Cherry* 【 短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/10/14 19:29:01
桃香の隣で桐斗が微笑んだ。その隣で桃香も微笑んだ。
お互い同時に両頬が真っ赤に染められた。それと同時に桐斗が言った。
「 お前の頬、さくらんぼみてぇだな。 」
「 桐斗だって、さくらんぼみたいになってるよ。 」
負けじと返した主人公、桜田桃香は彼氏の桐斗の頬を軽くつねった。
それをやり返すように、「 仕返しだぁ~ 」と言って、つねり返してくる桐斗─。
悔しいが、こういう戦いにはいつだって桃香が降参と白旗を挙げてしまうのだ─。
そんな桃香を可愛がるお兄ちゃんのように笑いながらギュッ...と優しく抱き寄せた─。
公園のベンチに腰を掛け、桜の木が満開で、まるで二人を祝福してるようだった....。
「 にしても、この公園っていつも人少ないね。 」
「 新しい施設できたもんなぁ、しゃあない。 」
仕方がないと言いつつも、どこか寂しげな桐斗の目を逃す事はなかった。
桃香は慰めるように、高い桐斗の頭を精一杯挙げ、クシャクシャと犬のように撫でた。
桐斗の毛は栗色のクセッ毛で、まるで本当に犬のようなのだ。
だが、犬のような撫で方をする桃香にムッとした表情でやり返してきた。
「 ちょ、やめてよぉ!!せっかく髪セットしたのにぃ~.... 」
「 仕返しだっつぅーの。 」
そう言いながら、また笑ってクシャクシャと私に仕返ししてくる─。
「 やめて 」と言いながらも桐斗の優しく、大きな腕に幸せを感じていた。
髪をセットして、乱れるのが嫌というのも本心だが、それ以上にこの現状が良かった。
そんな幸せを味わっている桃香の笑顔を見ながら、桐斗も自然と笑みが零れる。
「 そんな嬉しいのか?頭よしよしされるの。 」
「 えっ...、あ、うん...//// 」
少し照れ笑いをしながらも、素直に答えた桃香。その答えに喜びを隠せない。
桐斗は、「 よし、じゃあもっとだ。 」と言ってまるでご褒美を与えるように撫でまくった。
桃香の喜びと笑顔はさらに増して行き、幸せそうに「 きゃぁ~! 」と言った。
そして、話し合うとお互いボサボサになった髪を見つめ合って笑った─。
「 お前の髪ボサボサァ~ 」
「 桐斗のほうがボサボサだもんッ...! 」
そんなじゃれあいをしながら、二人はまたきゃきゃっと抱きしめ合った。
桐斗の胸の中で、桃香が優しく、そして温かく呟く。
「 ....桐斗の胸って温かいよね。 」
「 あぁ? 」
「 冷たいように見えて、超優しいし...ギャップだよね。 」
「 はぁ...?お前何言ってるんだよ... 」
「 ハハッ、ごめん。怒っちゃった? 」
「 ....別に。 」
怒ったような言葉を並べたが、実はすごく嬉しい。桃香が顔を見てないのがまだ救いだ。
桐斗の顔は耳まで真っ赤に染まり、本当にさくらんぼのようになっていた─。
そして、ゆっくり桃香が離れていく─...。
「 ...?桐斗顔赤くない...? 」
気づかれてしまった。桐斗は慌てて顔を隠した。
そんな桐斗を見て、キャハハッと笑いながら隠している腕を引っ張る。
「 ねえっ、桐斗恥ずかしがらないでよッ!!なんで顔赤くなったのッ!? 」
興味津々で詰め寄ってくる桃香。桐斗はえぇい、もういいッ!!!と隠していた腕を放し、
桃香の顎をクイッと親指と、人差し指で自分の顔へ見上げさせた。
さっきまで笑っていた桃香の表情は変わり、不思議そうな顔を浮かべている。
「 き、桐斗....? 」
両頬は真っ赤に染められており、大きな黒目、栗色の柔らかい髪。
桐斗はもう思ってる事を思い切って、桃香の目を見て言った。
「 ドキッとしたからに決まってるだろッ....! 」
「 へっ....? 」
その言葉を聴いた瞬間、さっきまで明るかった桃香の黄色い声は静まり、
そしていつの間にかお互いの唇が重なっていた─。
突然の事で目を閉じる事もできなかった桃香は少し戸惑う。
...が、すぐに桐斗の温もりを感じ取って、ゆっくり目を瞑った─。
そして、ゆっくりと放す。桐斗はベーッと舌を出し、
「 さくらんぼの味ッ。 」
と、まるで倍返しするように言った。また負けたと言う様に唇をかみ締めた桃香。
桃香は顔をカァッ...と真っ赤にさせ、いつもならツッコむはずが、黙り込んだ。
いつもと違う桃香に調子を狂わせた桐斗も顔を真っ赤にした。
その瞬間、お互い真っ赤な顔で隣通しに並んでいる。
まるで真っ赤に染まったさくらんぼのような二人だった。
*END*