的中し、電話に出た瞬間、雪絵の鼻を啜る音が聞えた─。
この音で、すぐに分かった。泣いてるんだな、と。理解した美緒はゆっくり事情を尋ねた。
そして、雪絵はゆっくり話して行き、聞き終わった時にはもう雪絵の声は掠れていた。
泣きながらずっと話していた雪絵の気持ちは自分の事のように美緒も痛めた。

それから、もう1年が経った─。
雪絵はあの頃と何も変わらない。容姿も、言葉も、仕草も、...彼への気持ちも。
それを分かってる美緒は毎日のように気を遣って何かを奢ったり、面白い話を用意する。
だが、こんな生活もずっと続ける事などできるわけなどない。

「 そろそろ出よっか。 」
「 あ、うん。 」

素っ気無く言った雪絵の言葉はどこか冷たさを感じた─。
美緒は頬に冷や汗を流しながら、コートを腕に掛けて外に出た。
美緒より、一足早く出ていた雪絵が背を向けたまま言った。

「 ねぇ、少し...公園で話さない? 」
「 えっ...? 」

その言葉と共にビュオー...と、冷たい風が二人を突き刺した。
また、美緒が勘付いた。嫌な予感がする....と。
そして、断れなかった美緒は不信感を抱えつつも、共に公園へと向かった。
公園には大きな木が並んでおり、ポツポツと遊具がある。
雪絵は先々進んで行き、二つだけぶら下がったブランコに腰を下ろした─.....。
ぶら下がった鎖を握り、寂しそうに微笑みながら雪絵が言った。

「 座って? 」
「 あ、うん....。 」

違和感と不信感が高まるばかり。だが、断る事なんてありえない。
そう思った美緒は目を泳がせながらも、ブランコに腰を下ろし、同じように鎖を握る。
そして、ようやく雪絵が本題に入り始めた─....。

「 ねぇ、最近ずっと私に気遣ってるよね...? 」
「 え、いや....!遣ってないよー!普通だしっ! 」

必死に考えて答えた言葉がこれ。これじゃあ、雪絵の違和感が消えるはずもない。
雪絵は寂しそうにポツリと呟いた。

「 やめて...無理するの。親友なんだから... 」
「 ...雪絵。...ごめん、傷付けたくなくて... 」
「 ごめんね、無理させちゃって... 」
「 ううん、私こそ...ごめん。雪絵に気づかれてたなんて.... 」
「 勘だけはいいんだぁ~ 」

冗談っぽく笑った雪絵の笑顔は引きつっている。可哀想で仕方なくなった。
その顔を見て、何も言えなくなった美緒は黙り込む。
そして、沈黙という名の鎖にがんじがらめにされた─....。


*******

「 はあああ.... 」

美緒にあんな無理させていたんだと、落ち込む雪絵。
そんな雪絵の隣にフワッ...と、風が通り過ぎた。

「 ....! 」

グルッと思わず振り返ると、そこには以前交際していた山谷修二がいた。
雪絵の体はピタッ....と止まった。手に持ったノートがぷるぷるろと震える。
雪絵が固まってみてると、次第に修二も振り返った。
目と目が合ったその瞬間、修二がニコッと微笑んだ─....。
そんな表情に悔しさがこみ上げる雪絵は、
拳を握り締めながら修二の背中に頭突きをお見舞いした。

「 な、何だよっ.... 」
「 もう好きじゃないならそんな顔しないでよ...! 」
「 .....! 」

修二はピタッと固まり、雪絵を見つめた。
雪絵は方を小刻みに震わせ、唇をかみ締めた。

「 ....もうやめてよ。期待....しちゃうから.... 」
「 ....雪絵 」
「 やめてよ...!気持ち消えないじゃないっ....! 」

─ギュッ...!!

雪絵が本音を泣き叫んだ瞬間、強い引力を感じた。
気づけば、もう大きな胸の中に雪絵は入っていた。
いつの間にか涙で埋め尽くされていた瞳は、余計潤みを増していた。

「 やめてよ.... 」
「 ...まだそんな風に思ってくれてたんだ。 」
「 え...? 」
「 もう嫌われたと...思ってたから.... 」
「 だから...振ったの...? 」
「 ....うん。 」
「 ....そうだったんだぁ 」

その瞬間、雪絵の長く続いた雪は止み、温風が吹いてきた─....。
今まで降り積もっていた雪は、徐々に雪解けへと向かっていっていた...。

「 お前がやり直してくれるなら、やり直したい...。 」
「 私も...修二ともう一度居たいよぉ.... 」

二人の関係も、雪解けへと向かっているのだった。

*END*

アバター
2013/10/18 21:04
登場人物の考えていることが、わかりやすく書かれていて、心に響きました!!!!
アバター
2013/10/18 18:41
めっちゃいいお話。。。。

なけてくる。。。www

もしよかったらhttp://www.nicotto.jp/user/circle/index?c_id=232549

のサークル入らない??



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