初夢の続きは （ＳＳ２）
- カテゴリ：学校
- 2013/09/30 20:41:26
初夢の続きは side story2 『暦村君の余裕』
その日の午後、暦村はオープンテラスでお茶を楽しんでいた。
運ばれてきた紅茶。
暦村はその琥珀色の液体を一口含んだ。
（ダージリンか悪くない）
暦村は体の隅々まで浄化されていくような感覚にしばし酔いしれていた。
（やはりアフタヌーンティとはこうあるべきだな）
そんな時…。
「～～♪ ～～～♪」
突如、勇壮な音楽が流れた。
曲のタイトルは『ワルキューレの騎行』 リヒャルト・ワーグナーの名曲だ。
その旋律に夢見心地だった暦村は一気に現実へと引き戻された。
場面はオープンテラスから学食に…。
優雅な時間は瞬く間に喧騒にかき消された。
（まったく大衆というのは理解に苦しむ生き物だな
食べ終わったら席を譲って立ち去ればいい
何故何時までもしゃべくり倒しているのだ）
暦村は携帯を取り出し鳴り続けていたワルキューレの騎行を止めた。
ディスプレイには 「お前にしか頼めない！エース代返ヨロ ナベ」とあった。
（お前にしか頼めない…か わかっているなアイツも）
暦村は席を立ち、午後の紅茶の空き缶をゴミ箱に捨てると講堂へと向かった。
「この状況下で代返はムリだろうな」
暦村は、冷静な判断を下し諦めた。
広めの講堂に見える人影は暦村を含め７つ。
代返などしようものならたちどころにバレてしまうだろう。
しかし、そう思っていたのは暦村だけだったようだ。
教師が入ってきて出席を取っていると
一人の生徒が、全く同じ調子で３つ続けて返事をした。
（もうちょっとやり方があるだろう そんな一本調子じゃ…いくらなんでも）
暦村の予想は的中した。
教師の出席を取る声は止まり、ゆっくりとしゃべり始めた。
「私は数学は専門外だが数字くらいは数えられる
この時点で既に１０人いるはずだが…」
教師は広い講堂を見渡し、深くため息をついた。
「最近の学生は質が落ちてるというが、ここまでとは思わなかった。
そこで抜き打ちでテストをやることにする。
この講義がある月水木金いつやるかは教えない。
テストをやる時間も講義の時間中のどの場面かはわからない。
そしてこの小テストを受けなかったものには単位はやらん！ では３９ページから！」
教師は息をつかせずにそれだけのことを言うと、残りの出席は取らずに授業を始めた。
「レッキー代返上手くいった？」
講義が終わると能天気な顔をしたナベが数人と連れ立って講堂に入ってきた。
「あ、これお土産ね」
と暦村に右手で握っていた缶の紅茶を投げてよこした。
「ありがたい。 が食べ物を投げるな」
押さえ気味のトーンで暦村はしゃべった。
「まーまー固いこと言わないの！ で、どうなった？ 上手くいったの？」
「それがだな…」
「なるほどそんな事がねぇ…」
ナベは暦村から事のあらましを聞き天を仰いだ。
「ということは、何か？ 抜き打ちテストの為に、しっかり講義を受けなくちゃならんの？」
そう言うナベに暦村は、不敵に微笑んだ
「抜き打ちテストなんて出来やしないさ」
「え？ なんで？」
「それくらいは 考えたらどうだ？」
首を傾げるナベを置いて暦村は一人講堂を後にした。
なぜだかわかりますか？
したがって謎解きは前回同様です。
これは死刑囚のパラドックスというものです。
では解説していきます。
①講師の宣言
Ａ、一定の期間内にテストを行う。
Ｂ、テストは生徒が予測できない日に行われる。
②生徒側の思考
１、講義の最終日の前日までにテストが行われなかった場合、Ａの条項により最終日にテストが行われることが予測できる。
２、従ってＡ及びＢの条項を成立させるためテストは最終日の前日までに行わねばならず、Ａの一定の期間は１日短縮される。
３、最終日をテストの日にしないことを確定させた場合。上記を繰り返すと最終日の前日もテストの日にはならず、以下このルーチンを繰り返した場合、一定の期間は０になってしまう。
③講師の言い分
②を生徒側が満たした場合。結局生徒側は試験日を予測できない。
したがってＢに矛盾することなくテストを行える。
テストを行えば自動的にＡの条件もクリアできる。
ゆえにパラドックス。
前にもあったかなこの問い？？。
「抜き打ちテストは不可能である」ということになると思うけど、
結局実行されるんだよね。
とか、ひねくれたことを考えてしまいました～ｗ
んで？答えは？？？＾＾
なんでできないのぉ？？？？？？