■近代文藝之研究|講話|英國劇と道徳問題(13)
- カテゴリ:その他
- 2013/10/07 05:10:11
■近代文藝之研究|講話|英國劇と道徳問題 (13)
それで此劇の結論は、快樂一本筋でいけば人生は不道徳の範圍に飛び込む、道徳と衝突する、妻君は即ちそれを證して居る。人生に於ける眞の快樂は道徳と調和し得る範圍でなければならぬ。即ち文明的でない濠洲の生活といふやうなことが、一層容易にこれを成し遂げることが出來るのである。西倫敦的生活には道徳と矛盾しない快樂は存在して居ないといふことを表はして居る。
即ち前の「カズン・ケート」が、快樂と道徳との矛盾及び道徳に對する嘲笑を結論とするに對して、此劇は道徳と快樂との調和の道を自然の中に示さうとした、それが即ち此劇の與へる解決であるのでせう。
好一對の對稱とは即ち此意味であります。これに依つて一方には歐羅巴現時の思想界の状態をも窺ふことが出來ませうと思ひます。(明治三十九年談話筆記)
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*註1:不道徳・道徳・道を
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「徳」の旧字体。「心」の上に「一」が入る。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/toku.jpg
*註2:飛び込む
「込」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:衝突
「突」の旧字体。「穴」+「犬」。
*註4:調和
「調」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cyou_shiraberu.jpg
*註5:文明的
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註6:一層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。
*註7:遂げる
「遂」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sui.jpg
*註8:前の
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註9:嘲笑
「嘲」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyou_azakeru.jpg
*註10:あるのでせう。
原本には「あるのでしやう。」とあるが誤植と思われるので改めた。
*註11:状態
「状」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyou.jpg
*註12:出來ませう
原本には「出來ましやう」とあるが誤植と思われるので改めた。
*註13:筆記
「記」の俗字(か?)。旁が「己」ではなく「巳」。
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http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1