Nicotto Town



【自作小説】ダメ男の挽歌

休憩室でタバコに火をつけたところで同期の斉藤と会った。
今夜はコイツと呑む約束をしている。確か、6時半でよかったよな?

『おう、いつものところでな。しばらく行けなくなると思うから一緒に満喫しようぜ』
あ?なんで行けないんだ?別に閉店はしないだろう?
『いや、まだみんなには内緒だけどな』
と斉藤は顔を近づけて小声で俺に言った。
『どうやら、ガキが出来たようなんだ』
マジか?カミさんにか?
『カミさん以外で出来ていたらヤバいだろうが』
ニヤリと笑いながら斉藤は自販機で缶コーヒーのボタンを押す。プシュっと空けたと思ったら、すぐさま飲み干して空き缶をゴミ箱に投げ入れた。

『わりぃ、火をかしてくれ』
俺はライターを貸してやり、二人で紫煙を吐き出した。
で、ガキができるとどうして飲みにいけないんだ?
『小遣いが減らされるのが目に見えているからな、その点オマエはいいよな、全部自分で使えるからな』
ザマアミロと悪態をついたが、三十を超えての独り身と円満な家庭を持つヤツとどちらが勝ち組かはわからねえ。
『じゃぁ、6時半な。遅れるなよ?』
斉藤は灰皿にタバコを押し付けて部屋を出て行った。俺は二本目のタバコい火をつける。

この会社で斉藤以外の同期は10人ほどいるが、1年で3人やめた。
同じ建物の中にいるのは斉藤だけで、他は地方にいる。半分は斉藤と同じように結婚していて、今年、一人結婚するそうだ。
俺みたいにフラフラしているのは俺を含めて数名といったところか。
なんで、みんな結婚を急ぐんだろうな。面倒くさくないのかね。


『オマエ、まだそんなこと言ってるのか?』
いつもの店で二杯目のビールを頼んだ時に斉藤が俺に言った。
『俺たちはいつまでも若くねぇぞ?早く結婚して身をかためろよ』
斉藤は社内恋愛からそのままゴールインしやがった。経理に配属された一番の美人をあっという間にかっさらい、回りが引くほどのラブラブっぷりだった。入社三年目の彼女はこれから戦力になるのにと、披露宴の時の経理課長が嫌味を含めて祝辞していた。
美人のカミさんで子供まで出来たとなったら、そりゃ円満で楽しい家庭だろうよ。

『おう、いいぞ?結婚は。知ってるか?女は妊娠するとさらに綺麗になるんだぜ?』
しらねぇよ。それは元がイイからだろう?当時、彼女との付き合いが発覚したときに俺にまでとばっちりが来たんだからな?あの美人と付き合ってるのはオマエの同期のヤツかってな。
『何もしないで指をくわえてるヤツが悪い。欲しいなら即座に行動だ』
清々しいほど行動力のあるヤツだ。そして嫌味がない。我ら同期の出世頭だけはある。
いずれ、課長ハンコ下さいなんて頭を下げに行く事になるのかね。嫌だなぁ。
『おう、その時はオマエからの書類は率先して一番最後に回してやるさ』
ふざけんな。あ、タバコがねぇな。悪いが1本恵んでくれよ。

『すまん。俺もないし、もうタバコは止めだ』
止めた?なんだそれ。まぁいいや、買ってきてやるから金よこせ。
『いやいや、もうタバコは買わないんだ。今日を最後にめでたく禁煙だ。金もないしガキも出来たし丁度いいさ』
本当に禁煙できるのか?吸いたくなったらどうするんだ?
『その時は、オマエから貰うさ』
ニヤリとしながらそう斉藤は言ったが、こいつは多分タバコは止める。まさに有言実行のヤツだからだ。

時計も10時半も回りお開きとなった。俺として飲み足りなかったが美人で身重の奥さんに悪いと思って解散にした。
斉藤と飲むと楽しい反面、自分に出来ない事を軽くやってのけるヤツに嫉妬を覚える。同期だっていうのにこの差はなんだろうね。原因は自分にあるのは十二分に解ってはいるが認めたくない。




自分のマンションの入り口付近に一人の女が立っていた。

『ユウちゃん。どこに行ってたの?』
アケミ…。いや、斉藤と呑んでたんだよ。言ってなかったか?

『聞いてないよ!ユウちゃんはなんでいつもそうなの?ちっとも私を大切にしてくれない!』
なんだよ、突然ぎゃーぎゃー言うな。近所迷惑だぞ?今日、連絡しなかったのは悪かったよ。

『今日だけじゃないよ!いっつもじゃん。私はユウちゃんの都合のイイだけの女じゃないのよ』
そんな事思ってねぇよ。兎に角、部屋に入ろうぜ?な。

『いっつも、そんな事を言って誤魔化すのね…』
何が誤魔化しなんだよ。アケミ、今日はおかしいぞ?俺さ丁度飲み足りなかったんだよ。一緒に部屋で飲もうぜ。

『…もういい。私疲れた…』
そういうとアケミは携帯電話を出して、どこかに電話をしだした。そして、先ほどとはうって変って明るい声色で話し出した。

『あ、中森クン?ごめんね。今大丈夫?…うん…うん。やだぁ~何いってるの。ウフフ…、あ、それでね。この前の返事だけど、私なんかで良かったら付き合うのOKだよ。返事が遅れてゴメンね。え?今から?今からはダメ!来週にでも改めて約束しましょ。それに、今からちょっと片付けないとイケナイ事あるしね。そうそう、ソッチの事。ガンバレ?ありがとうね。うんうん、おやすみなさい』

携帯電話をしまったアケミは、また目を三角にして俺をにらみつけた。
何コワイ顔してるんだよ。その前にさっきの電話はなんだ?中森って誰だよ。付き合うってなんだよ。

『こんな私でも付き合ってって言ってくれる人がいるの。ユウちゃんがいるからって断ってたけど、それでも待つって言ってくれたの』
なんだ、やっぱり他の男かよ。

『ユウちゃんは私にメールすらくれないし、どこに行ってるのかも掴めないし。そんな時に会社の帰りに彼と2回ほど飲みに行っただけよ。それでこの前、改めて告白されたの』
どうせ、俺の悪口を聞いたその男が、ボクだったらもっと君を大切にするよーなんて言ったんだろ?常套手段じゃねぇか、コロっと騙さやがって。

『そうかもね。でも、騙されてるって思っていても言葉が欲しい時があるのよ?ユウちゃんには解らないでしょうけどね』
そんな口先だけの何が嬉しいっていうんだ。それこそ、俺の気持ちを解ってないのはアケミの方じゃないか。
しかし、アケミは俺の言葉には全く耳をかさずにクルリと背を向けて、肩掛けバックの紐を握りしめた。

『とにかく!私とユウちゃんはコレでおしまい!元々連絡なんてよこさなかったから関係ないだろうけど携帯番号から私を消しておいてね。それから部屋にある私の私物は処分しておいて。間違っても返すなんて事しないでね。もういらないから』
そうまくしたてると、暗闇にヒールの音だけを響かせながら消えて行った。俺は何も言えずに闇に溶けた背中を見続けていた。
長い事立っていたと思ったが実際は5分程度だろう。
管理人が育ている花壇のへりに力なく座り込んで、タバコに火をつけた。

なんだかなぁ。

同期の斉藤の幸せいっぱいを見せつけられた後にオンナにフラれて意気消沈させるなんて、神様はなかなかダイナミックな日常を演出してくれる。
とりあえず、コンビニで酒とタバコを買ってこよう。
元々、飲み足りなかったんだ。鏡に映った自分と乾杯をしようじゃないか。何の記念日だかわからんが、今日は何かの節目の日には間違いないさ。

斉藤の分までタバコを吸ってやるぜ。

アバター
2013/09/18 18:36
こんばんは^^
うわぁwちょっと状況が今の自分のようだと思ったけど、アケミちゃんと同じことをすることは全くないし有り得ないなぁw
ただただ待って待ってその内に浮気される方だわww
そういう意味ではアケミちゃんの行動はある意味清々しいのかもしれないww
でもそう思っても真似することは出来ないし、しようとも思わない。
かといって、じゃあ、このユウちゃんが可哀相かというと、まぁ、同情の余地がない気もするw
ラストを見てる限り、まだまだ変わりそうにもないように感じるし。
本当に離したくないほど想う人が来たら変わるのか、ちょっと興味があるなぁw
アバター
2013/09/18 18:30
私は主人公のタイプだな^^;
なんか、痛いぞ??
やけ食いしちゃうか??
アバター
2013/09/18 16:21
すんごいこの話が ドラマみたいに浮かんだわぁwww

いつも当たり前に彼女が居てくれると思ったら大きな間違いだぁw
全ての女が 淳の嫁のようだと思う方がおかしいw
ある程度は 我慢もするし見逃すけど 数年続いてみろ~ww
正直 うんざりするわw

浮気されたら 一緒に反省します?w出来るかっちゅうのw
フルボッコだわ(◔‿◔。)ニョホ
アバター
2013/09/18 15:49
そう言えば、、ロンブー淳が結婚しましたね、、、

しかもなんか、、お相手のカナちゃんが、、、この世のものとは思えないいい子で、、親もいい感じで、、

3時間スペシャルなんぞやってて、、、、なんか、、、腹立ちました、、、^^;
アバター
2013/09/18 14:09
ユウちゃんの何がダメ男なのかというと、
まず、女を見る目がナイって事ですねぇ。
とはいえ、オンナゴコロなぞという代物は、
私にも解りかねますがw

ラスト一行は、いっそ清々しくすらありますねw
そこがまた、ある意味、哀愁を誘うというね・・・
アバター
2013/09/18 13:49
一応フィクションですよ?w
小説っていう文体ではないですね。日記のような文章を書いてみました。
もう少し、主人公のダメっぷりを表現したかったのですが
なかなか難しいものです。

後半のアケミさんの気持ちの部分もちょっとはしょた感ですみません。
オンナゴコロなんてオイラには解らんもーーんw




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.