Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


突然の温風 【 短編小説 】

ビュオォー......


「 おぉ 」

つい出てしまった驚いた声。理由は体を暖かく包んだ温風。
桜や花見だけじゃなく、春はこんな所でも感じ取れるようになっていた─。
もうカーディガン一枚だけでもお出かけできる気候である。
そんな春の気候を感じながら主人公、野原小春は学校へと足を進めていた─。
ずっと憧れていた高校に入学し、可愛いと評判の制服を纏いながら学校に通う日々。
まだ通って数日しか経っていないため、学校生活にはまだ少々ためらいがあった…。
だが、わくわくが止まらない小春は今にもスキップしだしそうな表情で学校に到着した─。

「 おはよー 」
「 あ、おはようっ 」
「 おはよーうっ 」
「 おはようございまぁ~すっ 」

挨拶の声が飛び交う中、小春は一人で校門を潜った。
まだ通って数日のため、友達の数もまだ少ない。それに比べてどうだ。
周りの生徒達はもう数多くの友達を作っている。元々高校が近くで、友達がいる人もいる。
小春は元々引っ込み思案で、あまり友達と明るく話すことができない。おまけに人見知りだ。
今のクラスで友達ができたのも、全て相手から話しかけてくれたおかげなのだ。
明るく挨拶をする生徒を目に入れる度、小春ははぁ~...と、深いため息を零してしまった。

そんな時だった。

「 おはよーうッ!!小~春ッ!! 」
「 グヘッ.... 」

後ろから大きな呼び声が聞えたかと思うと、背中をドンッ...!と押された─。
その衝撃と共に、思わず女子らしくもない”グヘッ”というような声を出してしまった。
自分からそんな声が出るとは思わなかった小春は、赤面しながら慌てて口を押さえる。
そして、ゆっくりと恐る恐る振り返ってみると心の中で思わずやっぱりと呟いてしまった。
それを察したかのように、小春を驚かした犯人は成功したのを確認し、
嬉しそうにVサインを作っている。

「 ヘッヘーンッ!!成功したみたいだねぇーんッ!! 」
「 な、なぁんだ...。菜穂か。 」
「 ”なぁんだ”じゃないでしょ~?せーっかく菜穂が来たのにぃ。 」

両頬を膨らせながら口を尖らせ、ふてくされたように俯く。
そんな菜穂の姿にはあ...とまたため息を零れてしまう。呆れたかのようにも思えたが、
小春は慰めるように肩をポンポンと二度叩き、口を開いた。

「 ごめんごめん。驚いてつい出ちゃった。 」
「 へー、ふーん、へー。 」
「 あ、今適当に受け流したでしょ。 」
「 エヘヘッ、まあ気にしない気にしないぃ~♪ 」
「 ちゃっかりしてるなぁー。 」

そう言うと菜穂は照れたように、それほどでも。と返した。
褒めてねぇよとツッコミたい所だったが、まだそこまで菜穂に慣れてない小春は、
そのツッコミをゴクッ...と、飲み込み、方向転換するため、話を切り出した。

「 そういや、今日だよね? 」
「 へ?何がぁ? 」
「 調理実習だよ。先週家庭科の時間に言ってたでしょ? 」
「 あー、言ってたねそういや。 」
「 忘れてたんだ.... 」

菜穂のあっけらかんとした照れ笑いを見ながらまた呆れてしまう。
だが、何故か憎めないのが菜穂の長所だ。
実際はいいとこなのか悪いとこなのかわからないが。
すると、菜穂はゴソゴソと鞄をあさり始めた。何するかよそうできない小春。
そして、菜穂のジャジャーンッという声と共に披露されたのは小さなピンク色のグロス。

「 な、何? 」

あまり化粧品に詳しくない小春は顔を険しくさせながら尋ねた。
そんな小春に呆れたかのように腕を腰に当てながら菜穂が言う。

「 えー、知らないの!?新作のグロスだよッ!!!今人気でCMでもやってるでしょ!? 」
「 知らないよぉ~、そんなの。 」
「 えーッ!?小春こーゆーのに興味ないのぉー!? 」
「 ないない全然なーい。 」
「 嘘....。じゃあ、好きな人もいないってワケー? 」
「 余計なお世話だ。 」
「 ええええぇッ!? 」

口を押さえ、大げさに驚く菜穂に少し苛立ちを覚えた小春。
好きな人を作って今までいい事なんてなかったと小春はしみじみ感じる。
過去に振り返り、好きな人を作ってた自分を思い出すが何一つ叶ってはいないのだ。
そんな過去を蘇らせながら、またはあ...とため息が零れる。
そんな小春を見ながら、励ますように肩にポンッ...と手を置いた。

「 小春ッ!!まだまだ始まったばかりだ!! 」
「 え、何が? 」
「 学校生活ッ!!チャンスはいくらでもあるって意味だよッ!! 」
「 えぇぇえ。いいよー....。 」
「 ほら、走れぇー!!! 」
「 えぇー。朝っぱらからしんどいなぁー。もう。 」

そんな愚痴を零しながらも菜穂についていってしまう小春─。
やはり、菜穂には誰よりも強い引力があるのかもしれないと改めて小春は思った。



********

そんなこんなで教室に到着─。
ぜぇぜぇと息切れしている小春とは比べ物にならないほど、菜穂は元気だ。
教室に入るや否や、菜穂はまるで撒き散らすかのようにバッと手を挙げてながら

「 おはよーございますッ!!!! 」

と、元気良く挨拶を交わす。これには皆も勝てず挨拶を交わす。
そんな菜穂の背中をガシッと掴みながらぜぇぜぇと後ろから小春が出てくる。

「 な、菜穂...は、早すぎ...ぜぇぜぇ... 」
「 あらら、ごめん。てか小春運動不足すぎでしょー 」

ケラケラと笑いながら小春を見る。そんな笑ってる菜穂を見ながらまた苛立ちを覚えた。
菜穂はバリバリのバスケ部で、幼い頃からバスケ習ってたって言ってたなと思い出す。
だが、そんな小春を置き去りに菜穂の視点はある人物へと焦点する。

「 あぁ~、青崎君だぁ~♡ 」

目をハートに変えて輝かせながらパタパタと忙しい足音を鳴らして駆けて行った。
小春が”あっ”と声を出して手を伸ばした頃はもう手遅れだった─。
クラスでイケメンナンバーワンと有名な青崎翼のほうへと走っていってしまった。
まだ入りたてというのに廃部に追い込まれたサッカー部を救った英雄とも呼ばれている。
一年生にも関わらず、三年生を追い抜いてキャプテンを勝ち取った才能溢れる男子だ。
こんな完璧人間がモテないワケもない。

「 あ、ズルイッ!!私が先に話しかけようと思ってたのにぃ~.... 」
「 もぉ、いつもあの子に超されちゃうぅ~...... 」
「 何者なのぉ?東山菜穂さんってぇ.... 」

女子の悔しがる声が次々と出てくる中、小春は一人呆れたため息を零す。

その瞬間、

「 ちょいすみません...。 」
「 あ、すみませ─.... 」

後ろから低いトーンが聞えたと思い振り向くと小春の心にフワッと暖かいものを感じた。
それはまるで、あの時感じた春の温風とどこか似ている気がした─。
突然の心の温風に驚きを隠せない小春は、胸を押さえながらその場に棒立ちしてしまった
どいてくれと頼まれたにも関わらず、これは図々しい態度だ。

「 ち、ちょ。どいてもらっていいかな...? 」
「 ああぁ、すみませんっ.... 」

スッと横にズレた小春のよこを颯爽と通り過ぎていった....。
まだ心に残る温風を感じながら、黙り込む。
その瞬間、カァッ...と顔が赤くなるのが確認できた─。

ここから彼と距離を縮めるのはまだ先のお話─。

*END*

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2013/10/14 08:37
ギャグ、上手くなってるじゃんw
ただ、恋をした相手の名前がないと、ちょっと想像しにくいかも;
偉そうにごめん・・・

でも素敵な話だったよ^^




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